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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第13章 旅への出発
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【エレベーターの中で】

 時計塔の中に隠されていた、研究所まで続くエレベーターはゴォォォと聞きなれない不快な音を立てて、地下まで下がっていく。



「この先に……」


「ええ。ご要望のバモール研究所ですよ」


 カトレアの呟きにマラカナは答えた。


「ここにもいるのかな。えーあい」


 カヲルはアレ面白いよねと話す。


「えーあい? いません。ここでは使ってませんね」


 マラカナは否定する。


「どうして?」


 ワイズは尋ねた。


「彼女を発明した科学者は今この国にいないのです。彼がいないとメンテも何もできないので、不都合なんですよね。劣化でエラーが起きても困りますし」


「ロットの研究所にはいたけど?」


 グレースは聞いた。


「あそこはもう研究所として使ってないので。盗賊や他の国のスパイ対策にえーあいはそのままにしてました。グレースでしたっけ? あなたもリンとあそこに行ったのですか? 報告では確かカヲルとアプだけだったはずですが」


「行きましたね。教授から聞いてないですか? まぁ結局俺は何もできませんでしたが」


 グレースはしれっとアプに強く追求したことや研究の記録を見たことを誤魔化した。


 カヲルももちろんマラカナには言う気はない。苦笑いして黙っている。


「聞いてません。まぁいいですけど、今はもうあの施設もないですし」


「もうない? 俺たちがあそこに行ってからまだそんなに経ってないのに?」


 マラカナの不穏な言葉にカヲルは眉をひそめて聞いた。


「ええ。あなた達が全てのデータを取ってきてくれたのでやっと壊せました。もうあの場所には何も残っていません」


「そのために行かせたんですか?」


 グレースは尋ねる。


「ええ、もちろん。後はリンが私たちに協力的かどうか試すためです。あの子は素直な良い子でしたね。思う通りに動いてくれた。ユナよりもずっと信頼できる子に育ってて安心しました。何があっても人類側についてくれると確信しています」


「リンリンを何かに利用する気なの?」


 カトレアは不安そうに聞いた。



「これ以上は何もしませんよ? 後は成り行きに任せます。リンは信頼できる……これに尽きます。私達は国の中でも身内でも敵が多いのでね。この研究所の職員たちと将軍、あと学院の一部の人間くらいですね。味方は」



「俺の親父はどこにいるんだ?」


 カヲルは尋ねた。


「たぶん、研究所の自室にいると思いますよ? エレベーターが着いたら連絡取ってみますね。研究所内は真ん中の吹き抜け部分を円形で囲うような建物の作りになっていて、中では全てエスカレーター移動です。それ以上詳しく説明はできませんが、主任の部屋は13階の最上階フロアです。そこまで案内しましょう」


 マラカナはそう言ってカヲルを見る。

 そしてニコリと笑った。


「……俺の顔に何か?」


「いえ、似てるなと思っただけです。叔母に」


「は?」


「あなたの母は私の父の妹ですからね。主任と離婚されてすぐ病気で亡くなりましたけど。難病でしたから」


 マラカナは物静かでとても優しい人でしたよ?とだけ告げた。


 カヲルは3歳の頃に家を出て行った母の…初めて聞かされる事実に驚き言葉が出ない。


「じゃあ2人はイトコ同士なの⁈」


 ワイズは声を上げた。


「ええ、まぁたぶん。私がリヴァル家に養子に入った父の本当の子供なら」


「それは……」


 グレースは言葉に詰まる。


「うちの母は男性にだらしないので。実際、弟のギアスは父親が違います。たぶん。愛人の1人に弟に似てる人がいましたのでね。母はとても美しい人なので……まぁ私は諦めていますよ」


 マラカナはそう言って、ふふっと笑った。



 それ以上何も言えず、エレベーターが到着するまでみな黙ってその場に立ちつくしていた。


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