【リンは分かりやすいなぁ】
「しっかし、とーまを狙ったのは誰なんだろう」
僕はうーんと唸る。
『分からない』
この声はリンだ。
通信機の先ではレミナから今は彼にチェンジしていた。
「リン君もひどい怪我を……本当もう大丈夫なの?」
アパレルは尋ねた。
『あ、ありがとう。でももう治ったから大丈夫だよ』
心配を語る彼女の言葉に嬉しそうに答えるリンの声がスピーカー越しに響く。
僕はレミナから聞かされた彼女を超えた彼の回復力の速さに驚きを隠せないでいたが、今はとりあえず黙っていた。
「レミナは?」
『なんかふてくされて座ってる』
僕の言葉にリンは答えた。
「ロト山脈そんなに行きたかったのか。あの時は何日も龍だらけの場所で遭難に近い状態で、マジで死ぬかと思った。タケルが島に行けないって怒っちゃって後で宥めるの大変だったし……」
『タケルさんは日帰りじゃないと困るって言ってたもんね。ははは。俺は行かなくて済んでほっとしてる』
通信機の先では安堵とも取れる声が聞こえた。
「そうよね」
「さて、これからどうしようかな」
僕は考える。
明らかに邪魔をするモノがいる。
彼女の両親への道のりは中々ハードな旅になりそうだと。
「とりあえず両親が生きていたことは分かったし、今はそれで充分。2人ともホントありがとう。私たちはしばらく動けないから、任せきりでごめんね」
そう告げたアパレルの顔はとても優しそうであった。
『いや、全然大丈夫だよ! 俺もこれからどうしたらいいか分からないから、グレースたちとフェルテルの街で合流して次の対策……相談してみるよ』
リンはハキハキと答えた。
通信の先の彼はきっと笑顔でいるに違いない。僕は思わず分かりやすいなぁと苦笑いした。
「わかった。なにか進展あったらまた連絡してね」
『了解。じゃ、またね』
僕の言葉を最後にリンは返事をして通信を切った。
「ただいまー」
通信機が役目を終えアパレルに手渡した時、玄関の方でドアが開く音とともに若い女性の声がした。
妹のリリフが帰ってきたようである。
「おかえりー」
アパレルはすぐさま答え、部屋を出て玄関へと向かった。僕も彼女に続く。
「おつかれー」
大量の買い物袋を下げた妹に僕も声をかけた。そして荷物を受け取ろうと近づく。
本当に大量である。
「アプ、兄さん見てこれー! さっきタケルさんに会っちゃってさ! 魚いっぱいもらっちゃった。兄貴たちとは別行動してたんですって!」
「うん。知ってる」
リリフの言葉に僕は再び苦笑いして頷いた。
「うわぁ! すごい魚の量!」
アパレルは破顔して笑った。
魚は彼女の好物なのかなと勝手に思う。
「今日は魚料理を振る舞うわよー!」
リリフは嬉しそうにそう意気込みを見せていた。