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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第13章 旅への出発
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【この声は……】

「うーむ。鍵がかかってるな。開かないや」


 カヲルは時計塔の下の入口のドアノブを回して言った。

 絶対ここなのに……と、もどかしい気持ちで少しイライラして見える。



「呼び出しのベルとかもないのかな?」


 カトレアは時計塔の周りを回ってみる。

 そんなに大きくはないのですぐに一周した。


「やっぱり何もないねぇ……」



「うーん、ノックでもしてみる?」


 グレースは冗談混じりに言ってみた。



「まぁいっそ壊すって手も」


「それはちょっと……捕まりそうよ?」


 カヲルは強行突破でもする気のようだ。

 ワイズは止めたが、ここまで来るのにかなりの時間がかかっている。

 カヲルが急ぎたい気持ちも分かる。


 彼が鍵を破壊するのも時間の問題だ。


 何か手はないかなと考えていた。



「大きな声で呼んでみるとか」


「実はカラクリ扉で」


「床に仕掛けが」


 みんなあの手この手を勝手に話し出す。



「あれ? あなたたち……」



 ふいに後ろから声がかかった。


 どこかで聞いたことのある声だった。




「確か、リンの仲間たちですよね?」



 みんなは振り向いた。


 そこには軍人の格好には少し似合わない、学生のような幼さ残る顔立ちの女性が一人立っていた。


 グレースたちはお互い顔を見合わせながら、誰だ? 誰? とボソボソと呟く。


 そう、ここにいる全員がまだ彼女に直接会ったことがなかったのだ。




「どうも。将軍の秘書で軍人のマラカナ・リヴァルです。みなさん初めまして……ですね?」


 彼女はそう言って敬礼した。


 とりあえず、みな挨拶はする。



 この女性が『あのマラカナ・リヴァル』だと、グレースたちは心の中で静かに驚いていた。


 管理ビルでリンとやり取りしていたあの声の主とまさかここで出くわすとは思っていなかったのだ。



「それにしても、こんな所でどうしたんですか?」



「……親父に会いに」


 カヲルはぼそっと呟いた。



 通信機の先で聞こえていた声の人物、みんなは揃って彼女の顔をマジマジと見ていた。

 思っていたよりも童顔で華奢な女性だったのだ。


「親父? 金髪、緑の目……あなたはリンの幼なじみのカヲルですね。ジョン・ヴァーシベル主任のご子息」


「よく知ってるな」


 カヲルは再び呟いた。



「それはもちろん。リンの同室者として最初から主任の息子を選定してますから」


 カヲルはこの軍人女の、まるで自分を今までずっと管理してましたと言わんばかりの物言いに嫌悪感を抱いた。


「研究所の入口はここですか?」


 グレースは尋ねた。


「ええ、そうです。でもよく分かりましたね。ここまで入ってきたのは、一般人や学生であなた達が初めてですよ。まぁ鍵がかかってて普通に開きませんがね」


 マラカナはそう言って腰につけた鍵を見せる。


「あの、彼の父を訪ねにレンバースに来て、唄の通りに辿ったらここに着いたんです」


 ワイズはマラカナにそっと伝えた。


「唄? あなた……もしかしてワイズ? もしかしてワイズ・シルバー?」


「そうですけど……」


 マラカナにいきなりフルネームを告げられ、ワイズは少し驚いた。


「そう。シルバー家とリヴァル家は親戚同士……深い繋がりがあります。昔、私と遊んでいた子はあなたですね」


「あなたがあの唄を?」


「ええ、そうです。アプの両親に教えてもらいました。忘れないようにと」


 マラカナはそう言って笑っている。

 ワイズは唄は覚えていたが、彼女のことは記憶になかった。

 小さかったので仕方ないが ……



「シルバー家のワイズとヴァーシベル主任のご子息……まぁいいでしょう。案内してあげますよ。そこのお友達2人も一緒にね」



 マラカナはそう言って、時計塔の前まで行き、鍵を開けた。


 ガチャっと開いたドアのすぐ先は大きなエレベーターのまたもやドアであった。



「ここから地下300メートルまで降ります。乗ってください」



 そう言ってエレベーターのボタンを押したマラカナに誘導され、扉が開いたと同時に4人は中は入った。


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