【待たせたね】
「セシリ……イナイ。というか、アッチの部屋しばらく使ってナイ感じダ」
あれから少し時間が経った頃、とーまはボソッと呟いた。
「どういうことだ?」
レミナは尋ねる。
「俺が2人と最後に会ったのはモウ随分と前……2年経つカナ。ずっと音沙汰ナカッタんだ。でもアノ部屋も何年もイナイ感じ」
とーまは下を向いている。
猫の被り物をしているにも関わらず、彼の顔はなぜか悲しそうに見えた。
「リンが回復したら部屋の中を調べてみるか。何かヒントがあるかもしれない。うん、案の定ここは通信機使えないようだ。どっかの誰かさんにしてやられたな」
レミナはそう言って、通信機を俺に見せた。いつもなら付いている緑のランプが消えている。今は通信ができないということだろう。
「そっか、まぁちょっと回復してきたよ」
俺はそう言って、ゆっくり上半身だけ起き上がらせた。
体の痛みはだいぶ消えている。
「リン……」
レミナに呼ばれ顔を向けた。
「なに?」
「ピアス消えてる。耳まで飛んだか?」
「えっ」
俺は慌てて自分の耳たぶを触り確認した。
物心つく前から当たり前のようにあったモノがそこには無かった。
「私はあるな。博士のお陰で服は戻っているが、流石にあくせさりー? までは再現無理か」
レミナはまぁ仕方ないなと諭した。
「さっきグレースに言われるまで耳のヤツ気にしたことなかったけど、意識し出した途端もう無いとか……どんだけ」
俺はついつい笑みがこぼれる。
レミナは「ははっ」っと苦笑いした。
「本来なら私とリンはここに来ていない。やはりさっきの爆発はとーまを狙ったんだろうな」
「こんなコト初めてダヨ」
とーまはブンブンと猫の顔を横に振った。
「後ろが塞がってるのに、息苦しさは感じないとこをみると、この道の先は袋小路ではないようだな」
レミナは呟いた。
「部屋の奥の道をカナリ歩いた先に出口アルヨ。フェルテルからはダイブ離れちゃうケド」
とーまは答える。
「まぁ目的はアプの両親だし、とりあえずあっちの部屋を詳しく調べてみないとね。よし……2人ともお待たせ。もう動けるよ」
俺はそう言って立ち上がった。
レミナととーまは待ってましたと言わんばかりに、2人で顔を見合わせ頷く。
そして今度は慎重に俺達は奥の部屋へ歩き出した。