【さて、行きますか】
バモールの研究所は全てが白い。
まるで病院のように壁から天井から何もかもが真っ白だ。
同じように作られたフロアと正確に区切られた各々の部屋が、ずっと円を描いたように縦に続いている。
ロットの研究所よりも通路はかなり広く、開放的な造りになっていた。
吹き抜け部分の天井からは明るい色のライトの光が最下位まで届いていて、地下にも関わらず太陽が光を注いでいるようだった。
エレベーターを降りて通路を進んだ先のセキュリティをパスし、扉を開けるとそこは研究所であった。
グレースたち4人はマラカナに誘導されるがままエスカレーターを乗り継ぎ目的の13階までやってきた。
「こちらです」
マラカナはそう言って、ドアの外にあるブザーを鳴らす。
プーッとあまり聞きなれない音がした。
「はい?」
男性の声が返ってきた。
「マラカナです。先ほど連絡したご子息あとお友達もお連れしました」
「あーマラカナちゃん? はいはーい! 息子ね! どーぞどーぞ? 中へ入れてやってくださいな」
男性がそう言った瞬間、自動で扉が開く。
通路の先に扉が右側に2つと奥に1つあった。大きさ的に右の2つはレストルームとシャワールームのようだ。
「この声の感じは、間違いなくカヲルの親御さんだな」
グレースは言った。
「カヲルの父ね」
「カヲたんパパだわ」
ワイズとカトレアも同意する。
「みんな会ったことないだろ?」
カヲルは笑って言った。
「いや、だって喋り方が……」
「私はここで失礼しますね。帰るときは声かけてください。地上に送りますので。こちらの番号にかけて私に繋げてもらってください」
グレースの言葉を遮り、マラカナはそう言って彼に内線の番号が書いてあるメモを渡した。
よろしくと伝え、彼女はエスカレーターの方へ去って行く。
「ま、行きますか?」
カヲルに促され、みな部屋へ入って行った。