【カ、カヲルが?】
「あの街に港があるとは思わなかったよ」
アルパカたくしーでフェルテルの入口まで戻ってきた俺たちはもう夕方近くになっていた。
「ピストシアは意外と港町が多いのだ」
そう言ったレミナの手にはたくさんの…袋に入った桃。
「その桃、みんなにもあげよう」
「そうだな」
俺の言葉にレミナは頷く。
「これからどうする? グレースたちが来るまで、街でゆっくりする?」
俺は横にいる彼女に尋ねた。
レミナはうーんと唸る。
「その前に宿でも取っていたらいいかもな」
少し考えた後、レミナは答えた。
「うん、そうだね。今のうちに取っとくか! よし、どこにしようかな」
この街は冒険者の街だ。
宿屋もいっぱいある。
「レミナ、オススメはある?」
「あいにく宿屋は泊まったことはないが、あそこのパムポム亭はどうだ? 近いぞ」
レミナはフェルテルの南口から入った大通りの左側の小道に見える宿屋の建物を指さした。
「あそこね! 確かに、可愛い建物で女子たちは喜ぶかもね。と、そういえば、とーま無事仕入れ終わったのかな? ロットに帰っちゃったかな……」
俺は先にフェルテルに歩いて帰ったとーまを思い出した。
レミナはどうだろうなと首を傾けた。
「まだ、この街にいたりしてな」
「イタりするのダ」
「ぎょっ⁈‼︎」
またもや後ろからかかった聞き覚えのある声に放った言葉通り俺はぎょっとした。
振り向くとやはり、あの猫の着ぐるみがいた。
「とーま! まだいたのか⁈」
気づいたレミナも驚いた顔で叫んだ。
「オゥ! 無事、仕入レノ注文できタヨォ! これから宿で一泊して明日、船でロットに帰ルンダ」
「そうなんだ。どこの宿にしたの?」
俺は猫の着ぐるみに尋ねた。
「あそこのパムポム亭だ」
とーまは左の小道に見える可愛い建物を指さした。
「なるほど!」
俺は笑顔で答えた。
「今日は疲レタ! とりあえず、安ム。リン! レミナ! また会オウ!」
とーまそう言って手を振り、宿屋まで歩いて行った。
俺とレミナは手を振り送り出す。
そして、猫がパムポム亭に入ったのを見届けた。
「とりあえずあの宿屋は止めよう。カトレアとワイズも来るし、色々と危ない」
俺は真顔で告げた。
それにレミナも頷く。
「そうだな! あっちのポロポロ亭にするか!」
それは大通りの正面真っ直ぐ行った右側に見える大きな建物だ。
「おー、大きい宿屋だ! あそこなら大人数でも……ん? レミナ……」
聞き慣れた呼び出し音が聞こえる。
「……通信機だ。ハイ? レミナだ………カトレア?」
レミナは眉間にシワを寄せて俺の方を見やる。
「カ、カヲルが? それで……?」
突然でてきた幼なじみの名前に俺は嫌な予感と悪寒がした。