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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第13章 旅への出発
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【えっ‼︎】

「親父は黒幕じゃないんだな?」


 カヲルはジョンに念を入れて確認した。


「誓って違うよ〜ここ10年くらいはモンスター化の特効薬作成問題でアップアップだし、ほぼこの施設で軟禁状態。バモールの街にすら出てないよ。今の僕の仕事はここのノート型のぱそこんでデータと睨めっこと《研究》チームの指示出しメイン。現場からは離れちゃってるから……」



「なら分かった。聞きたいことは終わり」


 カヲルはそう言って、みんなに帰ろうと促す。



「あ、お邪魔しました」


 グレースたちはジョンに頭を下げて、ドアの方へ向かうカヲルに続いた。


「もう帰るの? パパ、いつも仕事ばっかりでゴメンね。学院卒業したらカヲルもここに就職する? そしたら僕とまた暮らせるよ?」


 そう言って、入口まで見送るジョンにカヲルは絶対ヤダね、こんな監獄……と、吐き捨て出て行った。


 そっかぁ、という声が後ろで静かに聞こえた。





 ジョンの部屋を出た後、グレースはマラカナに内線を入れた。


 もう少し待つよう言われ、そのまま13階の廊下で待機していた。



「……カヲたん」


「あ、別に気にしなくていいよ? カトレア。親父は昔からああなんだ。いつも上に言われるまま、ああやって永遠に仕事していて平気な人間だった。ツマラナイ人間だよなぁ」


 カヲルはいつものように笑っている。



「悪いことできる人には見えなかったけど」


 と、グレースは思ったようだ。



「なんだか明るく見せてるだけで、実際は仕事もツライんじゃないかしら? カヲルに話しかけてる彼はとても嬉しそうだったわよ?」


 ワイズも自分の感じた印象を告げた。



「そうかな? 俺はああやってヘラヘラ自分のやってることの意味も考えず、権力者の言われるがまま何でもやれてしまう人間はある意味罪だと思うよ? 俺は絶対ああはなりたくないと、親父と話して改めて確信したよ。もうこんな窮屈な場所から早く帰りたいしな」


 カヲルは息子としてまずリンやレミナに謝らないとな……とぼそっとみんなに聞こえないくらいの音量で言った。


「カヲルの言う通りかもしれないわ。何も疑問も持たず言われるがまま命を弄ぶ……こんな怖いことはないかもしれない。そして、それに気づかないまま進んで行けばどうなるのか……あ、そうか!」


 ワイズはこの場所に最初に違和感を覚えた理由に今気づいた。


「どうした? ワイズ」


「グレース……ここはキレイすぎるのよ。ゴミは落ちてない。虫すら1匹も飛んでない。気温差もない。自分たちの都合のいいように地下に作り、街の人とも関わることをせず全てを排除してしまっている。だからキレイなのね。キレイで退屈で窮屈。人間味もなくなりそうだわ。生物兵器であるリンやレミナ達のほうがよっぽど自由で人間らしいわ。皮肉ね」


「うん?」


「学院も少し似てると思わない?」


「確かに……」


 ワイズの言葉にカトレアも頷く。


「私もちょっと少し保守的になってたかもしれないわ。自分を守ることに必死になって自分より輝いて頑張ってる人を妬んでた。うん、なんか吹っ切れた。グレース!」


「えっ何?」


「見てなさいよ! 今は全然そんな気起きなくても、絶対振り向かせて見せるんだから! 覚悟しなさいグレース‼︎」


「はい⁈」


 グレースは目を丸くして驚く。

 カトレアは嬉しそうにワクワクしていた。

 カヲルもおー! と拍手する。



「さて、マラカナ遅いわね。ここで待ってるのも退屈。どうせなら下のエレベーターに入るドアの前まで行きましょ? 降りるだけだし。この建物の造りなら私たちの居場所なんて一瞬で分かるでしょ。本当ツマラナイ造りねぇ……」


 ワイズはそう言ってエスカレーターを下っていった。


 グレースはポカンとしている。


「えっ? えっ?」


「グレース、これでも気づかないの……相当ヤバイぞ?」


 カヲルはそう言って、彼の肩をポンと叩いた。





「ちょっと……考える時間をください」


 しばしの沈黙の後グレースはそう言って、エスカレーターを降りて行った。


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