【アプの任務】
足を踏み下ろすとそこに生えている草がガサガサと音を出す。
春特有の陽気が暖かくてたまに吹く風がすごく気持ちいい。
ここは第1管理所だ。
アパレルは食事後、外の庭を1人で歩いていた。
(《研究》チームの任務はMonsterに関する調査……《探索》チームの方の課題もあるし、今回は正直体力的に厳しいな……)
随分前から出没するようになった謎の生物であるモンスターは存在自体がまだまだ分からないことだらけである。
たまに人里を襲うこともあるが、鉢合わせしない限りはそこまで凶暴ではない。
国や軍、学院は正確な発祥の原因を探っている最中だ。
「あっ、アプ! ここにいたんだ?」
アパレルは不意に後ろから話しかけられ、思考を中断して振り返った。
「リン君どうしたの? 何か用?」
「あ…いや…その」
淡々と答えるアプの様子に俺は何か邪魔をしたのかな?と思った。
「いや別に用はないんだけど外に出たら姿が見えたから。ごめん何か考え事してたんだね」
俺は焦る。
とても気まずい。
「気にしないで。話しかけてくれたことの方が嬉しいよ?」
「そ、そう?」
嬉しいとか…言われて俺は顔が赤くなった。
「昨日はいきなり話しかけてごめんね。リン君のお陰でチームの人と上手く協力できそうだし、助かっちゃった」
「昨日は、俺のことがよく分かったね」
「一緒に行動する2人の名前と特徴だけは聞いていたから。ちらっとiDカードが見えちゃったの。それで思わず話しかけちゃった」
アプはそう言って笑った。
「慣れない課題で大変だよね。何か困ったことがあったら言ってね?」
俺は力になるからと伝える。
「なーに2人でイチャイチャしてんのぉ?」
突然背後から声がかかる。
この声はカヲルだ。
「別にイチャイチャなんかしてないだろ! 邪魔すんなよなぁ」
「やれやれ……できるならジャマはしたくないけどさ。そろそろ第二管理所に行くから支度しろってさ〜」
「あっ、もうそんな時間?」
アプは左腕に付いているスキャナーを見た。
「もう12時をまわっているわね。急ぎましょうか」
俺たちは庭からガラスで出来たドアを開けて室内へと戻る。
「遅い! 早く支度なさい。みんな玄関で待っているわよ!」
そこで俺たち3人を待ち構えていたのは、ワイズの罵声だった。