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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第2章 探索開始!
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【ま、歩くよ!】

 玄関前へ行くとやはりみんなはもう集まっていた。俺たちが着いてすぐグレースもちょうど来たようだ。


「みんなちゃんと時間通り……」


 周りを見回してグレースはぜぃ、はぁ言っている俺たちを見た。


「ギリギリの奴もいるみたいだな。ま、問題はないだろう。予定通り出発するぞ」


 グレース達とは学院管理所まで一緒だ。

 ちらりと横目で見るとカヲルはリリフと、ワイズとカトレアはアプと話しながら歩いている。


(女性3人は集合時間までの間にお互いの自己紹介をすませてたのかな)


「このまま何事もなく着くといいね」


 俺は歩きながらグレースに声をかけた。


「んーそうだな。とりあえず橋までは大丈夫じゃないかな? ここから4時間くらいだしね。そーいや最近の講義はどう? リンも慣れてきた?」


 俺たちはこれからロットとこの国を結ぶ大橋を目指して向かう。


 巨大商業施設のような『学院管理所』がある大きな橋だ。


 管理所はストゥート側とロット側の橋の入口に建築されていて、学生のためにホテルのような宿泊施設も完備されている。


 ストゥーベル学院は学校なのでもちろん進級するごとに必要科目数も増えてくる。上級生になればなるほど専門知識も難しく、より濃密になっていく。


「それは平気……って、あっ!」


「ん?」


「そういやグレースさぁ、昨日テラス『パティ』で寝てなかった? 確か昼の3時頃。そんなに疲れるまで我慢しちゃダメだよ~」


 俺は昨日のことを思い出し、グレースに告げた。アプと会う少し前のことだ。


「あー見られてたか。確かに視線感じたんだよな」


 ちょっとバツが悪そうにグレースは苦笑いをした。


「居眠りくらい気にすんな。俺なんかそこら辺歩いててもうたた寝しちまったことあるし。まぁワイズには黙っていてやるよ」


「…なぜそこでワイズが出てくる?」


 グレースは神妙な顔をした。


「えー……あ、そういやカヲルも先週、夜トイレ行って寝ちまったらしくてずっと便所から出てこなかったな。んで次の日風邪ひいてた。」


「どおりで元気がなかったわけだ……」



 そんな他愛もないやり取りを交わし、グレースと会話を続けたまま2時間ほど歩いただろうか。


 だんだんと磯の香りが強くなってきており、海が近くなってきたなーと実感していた。


「海……久しぶりだなぁ。小さい頃はよく行ってたんだよ。リリフと母さんと」


 この香りは昔のことを思い出す。

 俺にとっては遠い懐かしい思い出だ。


「そうなんだ。うちは山の方だったから海はあまり行った覚えがないなぁ」


 そういやグレースは山育ちと前に聞いたことがある。


「山もいいよね! 父さんは忙しすぎて全然家にいなかったから、いつも母さんとリリフと3人ばかりで出かけてた」


「リンのお父さんは学者さんだったんだっけ?」


「うん、研究とかしてたって母さんが言ってた。でもよく覚えてないや。ほとんど家にいなかったし」


 不思議なことにホントに覚えてないのだ。

 顔すらもうっすら……程度である。


「俺は両親のことよく覚えてるよ。父さんは普通の仕事と畑仕事を両方してたけど、2人とも戦争に駆り出されて、俺はその間ずっと弟と国の施設で待ってたけど2人は帰ってこなかった」


 グレースは相変わらず淡々と話し出す。


「うちの母さんは体が弱くて、戦争に呼ばれなかったけど、戦争終わった後母さんに「父さんはもういない」って聞かされただけ。たぶん死んだんだと思うんだけど、こんな人手不足でみんな駆り出されてみんな死んじゃって……この国ってホントどうして勝てたんだろうね、グレース」


 俺は学院の講義でも「兵士はみんな死んだが、勝利した。詳しいことは調査中で分からない」という内容の歴史しか聞いたことがない。


「噂ではロットのヤバイ戦闘兵器が暴走して壊滅したって聞いたけど。それでみんな巻き込まれたって。もう昔のことだから言ってもしょうがないけど、なんで戦争なんてしたんだろうな……あんな大きな国に絶対勝てないのに。結局みんな死んで、ロットもなくなっちゃってさ。子供ばっかり残されて……」


 グレースは悔しそうにそう言った。


「ま、少しでも色々知りたいし自分で調べたいから《探索》チームに入ったんだけどね。リンもそうだろ?」


「あ、うん。そうだね。最初は外への興味だったけど、2年前に……」


 グレースの問いに俺も答えた。


「2年前?」


「ユナがいなくなったでしょう? 俺、あの時最後にユナに会ってて『国からの指示で外に行く。君だから話した』みたいな意味深なことを言ってたんだ。それで外に行けばいつかユナに会えるかもしれないって思って」


 あの時からもう2年も経っている。


 今のところ何も分かっていないが、可能性はゼロじゃない。どこかで会えるかもしれないと。


「ユナは《研究》チームなのに国からの指示で外に出たのか……ユナの叔父はすぐに学院の管理官を辞退してたよな……なんか関係あるのかな」


 グレースはそう言って首を傾けた。


「俺もその叔父さんが何か知ってるんじゃないかと思うんだけどね。とてもじゃないけど会える立場の人じゃないし、だからこうして地道にいつかユナに会えるのを期待して《探索》の活動を頑張ってるわけだけど!」


 俺は何年経っても信じて頑張るとグレースに言った。


 グレースも頷き、『きっと会える』と賛同してくれた。

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