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 俺のこと好きなのかよ。

 散々嫌いだの罵声を毎日のように浴びせてきたくせに......。


 「ふん、まあ私自身言い過ぎた所もあるわ。お互い様ね」

 「あ、ああ」

 「じゃあ、仕事も終わったし帰りましょ」

 「いや、一人で帰れ」

 「なんでよ」

 「俺のこと嫌いなんだろ?」

 「嫌いよ」

 ――ピンポンピンポン♪


 「じゃあ一人で帰れよ」


 「ふん、一緒に教室帰りたいとか別に思ってないし」

 ――ピンポンピンポン♪


 「そもそもあんたとここまで運んでる時ずっと苦痛だったし」

 ――ピンポンピンポン♪


 「一人で帰れるってなって嬉しいくらいよ」

 ――ピンポンピンポン♪


 好きな人には全部筒抜け。その上、ツンデレだから空回りしている。

 正直ツンデレというのは見ている分には全然良いと思うがツンデレの対象となる本人は気付かないことが多い。

 つまり、かなり嫌われていると勘違いすることがほとんどである。

俺はツンデレ属性はあまり好きではないんだけれど、一応俺はこいつの好きな人であり、その人に若干思考が筒抜けで空回りしてしまっているのは客観的に見ても主観的に見ても可哀想である............助け舟を出してやるかとか思ってたけどなんかウザいから辞めとこ。


 「そうか一人で帰れよ」

 「ええ、その代わり私は近道がしたいから反対側の通路から帰りなさいよ」

 「いいや、俺は一人で帰りたいとかそんなの気にしねーから近道を通るね」

 「あんたから提案してきたんじゃない!それに、お、女の子には優しくでしょ」

 「それ、性差別だからな。お前のこと女なんて思ったことねーから」

 「思わなくて結構ですから!」

 ――ピンポンピンポン♪


 こいつ、面倒くさいな。素直に落ち込めば可愛いものを......なんというか、本当に可哀想だ。

 まあ、好きな人に女と認識してほしいってのはあるのかもしれない。

 

 「まあ、女だとは多少思ってるかもしれん」

 「......うっわ」

 (なんだこいつ面倒くさ)

 「......メスゴリラくらいには」

 「最低!死ね!」

 ――ピンポンピンポン♪


 やっぱ無理だ。普通に今までのことを考えたら無理すぎるこの女。

 いちいち構ってきやがる割には悪口ばかり言いやがる......ん?でも、それが俺のこと好きだったから話したくてってことだったらちょっとは可愛いのかもしれない。

 今日くらいは遠回りしてやってもいいかな......って思ったけどこれもまた面倒くさい。

 思うだけなら簡単だな。

 俺は面倒なことは嫌いだ。

 

 「じゃあ、俺は先に行くからお前は遠回りしろよ」

 「は?私が近道行くわよ!」

 「面倒くさいな。そんなに嫌なら勝手に後ついてくれば良いだろうが」

 「本当に気の利かない男よね」


 ほう。これはどうやら本心らしいな。

 まあ、そんなことはどうでも良いのだが。

 なんにせよこの能力。普段とは違う視点で人を見ることのできる素晴らしい能力ではないか。

 ............。

 面白いな。この能力。

 せっかくここは密室で誰も来ないのだから試せる絶交の機会だし色々質問してみよう。

 違った視点で人を見ることにより違う感情が生まれるかもだからな。

 

 「な、なあ。野上北」

 「なによ急に」

 「お前さ、好きな人居る?」

 「はぁあ?なんで急に」

 「居るのか居ないのか。yesかnoかで答えて」

 「い、居るわよ......悪い?」

 「へぇ、いがいだなー野上北にも居たんだなー」

 「棒読みウザいわ」

 

 居るって自ら言ってきやがった。俺の昔の......昔って言ってもつい先日ほどまでの野上北のイメージでは「あんたに言うわけ」みたいな発言をしてくる感じだったのにも関わらずだ。

 おそらく俺が「好きな人」だからだろう。

 嫌がりながら答えてしまうのはツンデレだからか?

 でもこのツンデレは病気の域だ。

 好きな人に罵声をあげまくるやつなんてこの世に野上北以外に居るのか?


 「お前自分のこと世間では可愛いって思われてるとかって思ってる?」

 「全然私なんて可愛くないし、他の子のほうがもっと可愛いわよ」

 ――ピンポンピンポン♪


 これは至って普通の感覚だ。これぐらいの美少女に生まれてきたら俺だって周りの女は糞に見える。


 「自分は学校で3本の指に入るくらいの可愛さ?」

 「いいえ」

 ――ピンポンピンポン♪


 まあ、三本の指には入るのかな?

 俺が学校で知ってる美少女にこいつを含むのは気が引けるが3人の中には入っている。


 「自分が一番?」

 「いいえ」

 ――ピンポンピンポン♪


 ま、まあ、これも自分が好きなやつだったら不細工だろうと何だろうと自分が一番と答えるだろう。


 「自分の命の重さは百人よりも重い?」

 「んな、バカみたいな質問しないでよね。そんなこと思ったこと無いわ」

 ――ピンポンピンポン♪


 ま、ま、まあ俺も多少それくらいは思ってるし。


 「もしかして一万人?」

 「ないないない。重くないわよ」

 ――ピンポンピンポン♪

 

 ............。

 

 

 「へぇー」

 「......貴方今とんでもない悪人顔をしてるわよ。見下してる感じ......」


 どうやらこれは本当みたいだ。

 楽しいな。

 人の闇を暴くのはここまで楽しいとは正直思いもしなかった。

 まあ、結果としてこの能力を使うと『楽しい』しか得られなかったけれど。


 案外悪くない能力なのかもしれない。



 って思ってたよさっきまで。

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