【カヲルの父】
1番奥の部屋の扉も近づくと自動で開いた。
室内も真っ白でけっこう広い。
20畳くらいはありそうだが、部屋の真ん中にはシンプルなイスとデスクのみ。
その上に薄いノートのような機械が1つあるだけで、部屋には何もない。
不思議な部屋だった。
これで仕事ができるのだろうか?とグレースは不思議に思う。
「おーカヲルちゃん! どうしたの? 学院はクビ?」
(あ、なんかデジャブ……)
カトレアはイスから立ち上がり開口1番にそう言ったカヲルの父、ジョンの言葉になんだか前にもどこかで聞いたような親近感を覚えた。
「親父ー久しぶり? 9年ぶり? 老けたわ〜」
カヲルはそう言って少し離れた所で手を振る。
「そりゃあ老けるよ〜息子がこんなデカくなってるんだもん。なになに〜? どうしたの〜? お小遣い〜?」
彼はそう言って財布を取り出した。
顔はあまり似ていないが、少し長い金髪を後ろに束ねているジョンはやはり長身、そして緑の目はカヲルと一緒だった。
ヘラヘラしてるところもなんか似ていた。
本当にここで主任なのだろうか? とグレースは疑いたくなる雰囲気の人だった。
「お小遣いのためにここまで来るか! 財布は仕舞え! 聞きたいことがあったから来た。それだけ」
カヲルは大きな声で訴えた。
「聞きたいこと?」
「あんた黒幕?」
カヲルはいきなりズバッと聞いた。
グレースたちは驚いて彼の顔を見る。少しはオブラートに包め! と。
「へ?」
ジョンは聞き返す。
「だ〜か〜ら〜今回の事件の」
「こんきゃ、イテっ……今回の事件?」
舌噛んだ!
この人舌噛んだよ!
グレースは心で突っ込んだ。
ワイズとカトレアは笑いそうになるのを必死で我慢している。
「なんだっけ。モンスター化ってやつ。10年前のも」
「えっ⁈ えっ! えっ? カヲルちゃん? パパだって、そのモンスターの特効薬頑張って作ってる所の主任なんだけど? モンスター化増えれば増えるほどパパの仕事も増えるんだよ? パパ自分でモンスター増やして自分の仕事増やしてることに……えっ、そしたらパッパどんどん仕事増えていつか過労死するよね? 別に自殺願望とか持ってないよ?」
グレースは確かにそれはそうだ正論だと思った。
「パパパパうるせーし。じゃあ10年前は?」
「10年前? 戦争のやつ?」
「あれは事件なんだろーが! リンやレミナのことは? 担当だったんだろ⁈ 第5兵器とか言って、ここのやつは何企んでるんだ?」
カヲルは怒鳴った。
ジョンは真面目な顔で考え込む。
「戦争ではないことは何となく……分かっていたよ。あの時の少し前にいなくなった研究員が何人もいて、おかしいなとは思っていた。キーン夫妻も急にいなくなった。リン君やレミナ君はそう僕の直接の担当だ。最初は僕が管理して実験を指示していた」
「キーン? リンやレミナに何したんだよ?」
カヲルは尋ねた。
「リン君は胎児の時から遺伝子操作された胎児変異型だ。胎児の時点で何度も遺伝子の組み替え実験を細胞レベルで行い、再生能力の特化に成功していた。でも2歳の時に外に出されたキリ、彼には会ってないな。レミナ君も4歳の時に眠りについてしまうまではリン君と同じでように成功していたように思う。第2兵器と第4兵器は全ての担当が将軍だったからほとんど僕は手つけてないんだ。ごめんね、こんな説明で。第5兵器のことは……初耳だ。少なくとも、この研究所では作っていないよ?どこから聞いたの?」
「マラカナからリン経由……あとはまぁ色々な所からですね」
グレースが答えた。
「マラカナちゃんが⁇ えっ、でも兵器関連のチームは解散しているはず……今のプロジェクトとは確実に違うし」
「プロジェクト?」
「ごめん。それは言えないんだ。でも、悪いことじゃないよ? 人類の未来のための夢のようなプランさ。成功すればそのうち発表できると思う。ただ、この研究をジャマしようと企む機関がいて危険だから極秘にしているんだ。僕は担当外だけどね。もしかしたら、外ではその怪しい機関にバレないために第5兵器作ってるって言っているのかもしれないね」
ジョンの言葉に嘘は言っていないように感じた。




