【第3兵器である彼女】
盗賊団と思われる、厳ついオジサンたちはおそらく20人ほどだ。
超加速を使ったレミナの不意打ちを頭に喰らい、真ん中に立っていた盗賊1名は一瞬で倒れた。
「お、お頭‼︎」
無残にも地面に倒れ、意識を失った人間の名を呼びながら仲間らしき何人かが駆け寄っている。
「おっ、こいつが主犯格だったか。まるで雑魚いな。どうせならもっと私を楽しませてくれ悪党ども」
レミナはそう言うと、ニヤニヤと嫌な目つきで口の端をドヤっと上げて鞭を構えた。
どよめく周りのオジサン集団たち。
リーダーを一瞬で失い混乱しているのか、あまりの展開に慌てている様子が伺える。
きっとレミナの攻撃は誰にも見えなかっただろう。
倒された本人も彼女が距離を縮めた感覚さえ掴めなかったかもしれない。
小さな女の子が遠くで鞭を構えたのが見えた瞬間、目の前が真っ暗になったのだと思う。
俺もレミナの後ろから援護のため光線銃を構えていた。
博士の特殊な銃の持つ指の先から、ぞぞそっと体力が抜き取られる感覚がある。
明らかに呪われた銃である。
よく使いこなせているものだと自分でも感心する。
(でもこの感じ、まだ慣れないなぁ……)
レミナに追いつくため、俺自身も超加速を使って走ったが息ひとつ上げてない。
この体はやはり兵器なのだと今まで何度思ったことだろうか。
それでも誰かや何かを守れるならと受け入れている自分が心地良い。
「ついでに何人か潰しとくか」
レミナの鞭が泳ぐ。数名瞬時に倒れた。
ドサっと人が倒れる鈍い音が響く。
これだけで盗賊? と思わしき怪しいオジサンたちは敵わないと悟ったのか、逃げ出す者や倒れた仲間を担ぎ撤退を命じる者が徐々に出てくる。
その様子を俺は銃で威嚇しながら黙視していた。
「全部倒すと片付けが面倒だからな」
レミナはボソっと呟いた。
「この国の軍に引き渡す?」
俺は彼女の耳元に小さく尋ねた。
「それも面倒だ」
「このまま逃すの?」
レミナはチラリと後ろの俺に目だけを向ける。
「不満そうだな。何人かの頭も飛ばしとくか? 二度とここには近寄らないかもしれない」
「それはダメ。レミナにそんなことさせたくないし、自分もしたくない」
俺は彼女の肩をぐっと抑えて、強く訴えた。盗賊?のオジサン達との力の差は歴然である。これ以上誇示する必要はないのだ。
「甘ちゃんめ……」
第3兵器である彼女はニヤニヤしながら、冷たく言い放った。