【コッチだよ!】
「レミナとリンは人を探シテるのカァ?」
俺たちはとりあえず、街の南の方へ向かって通りを歩いている。
人の目線が気になりながら、半ば諦めの気持ちで少し前を行く猫の着ぐるみに連れ立っていた。
「そうだ。キーンというアプの両親を探しているのだ」
レミナは答えた。
「キーン知らないな。アプ? 女ダナ? 可愛いダロ? 会いたいナァ」
とーまはそう言って、顔をリズムよく横に振り出す。
「アプには絶対会わせない」
俺は強く訴え、断固拒否した。
それだけは絶対にさせてなるものかと。
「ん? 嫉妬カァ? 大丈夫ダ、リン! オレはオマエだけダヨォ?」
「それ以上言うと、本当に撃つからね⁈」
「嫉妬深いナァ」
(く〜! こいつ、マジで撃ちたい)
俺のとーまに対する第1も第2も第3印象も最悪だ。ユナが店に二度と行きたくないと言っていた意味が分かった気がした。
とーまは本当にThomasで第4兵器なんだろうか……今の彼を見ているととても疑問である。
「2人には名残惜しいケドさ、オレも仕入れの前にチョット約束があって、アンマ時間ナイんだワァ。昔命の恩人で世話んナッタ人から昨日の夕方急に連絡来てナァ」
「命の恩人?」
少し前を歩く猫の着ぐるみにレミナは聞き返した。彼は顔を縦に振って、大袈裟にうんうんと頷く。
「オレがピカ受けて、1人でロットで目を覚ました時、記憶が何もナクテ途方にくれてたんダヨォ。そしたら、白衣着た2人が助けてクレたンダ。俺がソコソコ自立するマデ、しばらく世話んナッタ人ダヨォ」
なんとなく……とーまの言葉が引っかかる。
ピカは10年前の事件ではないかと。
そして白衣着た2人は……
「助けてくれた2人の名前は?」
俺は尋ねた。
「分かんね。女の方はセシ? セ…」
「セシリア?」
「そう! ソレだヨォ!」
とーまの肯定した言葉に俺は確信する。
「もう一人はドナルド?」
「オッサンは忘れた」
俺はポケットからアプにもらったメモを出した。
ちらりと横目で覗いたレミナは、はっとした顔で俺を見上げる。
「もしかしてアプの両親か? とーま、私たちも一緒にその2人の元へ連れて行ってくれ!」
レミナは強く、とーまに懇願した。
「オー? 別に構ーねーヨォ? 行こう行こう! コッチだ」
彼はコッチコッチと言って手招きする。
俺たちはとーまに誘導されて、街の南の入口へと向かった。