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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第16章 再会…?
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【見ないでくれ!】

「さて、どんな武器を買う?」


 ピストシアの港に着いた4人は商店が並ぶ道を歩いていた。先頭を歩くグレースは後ろについているワイズ、カトレア、カヲルに話しかける。


「どうしようかしらね」


 いつも冷静なワイズもキョロキョロと辺りを見回し、ピストシアの若者で溢れた明るい街の雰囲気に羨望の眼差しで眺めていた。


「あそこのパン、美味しそう」


 そう言葉を出したのはカトレアである。

 気づけば、道の少し左先に『けぱぶ!』と大きく書かれた看板の横では肉の香ばしい香りとともに柔らかそうなパンが並べてあった。


「そういえばカトレアは昼食取ってなかったわね。体調はもう大丈夫なの?」


 カトレア以外、グレースとワイズ、カヲルの3人は食堂での一件の後、周りの視線が気になりながらも何事もなかったように3人で食事を取っていた。


 その間も彼女は船酔いで部屋に引きこもっていたのだ。

 昼食時間もとうに過ぎた現在、当然カトレアは空腹のはずである。


「船から降りたらばっちしよ! ねぇ買っていい?」


 カトレアは嬉しそうに答え、尋ねた。


「買ってきなさいな」

「行っといで〜」


 グレースとワイズはそう言ってにこやかに頷く。カトレアは「ありがとう!」と『けぱぶ』の店にいる肌の色が濃い、日に焼けたムキムキ店員のお兄さんに声をかけた。


「まいど!」


 注文を受けたお兄さんは彼女からお金を受け取り、準備にかかる。


 彼はグルグルとお肉の塊が回っているの所から少し削り、それを鉄板の上でジュージューと美味しそうな音をたてて焼く。

 焼かれたお肉と細く切った野菜を一緒にパンの中に挟み、特製のタレで味付けをした後に紙に包んでカトレアに渡した。



 思わずカトレアは「うわぁ」と感嘆の声を出した。店員にお礼を言った後、その場でいただきますと呟き、かぶりつく。

 

「美味しそうね」


「ふごく、モグ、すごく美味しいよ! ワイズも食べてみる?」


「あ、ありがとう。一口もらうね」


 彼女から受け取ったワイズはパンを一口かじった。


「うん、うんうん、パンはふわっとしててお肉はカリカリ、野菜はシャキシャキ! とても美味しい」


 そう言ってワイズはカトレアに『けぱぶ』というパンを返した。


 カトレアは鼻歌混じりに再び『けぱぶ』を堪能し始める。


 グレースはその様子を少し遠くから眺め、歩き出そうと右足を出すとカチャンと聞き慣れない音がした。

 気になり足元に目をやると、そこには小さなガラスの小瓶が落ちている。


「なんだ? これ」


 グレースは小瓶を拾う。

 透明の小瓶の外側には『S・Fortifier』と書かれたラベルがあるが、何のことかわからない。

 ただ、白い砂のようなモノが中に入っている。


 S?


 Fortifier……


 聞いたことがある。


 グレースは考えた。




「Fortifier……きょ……うか、強化や、く⁈」


 自分の言葉にハッとする。


「えっ、これは……まさか……」


 グレースは小瓶の中の粉を見つめた。

 もしこれが件の強化薬だとしたら、どうしてこれがここにあるのだろうと。


「カヲル? さっきから黙ってどうしたの?」


 ワイズの声でグレースはハッとする。まさかと焦りながら慌てて振り向いた。


 見ると少し離れた場所でしゃがみ込んだカヲルにワイズがそばに寄ろうとしている。


「ワ、ワイズ……待て、今、俺が……」


 グレースは慌てて追いかけたが、すでに遅し…ワイズはカヲルの肩を揺らしていた。


「カヲルどうしたの⁈ 大丈夫?」


 ワイズは何も答えずしゃがみ込んだままのカヲルの姿を見る……そして違和感が……


「ワイズ、まっ……」


 この間おそらく数秒……しかし、グレースにとってとてつもなく長く感じる。


 慌てて走るが、ダメだ間に合わない。



 ……見ちゃいけない!


 見ないでくれ!



 グレースの思惑も虚しく、ワイズは違和感に気づく……


「あ……ぁ……」



 驚愕……そして寒気……


「き、きゃああああぁぁ‼︎‼︎」


 驚きと恐怖に襲われたワイズの悲鳴が街中で響いた。


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