新学期
長い夏季休暇がおわり、学院に続々と生徒が帰ってくる。
今日から新学期。私は少し早く寮をでて校舎の入り口で二人を待つ。
あちこちで友達同士の挨拶が聞こえる。
「あっ、ティアネット!」
私はティアネットの姿を見つけて駆け寄る。
「アルメリー様!おはようございます!ご実家どうでした?」
「のんびりしてきたわ。果樹園以外、これといってなんにも無い所だったわよ。お父様は領民に割と慕われてて馬車で通りかかった時に見た村や町は活気があったわ。町には建築中の建物も沢山あってまさに発展中!って感じだったわ。それでね、ここだけの秘密だけどウチで作ってる果実酒をお父様に頼み込んでこっそり飲ませて貰っちゃった。ホント美味しかったわ~。ウフフフ……!」
「あー……なるほど?」
「そっちは?休み中、帰省しないって言ってたし寮にいたんでしょ?何をやっていたの?」
「せっせとポーションを作ってました。結構頑張りましたよ?生徒会が全部買い取ってくれましたので、ちょっと懐はホクホクですよ?」
「それはよかったわね♪」
二人で話していると、リザベルトが登校してきた。
「アルメリー……ティアネット……おはよう……」
「リザベルト様!おはようございます~!」
ティアネットがいち早く気づき声を掛ける。
「おはよう、リザベルト様。実家の方はどうでした?」
「うちは……ここより……北の方、なので……涼しくて……過ごし……やすかった。でも……お父様が……いつもより……険しい顔を……していたわ……なんだか、例年より……作物の……育ちが……悪い……みたいで……」
作物の育ちが悪い?あー、税収が落ちる事を心配してるのかな?それとも食糧不足が心配なのかな?
「それはお父様も心配でしょうね……」
でも、セドリック様の誕生日会でリザベルトのご両親にお会いしたことがあったけどお父様パッと見やり手そうだったし、大丈夫よね。
辺りではガヤガヤと多くの人の声が聞こえる。気になり声の方へ向くと何やら掲示板に人だかりができていた。何かが張り出されているらしく、皆それを見ているみたい。
「なんでしょうあれ?見に行きません?」
「そうね、いってみましょう」
ティアネットの誘いに同意し、私達はそこへ向かう。
張り出されていたのはどうやら新しいクラス分けの表みたいだった。
見終わった人が人混みから抜けていき、まだ見てない人が見ようと入れ替わり立ち替わりして団子状態になっている。私達もその人混みに分け入っていく。
前期の魔法の成績でクラス分けがされているみたい。
「学級替え、かなり早いのね?」
「一年は同じ学級かと思ってました~」
「この学院……実力主義な……所あるって……聞いてる……から……」
「なるほど。えーと、私達の名前は……」
学級はそれぞれ色の名前がついている。今年は五つの学級があり、上から順に「ルージュ」「ヴェール」「ジョーヌ」「ヴィオレ」「マロン」となっている。
三人とも「ジョーヌ」学級に名前があった。
「『ジョーヌ』クラスということは…普通ですね?」
「まあ、伸びしろがあるって事よ?あはは!それより、今度の学級はみんな一緒ね!嬉しいわ!」
「ええ……。よかった……」
私達が喜び合っているところへ後ろから声を掛けられた。振り向くとそこにはいつも通りの三人組、スリーズ達がいた。
「おはよう、アルメリー」
「あ、おはようスリーズ。それにフェーヴ様、サントノーレ様もおはよう」
「おはようございます」
「おはよー!」
私は掲示板をちょいちょいと指さす。
「なんだか新学期から学級替えするみたいよ?」
「へー?」
「スリーズ様、私達一緒だといいですね?」
「そうね!……で、私達はどの学級なのかしら?」
彼女達は掲示板に張り出されている名前を目で追う。
「……ジョーヌ学級ね?ふふふ。待ってなさい、すぐに上の学級へ行って見せますわ!」
「ふぅ……よかった。スリーズ様と同じ学級で」
「また同じ学級だねー!」
「あなた達、しっかりついてこないと置いていきますわよ!?」
「「はーい」」
そこにはしっかりと前を見据えた彼女がいた。私には少し眩しい気がした。
