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【マジでいらねーよ!】

 フェルテルから少し離れた洞窟の進んだ奥に、人が使用していたと思われる部屋があった。

 部屋に入ってすぐの右側には本棚が3つ壁に沿って並んでいる。正面には横長のテーブルとイスがあり、本や書類の束などがホコリと一緒に天板に置いてあった。


 左側の方にはやはりホコリをかなり被ったベッドが2つ。

 正面テーブルの向こう側に申し訳なさそうな程度の炊事場と水場も見えた。

 そしてその横には細い道が続いている。


「ここはどうみてもずっと使ってないね。というか長期間住めるような所でもない気がする」


 俺はホコリまみれで、生活感のまるでないこの部屋に感想を漏らした。


「ソウなのカ? オレは何回かココに来た。前まであの2人はロットの古いけんきゅー所にいるって言っテタヨ。オレが道具屋やるズット前だから、もう随分と昔のコトダケド」


 とーまは昔を思い出しながら語った。


「古いけんきゅー所? それってあの施設のこと?」


 俺は尋ねた。


「⁇⁇よく分カラナイ。隠れテルって言ってタ。ココに呼ばれるようになったのは道具屋やってカラダナ」


「まさか……そんな」


 彼の言っていることが本当なら、アプの両親はずっとロットにいたということになる。

 でも娘に一報も入れず何のために隠れていたのか……ますます分からなくなってきた。


 ここはやはり当の本人達に聞かないと真意は見えないだろう。


「アプの両親はここで一時的に何か研究でもしていたのか? それにしては本とか紙しかないな」


 レミナはそう言って、テーブルの上の書類を覗いている。かわって俺は右側の本棚へと足を運んでみた。


『生物理論』『生化学・分子生物学』『微生物バイテク』『生体高分子研究』


 そんなタイトルの本がズラリと並んで詰まっていた。

 なんだか学院の講義を思い出す。

 きちんと受けていたのは最初だけで、後半はよく寝てしまうタイプの難解な授業だった。


 一体これが将来何の役に立つんだ?ってよく思っていたものだ。


 俺には理解不能な専門分野。

 きっとこれからも解ることはないだろう。


 ユナとアプに聞けば何か気づいたかもしれないが、残念なことに洞窟内では通信機が使えない。


「本棚見てたら、なんか頭が痛くなってきたな」


「セシリたちは難しいコトをよく話すンダ」


 横にいたとーまもボソリと呟く。

 何冊か持ち帰ってもいいがけっこう重そうだ。



「あ、そうだ忘れてた。リン」


「ん?」


 背後からレミナに声をかけられ、俺は振り向く。


「これ、お前の銃。銃のケースも無事だぞ。博士の特注だからかな? あと、コイン、吹っ飛んだの集めといた。たぶん全部集めたと思う」


「えっ、あ! そうか……カバン……」


 何か体が軽いなと思っていたが、そういえばさっきまで肩にかけていたのに、いつのまにか手ぶらになっているではないか。


「カバンはあらかた燃えていた」


「あちゃ。母さんにもらった服が……」


 俺は頭をポリと無意識にかく。

 他には何も入ってなかったかなと記憶を探るが、ガラクタや石は博士に渡したし服の他には何も入ってなかったと思った。



「レミナの服、貸そうか?」


「それ元々俺の服! というか、子供の頃のやつが入るわけないでしょ?」


 彼女の提案は即断った。



「ソレならリン! イイノガあるゾ! オレの前の恐竜を……」


「それも却下却下‼︎ マジでいらねーから‼︎」


 とーまに際しては声を荒らげ拒否した。

 こんな乱暴な言い方したのは、生まれて初めてかもしれない。

 洞窟内では俺の声がよく響いてた。


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