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リンが紡ぐ〜ある国のある物語〜  作者: dia
第2章 探索開始!
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【出発の朝】


 朝4時28分。


 まだ外は薄暗くひんやりとした冷気が漂う。ちらほら店の準備をし始めている人や外の清掃を行っている人などを見かけるが学生は誰もいないようだ。


 1限目の講義は9時から開始で生徒たちが動き出すのは早くても7時以降になる。


 今日の集合時間は6時……少し早く起き過ぎたようだ。


 カヲルはまだ部屋で寝ていた。


(いつも思うけど、この時間の学院ってホント静かだなぁ……)


 まだまだ肌寒くうすらぼんやりとした暗めの空と人が少なく静寂につつまれた空間にいると、少し寂しいような悲しいような不思議な気持ちになってくる。


 校舎の屋根の上にはいつのまに集まってくるのか猫が数匹寝ていた。学生がよく餌をあげるので山から下りてくるのだろう。


(《探索》終わって帰ってきても、しばらくは課題や報告書の製作に追われそうだなぁ……)


 帰院した時のことを考えると頭が重い。


(俺ももう16歳かぁ……卒業まであと何年だろ。俺は大人になったらどんな仕事してるんかなぁ)


 俺は公園の池の周りをのんびりと歩いていた。


「おはよう。今日はずいぶん早いね」


 この声は公園の男性事務員ラルフさんだ。水やりの最中こちらに気がついて声をかけてくれたようである。


 水がホースの先からシャパシャパと勢いよく飛び出していて、花壇に潤いを与えてくれていた。


「あ、おはようございます! これから外で野外活動なんです」


「そう! 外はだいぶ落ち着いてきたと聞くけど、それでも危険には違いないから道中気をつけてね!」


「はい! ありがとうございます」


 ラルフさんも外に出たりするのだろうか…それともここから出ていないのだろうか。

 ふと気になったがとりあえずお礼を言って、その場を後にした。




(そろそろ空が明るくなってきた。5時過ぎたかな)


 みんなとの待ち合わせ場所は学園の出口に一番近いという理由で俺たちの寮の3号館玄関前になった。


(そこなら広いし目立つし、何より俺たちは楽だ)


 俺は来た道をそのまま戻り、寮の近くのテラスの横の道を歩いていた。


(ここにいるとつい忘れちゃうけど、外では国から発行されたコインで売り買いとかしなきゃいけないんだよね)


 《探索》のたびにコインは支給されるため、いつのまにか結構な額を持っている。



 俺は自分の寮へ帰ってきていた。


 部屋まで戻りカヲルの部屋のドアをノックして開けると、彼は荷物の確認中であった。

 ベッドの脇には本人が脱ぎ散らかしたであろう服が無造作に置いてある。



「どこ行ってたん?」


 眠そうな目を手で押さえながら、カヲルは聞いた。


「散歩してきた! 早起きは気持ちいいよ!」


 俺はそう言ってピースする。


「あそう。朝からテンション高いねー」


 カヲルは面倒くさそうに答え、ふと時計に目をやる。

 時計の針がもう少しで6時を指しそうだ。


「って、ヤバ! リン時間ねーぞ! 急げ!」


 カヲルは鞄を持ってドアーの方へと走る。


「うわ、まじか! 遅れちまう」


 俺は用意してあった自分の鞄を慌てて持ち上げ、急いでカヲルの後に続いた。

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