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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第14章 アプの両親
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【コロアの回想】

「私、いつか宇宙に行きたいの」



 コロアが16歳で入学して数ヶ月が経った頃、学院の完成したばかりの公園のベンチで静かに池を見ながら座っていた時だった。


 彼女は近くに来るなりいきなりそう告げた。


 何のことか分からなかったコロアは声の人物を、一瞬ちらっと見た後、また前を向いて黙った。


 なんか面倒くさい……と。


 そんなコロアの様子に意も返さず、その少女は話しかける。


「こんにちはコロア・ベクタム。私はマラカナ・リヴァルです。あなたより2学年年下です。よろしくお願いしますね」


「……どうも」



 話しかけてきた少女の言葉は14歳とは思えない物言いだか、何如せんコロアは他人にあまり興味がなかった。


「あなたのことは管理官から聞いていますよ。とても優秀な生徒だと。《研究》チームに入らないのが不思議です」


 マラカナは首を傾けて口角を上げている。

 少し嫌な笑いだった。



「何の用だ?」


 コロアは面倒くさそうに聞いた。



「私の母から、あなたにこれを渡すようにお願いされました。あなたの母の……遺品だそうです」


 そう出された物をとりあえず受け取った。


 それは綺麗な紫の石がついた首飾りだった。

 裏に名前もある。

 To SARA と書かれていた。



「あなたのお母様に私の母は昔いただいたそうですね」


「なぜ今頃これを?」


 今度はそう言って優しく笑うマラカナに、コロアは尋ねた。


「あの人なりにも親友の死はかなりの衝撃だったのでしょう。自分の研究所のミスの罪滅ぼしかも」


「ふ〜ん。あんたの母親、研究所の人なの?」


「まぁ一応、リヴァル家が研究所の監視をする目的で派遣されていたらしいですね。私から見れば遊んでいるようにしか見えませんでしたが」


「遊んでいる?」


 コロアは目を細めてマラカナを見る。


「研究所にいる子供達のお世話をずっとしていたみたいです。戦争後は辞めてしまっていますがね。管理官が今研究所にいないですからね〜ツマラナイのでしょう」


 マラカナは最後に呆れた声で告げた。


「管理官?」


「ソルトウェルト・グレイダーですよ。知らないですか? ここの学院長です」


「ああ……」


 あいつか……なんか入学時に偉そうに喋っていた若い奴とコロアは思い出す。



「背高くてイケメンですよね! 私も憧れですが、私の母も彼を子供の頃から育てているくせに何か好意を持っているんですよ。あの年増、ホント気持ち悪いです」


「自分の母だろう?」


「ふふ。私は18歳になったら彼の秘書になる予定なんです。そしていつか宇宙からこの星を……管理官と守るの」


 そう告げる彼女は嬉しそうだった。



「ふ〜ん? なぜ私にそれを言うんだ?」


 基本的にコロアはあまり自分や他人、周りのことに興味は沸かない性格だったか、その時はなぜか気まぐれに聞いてみたくなった。



「あの母を最後まで見捨てなかった彼女の娘に……会ってみたかった。それだけです」


「そうか」


 コロアはそれだけ言うとマラカナのいる公園を後にしたのだ。


 それ以降、彼女とは話したことはなかった。



 バイクで1人……広いロットの地を走りながら、今頃になって徐ろに彼女の昔の言葉を思い出す。


 本当に今頃になって……だ。


「宇宙ねぇ……」


 今でも彼女はそんな子供の頃の野望を追い続けているのだろうか……


「恋する乙女は大変だねぇ……」


 コロアは1人、走り去る中……そう呟いた。

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