【甘ちゃんで結構!】
「甘ちゃんで結構! 俺はできるなら、なるべく人は殺したくないの!」
俺は負けじと言い放つ。
レミナは、はいはいと呆れたようにため息をついた。
確かにマラカナの言うとおり、自分は兵器としてなり損ないで不出来なのかもしれない。
おそらく第4兵器であるとーま、そして目の前にいるレミナに比べ、自分は感情に流されやすいと思う。
幸か不幸か、父さんの何の目論みがあってかは知らないけれど、自分だけは幼い頃から普通の家族に育てられた。
大事な母と妹のそばで。
学院に入ってからは友達や仲間と大人達に守られながら楽しい日々を過ごした。
この経験はレミナやとーまにはないものだろう。
だからこそ、心の底で凄く引っかかるモノがある。常に自分を止めるストッパーになっているのだ。
こちら側《人間の味方》にいるために……
もちろんレミナにはユナが、とーまにも守ってくれた大事な人がいたから、彼らもこちら側《人間側》にいるのだと分かってはいるのだけれども、やはり2人と自分はだいぶ違うと思う。
これは嫌な心配だけど……
2人が暴走したらきっと止めれるのは自分しかいない……と。
10年前の悲劇と同じことを起こさないためにも……
全力で命をはって……
…………
「リン!」
「いつまでぼ〜っとしてるんだ⁈」
眉間にシワを寄せながら俺の顔を覗いているレミナの声にはっと我に帰った。
「えっ、あ……」
長考しすぎた俺は、急に現実に戻され周りをキョロキョロと見回した。
「盗賊団はもう逃げてしまったぞ」
彼女の言葉と誰もいなくなった環境を確認し、ほっと胸を撫で下ろす。
「あ、そうだった……ね。無駄な殺傷をしなくて済んだ。良かった……」
俺は構えた銃を下に下ろした。
モモブモモブールの街の入口の前に集まっていた盗賊たちは撤退してくれたようだ。
「ふん。私だって不必要な殺戮趣味はないからな。逃げるならこれ以上何もしないさ。次に会ったら容赦はしないが」
そう語る小さい少女の体のレミナは、利き手に鞭を持ったまま腕を組み仁王立ちしている。
「レミナは人を殺したことがある?」
俺は彼女にさりげなく尋ねた。
「別にクズは殺しても構わないと思うのだが、ユナに禁止されている。タケルもダメだと、明らかに私の方が強いから、正当防衛にはならないと言うのだ。こんな可愛い、幼気な女子に向かって失礼な話だよな!」
レミナはぷんぷん! と怒りながら語った。
そして彼女の言葉に俺は安堵する。
ユナとタケルに人として大事なことは教わっていて、そして彼女はそれをきちんと守っているようだ。
「ユナとタケルの気持ちよ〜く分かる。レミナは見た目子供だけど、強さはマウンテンゴリラなんだからね」
「な、なんだと⁈ リンも言うようになったじゃないか! しかもレディに向かって、ゴリラせめてライオンとか……むぅー‼︎ ぷんぷんぷんっだっ‼︎‼︎」
レミナは悔しそうに鞭をブンと振り、地面に打ちつけていた。