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 「あ、音能勢くん!来てくれたんだ」

 「当然だろ」

 

 放課後。俺はいつもどおりいつもの場所へと向かった。

 勿論ゲームをするためである。


 「き、昨日はごめんね。変な感じにしちゃって......」

 「......全然大丈夫」


 無論。大丈夫じゃない。

 学校で唯一の友達と思っていた西九条つくしが俺のことを好きだった。

 そして、西九条つくしがゲームを好きになったのは、俺がゲームを好きだからだ。

 「話すきっかけになる」と、西九条が努力して今まで無縁だったゲームをやり始めたのだ。

 

 「昨日のことは嘘だから気にしないでね」

 ――ピンポンピンポン♪

 

 「............ああ。気にしてない」


 当然のように俺は嘘をついた。しかし、俺自身にはこの能力は発動しない。当然である。


 「変だよね。私が、その、音能勢くんのことが好きだなんて......」

 「............」

 「全然私は音能勢くんなんかと釣り合わないし他にいい人が沢山いるもん」


 釣り合わないのは俺の方だ。

 美少女でマイペース、不思議ちゃんチックでふわふわしている男子から人気者の西九条と付き合ってみろ、嫌われている俺は更に嫌われることになるし待ちゆく人にさえ何を思われるか分かったもんじゃない。


 むしろ今の二つの発言が嘘じゃないことに俺は驚いている。

 俺のことが好きなのが変だってことは自分自身よくわかる。

 俺でさえ俺のことを好きになるやつは変人だと思ってしまうほどだ。野上北とか言うツンデレ野郎はある意味変人だったけれどな。

 それに俺が驚いたのは2つ目の発言だ。

 圧倒的美少女の西九条に釣り合う男を探すほうが難しいのに何で俺以下だとお前は思っているんだ。

 

 おそらく西九条つくしは自信が欠如しているのだろう。

 まあ、よく聴く話だが容姿が整っている方が容姿に対してのコンプレックスは大きいらしい。

 おそらく()()なのだろう。


 「なんか変な話ししちゃった............昨日のゲームの続き......やりたい」

 「いいよ」

 「wifiは私がポケットwifi持ってるから大丈夫だよ」

 「......うん」

 

 おそらく。これも俺と通信を買うために買ったのだろう。

 最初持ってると聞いた時はかなり驚いたのだが......もうこれは俺視点から見てもかなり健気すぎる。

 

 「............」

 「............」

 「電波弱いのかな」

 「みたいだな」

 「............」

 「............」

 「あっ繋がった」

 「うん......」

 「............」

 「............」

 

 気まずい。

 

 西九条は俺のことが好きだけどバレていないと思っている。

 俺は西九条が俺のことを好きだと知っている。

 

 もっと詳しくすると更に気不味い。


 西九条は俺のことを好きなのに好きじゃないと宣言してしまった。

 俺は西九条の嘘が分かり今までの関係に不信感を抱いている。


 西九条つくし、俺はお前のことを友達だと思っていたんだがな......、


 ただ純粋に友達になってくれていたと思っていた。裏とかそういう探り合いとかは無しで。

 まあ、こんな嫌われている俺に友達とかできるわけない。むしろ、俺のことを好きで居てくれる人が居るだけで凄いことなのかもしれない。

 しかも、美少女が二人も俺のことを好きで居てくれている。

 普通は羨ましいと思うのが当然だ。俺だって自分の置かれている状況は他者よりは良いと思っている。

 嘘発見能力がなければ尚更良いのだが、それが無いと知ることが出来なかったわけで。

 人間はないものねだりだ。

 

 「お、音能勢くん......」

 「ん?」

 「死んじゃってるよ」

 「ほんとだ」


 気付いたら死んでいた。

 ていうか、よく見たら西九条めちゃくちゃ可愛くないか?

 俺はここで気付いた。西九条つくしのことを言葉では美少女だと認識をしていても、異性として美少女とは認識していなかった。

 そう、俺が友達から異性へと意識を変えた瞬間に見えてくるものは違った。違っていた。


 友達がいないどころか異性と言っても異性と()()認識していない野上北を除けば、異性と話すのは久しぶりだった。久方ぶりだった。


 ましてや、美少女。

 しかも二人きりで放課後一緒。

 ここで俺の高校で必要最低限の常識がやっと仕事をし始める。


 この状況を他のクラスメートが見たらどう思うか。無論。

 「音能勢と西九条はデキている!」である。

 二人きりという状況も無くしたいしひとまずここでするのもなんか違うし。

 考えるのが面倒くさい。明日の俺に任せよう。

 考えるのを放棄した。


 「あっそうだ」

 「どうしたの音能勢くん」

 「ゲームをここでやるのは不味い気がしてきた」

 「え?どうして」

 「他の人に見られたらあれだろ?」

 「あれ?............そ、そうだよね!」

 (え、急に意識し始めてくれた!今まではアタックしても無反応だったのに......もっと頑張ってこれからアタックしてみよっと)

 「ある程度ゲームやったしまた明日!」

 「う、うん!」

 (また明日?いつもは言ってくれないし暗黙の了解みたいだったのに!昨日失敗しちゃったと思ったけどあれが効いたのかな?嬉しい!!)


 音能勢の考えとは裏腹に事態は悪化していた。

 当然西九条つくしが考えていることは音能勢には分からない。

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