【回復に集中だ】
「リン……」
遠くの方で……声。
俺は重たくなった瞼をゆっくり開ける。
目の前には……自分に似た少女の顔が見えた。
「あ……レミ、ナ……?」
自分を上から見下ろす少女の名前を呟く。
俺は……一体どうなったんだろうと。
「回復してきたか……後ろ半分が吹き飛んだから、さすがのリンでも少し時間がかかってるな」
「何が……起こっ……た?」
声が出しづらい。
そしてなんか身体中が痛い。
特に背中が焼けたように熱くて痛い。
体を動かせない俺は、とりあえずレミナの言葉を待つしかないようだ。
「シューと変な音がするなと思ったら、いきなりお前が後ろから私を掴んできて、わりと離れた後方で何かが爆発した。どちらかというと衝撃よりも閃光が眩しかったな……殺すというよりは誰かに道を塞がれた感じがする」
レミナは真顔のまま淡々と告げた。
かわって俺はそうか、ここは……洞窟だったと思い出す。
とーまに誘導され洞窟の中をライト頼りに進んでいたが、何か嫌な気配を感じ振り向いた時に赤い光がチカっと見えた。
咄嗟にヤバイと俺はレミナを後ろから庇ったが、強い衝撃を受け……そこからの記憶は途絶えている。
あの赤い熱線のようなものは彼女の言うように動物やモンスターの攻撃とかではなく、人為的な感じを受けた。
自分たちが歩いて来た方へ目を向けると、大きな岩が何個も積み上がり道は見事に塞がっていた。フェルテル方面へ戻るのは不可能なようだ。
「つ〜……いてぇ」
俺は起き上がろうとしたが、あまりの激痛に思わず声が漏れた。
再び冷たい床にパタンと戻ったがそれもかなり痛い。背中の辺りが相当のダメージを受けているようだ。
暗くて自分の体はよく見えないが、しばらくこのまま床に寝そべっていることにした。
「チクショウ。罠だったのか……俺のリンが」
とーまは横で膝をつきしゃがんでいた。
カトレアの作った着ぐるみは、どこもほつれることなく少しドロが付いているくらいだ。
彼は……どうにか無傷なようだった。
「その冗……談、マジやめ……て。とーま、今は笑えない」
「うー! ゴメンなっ」
俺の鋭い言葉に猫の顔は下向きに下がる。
彼なりに落ち込んではいるようだ。
「出口への道は埋まってしまったな」
レミナは爆発が起きた方を見やり、そう呟く。
「レミ……ナは、体大丈……夫?」
「庇ってもらえたので、かすり傷だ。もう消えた」
「良かっ……た」
俺はそれだけ言うと、静かに休むことにした。ここは回復に集中だ。
とにかく動けるまで……少し待とうと。
とはいえ、先ほど起きようとした時よりもだいぶ痛みは治まってきた。
自分の体ながらホントに不思議でならない。