【勘弁してよ】
銀色の猫の顔に肉球と尻尾がついたツナギのような……なんとも言えない格好のその人物? は思ったよりも小さい。
身長は150センチ? よりはあるのだろうか。
俺よりも10センチ以上身長差のあるそれは、少しハスキーがかった低めの人間離れしている声で、グループの仲間であるカトレアと目の前にいるレミナの名前を口にした。
「猫、なぜ私の名前を知ってるんだ?」
レミナは尋ねる。
「オレだよ! オレ! とーまダヨ⁈ なんでこんなトコロにいるんだヨォ?」
とーまの返答にレミナは驚いて目を丸くした。
「とーまか! 猫にイメチェンしたのか⁇」
「レミナ! なんだそいつぅ〜彼氏カァ⁈‼︎」
「なんでとーまがフェルテルにいるんだ⁇」
(この2人、質問ばかりでお互い何も答えてないな)
俺はまぁまぁとこの場を収めようとするが、このちびっ娘と猫の変態は全く聞いていなかった。
「猫可愛いじゃないか! 前のよりずっといいぞ! こいつはリンという、私の旅の大事な仲間だ。ははは。まさかこんな所で会うのはな! 人探しにここまで来たのだ。ははは」
「まさか、商品の仕入れにフェルテルまできて、コンナ所で会うとは運命ダナ‼︎ カトレアが作ってクレた猫ダヨ! 似合うダロ⁈ ヒャハハ」
(最終的に話が噛み合ってるし……)
道の真ん中でゲラゲラと笑いながら勝手喋っているレミナととーまを迷惑そうに避けていく周りの人の目は冷ややかだ。
仲間だと思われている俺はとても恥ずかしい。
「えーっと、とーま? 初めまして……」
俺は猫の人に改めて名乗る。
「リン? 男は……ん? よく見たら、オマエ、レミナそっくりダナ⁈ もしかして女カァ⁈」
「は?」
「ソレにしては胸がナイ」
猫の顔はぬっと近づいてくる。
「何を言って……」
「リンは男だぞ? たぶん」
「たぶんって何だ!」
レミナはケタケタと笑っている。
「ユナが言っていただけで、確かめたことはないからな!」
「確かめられたら困るわ!」
レミナの言葉に俺はすかさず突っ込む。
「ボーイッシュな子も大歓迎ダァ‼︎」
とーまはそう言って、気づくといつのまにか俺の手を取りぶんぶんと縦に振っていた。
「うわっ! ボーイッシュじゃなくて、紛れもないボーイだから!」
俺は慌てて手を引き寄せ、一歩後ろに下がった。なんだか身の危険を感じ警戒する。
「ヒャハ! シャイなんだぁナァ! ヨロシクなぁ?リンは彼女の1人にしてやるゾォ? ヒャハハァ」
可愛い猫の顔とは裏腹にとーま気持ち悪い発言に悪寒が走る。
俺はなんだか光線銃を撃ちたくなった。