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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第14章 アプの両親
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【すぐ後ろに……】

「うわ、何あの人」


 俺は唐突に声を上げた。


「リンどうした?」


 レミナは怪訝な顔をする。


「なんかあっちの通りに猫の被り物付けてる人がいた。あれは目立つなぁ……」


 そう言って、フェルテルの街の何個か先の道を指差した。対象の猫はもう行ってしまったが…。



「ふむ。被り物か。黒頭巾にマスクと黒眼鏡の怪しい恐竜姿だったら知ってるやつだったが」


「なにそのホントにヤバいやつ」


 レミナの言葉に俺は苦笑いして思わず尋ねた。



「道具屋のとーまだ」


 レミナはよく話に出てきただろ? と言った。


「あぁ、その人……」


 『とーま』はロットで道具屋をやっている女好きの変な奴だとユナから島で聞いた。


 彼は俺がふいに口にした彼の呼び名に反応し『とーま』はThomas(第4兵器)のことかもしれないと言っていた。


 確証はなにもないので、今は2人だけの秘密にしているが、実際のところ『とーま』には俺も会ってみたいと思っていた。



「まぁ猫なら違うな。また違う変態だろう」


 レミナはこんな所で会うはずがないか……とふっと笑った。


 違う変態というのもどうなのかなと思うが……


「でも、あの猫なんか見たことある。誰かが学院祭で作ってたような……」


 俺は誰だっけ? と記憶を辿るが、出てきそうで出てこない。


「学院祭?」


 レミナは初めて聞いた単語に首を傾けた。



「あぁ、学院でやるちょっとしたイベントだよ。俺はいつもサボっててあんま参加したことないけど」


 俺はそう言って、ニヤっと笑った。


「悪いやつだなぁ……」


「年に1回秋にしかやらないけど、みんな忙しそうだし、一緒に回る恋人もいないしー」


 カップルの相手がいれば少しは楽しかったかもしれないと俺は呟いた。


 学年で行事はバラバラだから、仲間とは中々時間が合わないし、あとは1人でぶらぶらするか学祭の雑用に使われるだけだ。


 まぁ小さいうちは何でも楽しくて、カヲルとユナとよく回ったけど。


(たぶん、ユナは嫌々だったんだろうなぁ……)



「一緒にかっぷる? で回るなら……カヲル? とかグレースがいるじゃないか」


「やだよ。そこは普通に男女でしょ!」


 俺にその気はありませーんと断言した。


「じゃあリリフだな」


「妹じゃないか」


「アプ」


「まだ出会っていませんでした」


「じゃあ、今年はアプとだな!」


「恋人になれればね……って俺は何を言わされているの⁈」


 レミナの表情が急に暗くなる。


「それは……難しいからやっぱカトレアにするか?」


「えっ! そこ諦めるの? 俺そんな望みない? それにカトレアは……あ! そうだ! あの猫はカトレアの作っていたヌイグルミにそっくりだ!」


 俺は忘れてた! 忘れてた! とレミナに伝える。


 あの猫の顔はカトレアのお得意のマスコットと同じ顔だ。

 きちんと行事に参加していた同い年の彼女を俺はたまに見かけていた。


 そのヌイグルミは裁縫の得意なカトレアの出し物だった。



「ヒャ! カトレア⁈‼︎ おぉ! お前レミナじゃないカヨ⁈」


 気づくと先ほど遠くの通りで見かけたはずの……猫の着ぐるみがそう叫び、俺たちの真後ろに怪しく立っていた。


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