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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第16章 再会…?
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【誰だろう?】

「だから! 誤解です!」


 カヲルはすごい形相で自分を問い詰める目の前にいる女性に訴えた。


「ウソおっしゃい! この女たらし!」


 猫目で黒髪ツインテールのワイズは垂れ目、金髪の長身の男、カヲルを相手に大きな声を上げる。


 ここはピストシア帝国へ向かう船の食堂の中である。乗船してから今は2時間ほど経過していた。

 ピストシアの港にはあと1時間ほどで着くだろう。



「誤解だってば! 本当に見たことあったから……」


「じゃあどちら様なの?」


 慌てて否定するカヲルと、質問で攻めるワイズのやり取りが目の前で行われている。

 それをグレースは冷や冷やしながら、見守っていた。


 そして食堂のテーブルに着いている他の客や厨房の中のコックなどの視線が自分たちに向かっていることに気づく。

 グレースはとても居づらい雰囲気を感じていたが腹を立てている今の彼女には何を言っても一蹴されて終わることだろう。

 ここはほとぼりが冷めるのを待つ他ないと…移動を提案する機会を窺っていた。


「いや、でも結局話してても思い出せなくて……それに彼女はもう30歳は超えてる女性だよ? なぁグレース?」


 カヲルは慌てて答え、グレースに助けを求めた。


「えっ、あ、いや……そこまでは覚えてない。若そうに見えたけど、少なくとも大人な女性だったよ。うん」


 矛先を自分に向けられ内心迷いながらも答え、グレースは苦笑いを2人に向けた。


「へーそうなの。じゃあリリフちゃんに言っても大丈夫ね?」


 ワイズはニヤっと片方の口の端を上げ、カヲルの方を見やる。


「う、別に問題ないさ! うん。俺はなんも悪いことは……してない、ない! ない‼︎」


「なんでそんな挙動不審なのよ。普通に怪しいわよ。」


 うんうんと何度も顔を上下に振りながら辿々しく訴えるカヲルにワイズは一瞥をくれながら言った。


「グレースぅ〜助けてくれー!」



「え、俺? えーと、その女性は今どこに? その人に聞くのが早いと……」


 手を合わせ懇願するカヲルにグレースは頭に手をやりながらぎこちなく答えた。


「いや、さすがにどこ行くかとか部屋とか聞かなかったよ」


「確認しようがないじゃない」


 カヲルの言葉にワイズが突っ込む。



「じゃあ、名前は? その女性の名前は聞いたんだろ? カヲルが見たことある人なら俺たちも見てるかもしれないし……」


 ふぅとため息をつき、グレースは再度尋ねた。そろそろ周りの視線が厳しくなってきたのでお暇したい気分である。


 そんな雰囲気にも気づかず、件の原因になっているカヲルは頭を抱えワイズの攻撃からなんとか逃れようと必死な様子だ。



「名前? あ、マーシャだよ! マーシャ! 彼女はそう名乗ってた。これからラマダンに戻ると言っていたよ……たぶん」



「マーシャ? 知らないな」


「聞いたこともないわ」


 カヲルの返答にグレースとワイズはお互い顔を見合わせ、首を傾けながら呟いた。


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