【タ、タケルさんなぜここに⁈】
俺とレミナはモモブモモブールの街で、食事をご馳走になった。そしてお土産に桃をたくさんいただき、街の中心地まで来てみたのだ。
フェルテルの街に戻るためにここでアルパカたくしーを探すつもりでいた。
「おー! レミナとリンではないか!」
ふいに後ろから聞いたことのある声がかかる。
すぐに振り向いた先には、やはり見慣れた顔があった。
「えっ、タケルさん⁈」
俺は声の主の名を呼んだ。
「タケル⁈ なんでここにいるんだ⁈」
レミナも驚いた顔で叫ぶ。
「ユナの言う通り、やはりここにいたのだな! 会えて良かった良かった!」
黒髪、黒い瞳の日に焼けた肌、シュッとしまった顔や体つきのタケルはニカッと笑みを浮かべ再会を喜んでいる。
「ユナの?どういうことだ?」
レミナはタケルの言葉に、神妙な顔をして聞き返した。
「これだ」
彼はそう言って、黒い機械を見せる。
「通信機?」
俺は見覚えのある機械の名を告げた。学院のモノとは少し違う、薄くてシンプルな形のレミナの持っているものと同じ形状であった。
「エップス博士から渡された持ち歩ける電話だ。これに先ほどユナから魚のお礼のついでにレミナとリンが洞窟でトラブルがあったと、じーぴえす? の位置からおそらくモモブモモブールに向かっているだろうと言われたのだ。そして船でこの街まで来てみたというわけだ。ははは」
タケルはまるで独り言のように、スラスラと語ってみせた。
「な、なるほど」
俺はとりあえず状況が掴め、納得した様子を見せながら頷く。
「ふむ、ユナから伝わっていたか。タケルの番号、私もそういえば知っていたな。知っていたことを忘れていた。ははは」
レミナはケタケタと笑う。
それにタケルも「ははは!」と何がおかしいのか分からないが、合わせて笑っていた。
話し方が似ているこの2人、それは2年前にレミナがタケルの言葉を真似て習得したからだという。この弟子にしてこの師匠ありというわけだ。
「笑い事じゃないでしょ。さすがに覚えてなさい。あ、でも、俺たちフェルテルに行くんだけど……」
俺は少し言いにくそうに、タケルに告げた。
「お、そうであったか。なら船よりアルパカたくしーを使った方が早いのではないか?」
「そうだよね……」
彼の言葉に同意した。
「ふむ。ならタケルはどうするのだ?」
レミナは逆に尋ねる。
「もちろん、船を置いていけないので、漁村に戻る。では、また会おうな! 2人とも! はははは」
そう言うと、彼は手を振りながら踵を返し港へ戻っていった。
俺は呆然とその姿を目で追う。
「結局、あの人何しに来たの⁈⁈‼︎」
素朴な疑問だった。
もはやこの一連のやり取りはなんであったのか。
ユナにはフェルテルに行くことを伝えてあったはずだが……
「桃を買いに来たついでに私たちを見かけたから声をかけただけな気もするぞ」
レミナも唖然とした様子で港の方へ向かった少し遠くに見えるタケルの姿に目を向け、言った。
そんな彼の両手には、いっぱいに桃がつまった手提げ袋がぶらさげられていた。