4ー①
屋上で遠くを見つめる俺。
そんな風に誰も居ない屋上で黄昏れている痛々しい中二病紛いの男子高生が居た。
当然俺だ。
西九条つくしと別れた後。俺は何故か学校の屋上に来ていた。
「はぁ。いつの間にこんな能力を......」
俺はそうやって独り言を言いながら空を見つめる。
ていうか今気付いたんだが「独り言を言いながら」って重複してないか?トートロジーしちゃってるな。
独り言を言う、泣き言を言う、うわ言を言う、寝言を言う、戯言を言う......。
こいつらって定着してるけど頭痛が痛いの仲間だろうな。
「泣き言を言うな!」とかよく聴くからそのたびに、「泣き言をするな!なのでは?」とか言ってたらキリが無いから「頭痛が痛い」も許すべきなんじゃないか?
......考えるの面倒くせえ
「君!」
「......」
「君のことだよ」
俺は黙って辺りを見渡す。
そこには女が居た。
俺はその女を知っていた。多分この学校で知らない奴は居ないだろうし一度は耳にするだろう。
「もしかして自殺願望?」
「ちげーよ」
「目が死んでるよ?」
「元からだ。ほっとけ」
こいつは確か......東向ルナ。
可愛いを武器にしていると言わんばかりの権力の持ち主だ。東向ルナの取り巻きは全員顔面偏差値が高いのだが東向ルナの前では全てがミジンコに思えるほどの美貌の持ち主だ。
東向ルナの周りに立つ女子全てが引き立て役要員と成り果てる。当然野上北来羅と西九条つくしは例外だ。
言わずもがなスクールカーストの頂点に君臨していると言っても良い。
見た目は髪が長く背もやや高め。きりっとした顔に、胸は大きい割に体周りは細く完璧な体をしている。
神は二物を与えないとかほざいたやつを往復ビンタさせてくれ。
それくらい完璧美少女だ。ていうか完璧美人だ。
学校で東向ルナを知らないやつはいない。寧ろ知らないやつを知らない。
理由は単純明快。
なぜならこいつは美少女だからだ。
1+1=2のようなものだ。
「美少女であるから一目置かれる」はセットなのである。
「音能勢クラスでかなり嫌われてるよね」
「それがどうした」
「いや、私の友達が音能勢のこと嫌いだから」
「そっか」
俺はこいつと話したことは無いけれど思ったことがひとつだけあった。
いや、1つどころじゃ足りないね。
初対面の態度じゃない。グイグイ来るしグイグイ言葉の武器で刺してくる。
こういう女は自分が可愛いからって周りからチヤホヤされて生きてきてんだよ。
だから相手には何を言ってもいいと思っていやがる。
違うな。相手に何を言っても許されてきたんだ。
クソ喰らえだ。
ここでこの俺が根元から今までの何をしても許されたという固定概念をへし折ってやるよ。
「なあ、お前。そうやって可愛i......」
「でも私は好きかな。音能勢のこと」
「からって許されると......は?」
は?今なんて言った?
なんて言いやがりましたかこいつ。
好きだって言いやがったのか?言いやがりましたか?
「なーんてね。うそうそ期待しちゃった?ど・う・て・い・君」
――ピンポンピンポン♪
お約束の相手を揺さぶるお決まりのあれは俺には通用しない。
この学校屈指の美少女3人が同時に俺のこと好きだなんてありえないだろこれ。
新手のドッキリか?
ドッキリなのか?
夢を見ているのなら早く覚めろよ馬鹿野郎。
普通の人が好きなんだ。
こんな顔面兵器(勿論良い意味で)は嫌だ!
ていうかなんで俺は言われっぱなしなんだよ。次の一手を出さねば。
「そういうお前こそ経験ねーだろ。あんなことやこんなこともしたことねーくせにな」
俺も経験無いはずなのに何故俺はこんなにも強がっているのか。
「は?ありますー。あんなことやこんなことそんなことまでもしたことありますー」
――ピンポンピンポン♪
......こいつ恥ずかしくねーのか。
強がってんのかよ。
「へーそうなのかー」
「ぼ、棒読み............あんた今ものすごく顔がウザいわ」
「そうか?」
「うん。とってもウザい」
初対面とは思えない距離感は置いといて、ウザい顔はどうやら本当らしい。