「さぁ、私達も教室へ行きましょう?」
「そうそう、アルメリーさん。実技試験のあと成績が張り出されていたじゃない?成績上位二十位以内に入ってましたわね?おめでとう。さすが私の好敵手だわ」
「あ、ありがとう……えへへ」
「わ、私も負けませんからね!……(魔法の授業では……)」
最後の方、小声でちょっと聞き取れなかったが、彼女の表情を見るにそこまで気にするほどの言葉ではないのだろう。
私達は新たな教室へむかうのだった。
◇
教室につくと、席は暫定で名前順に座るよう黒板に書かれていた。後日席順を決めるらしい。指定された席へ行き、机に荷物を置く。
予鈴が鳴り、暫くして教官が入室してくる。新しい担任の教官から軽い挨拶の後、始業式のため大講堂へ行くようにと指示があった。教官の後についてゾロゾロと生徒が列をなして歩いて行く。
大講堂に入ると担任の教官が先頭の子に私達の学級の生徒が行く場所を指示して離れていく。
どうやら下級生が前の方、上級生が後ろの方に学級ごとに整列するようだった。
入学式と同じように学院長の長い話、新しい下級生の主任教官の着任の挨拶、生徒会長、副会長の挨拶等予定されていたプログラムが淡々と進み始業式が終わった。
今日は授業は無く行事も始業式だけなので、午前中で終わってしまった。私は帰る用意を終わらせると、鞄から生徒会からの書状を出す。
そこへリザベルトが寄ってくる。
「……アルメリーも……それ、提出に……行くの……?」
「うん!リザベルト様も一緒にいく?」
彼女はこくりと頷く。
「アルメリーさ゛ま゛ぁ゛……」
いつの間にか近くに来ていたティアネットがしくしくと泣く。
「今回はダメだったけど、次の機会に頑張りましょう?とりあえず近くまで一緒に行く?」
「は゛ぁ゛い゛……い゛ぎま゛ずぅ゛……」
彼女は泣きながらついてくるのであった。
生徒会室のドアの前に到着する。私は、後ろに付いてきている彼女の方へ振り向く。
「ティアネットはここで待っている?もし遅くなるようなら先に帰っていてもいいからね?」
「わかりました。でも、暫くはここでまっていますぅ~」
彼女の髪を軽く撫でてから、振り向いて扉の前で背筋を伸ばし、息を吐く。一旦精神を落ち着かせてから扉をノックする。
「推薦状を持って参りましたアルメリー・キャメリア・ベルフォールです」
「……失礼……します。同じく……リザベルト……シャルール……マディラン……です」
「入りたまえ」
「し、失礼します」
緊張しつつドアを開け、室内に入る。委員会の時に来たときと変わっていない。なんだかちょっと懐かしさも感じる。入り口で止まっている私達に会長が穏やかに声を掛けてくる。
「どうした?さぁ、奥まで入ってきたまえ」
「は、はい……」
生徒会長に促され、彼の執務机の前まで行く。
「アルベール様、こ、これ、お願いします!」
「私も……お願い……します」
机の上にサインを記入した推薦状を置く。アルベールは羽根ペンを取り、その書状に自分のサインを書き込む。
「よく来てくれた。我々は君達を歓迎しよう」
彼は優しく微笑む。凛々しい顔ぐらいしか見た覚えがないので、普段見せる表情とのギャップが魅力的すぎて心臓の鼓動が早まる。
「これで、君たちは生徒会の一員だ。エルネット、彼女達に説明を頼む」
「かしこまりました。会長」
私達は生徒会について一通りの説明を受ける。主な仕事は学園内の見回り、及び校内の美化、企画の立案、校則の提案や修正及びそれに伴う教官会議への交渉、各種申請の処理、王国から学院を通し生徒会へ与えられている予算等の申請や割り振り他、多岐に渡った。
エルネット先輩はふぅと息をつく。
「こんなところですわ~。わからないことがあれば聞くといいのですわ~」
「はい、わかりました」
私はふと、思い出したかのように彼女に質問を投げかける。
「私達の他にも生徒会に入られる方がいると思うのですが、どんな方々ですか?」
彼女は少し考え込むと、何かを思い出したのかクスッと笑う。
「そうですね〜。全員揃ったら顔合わせする予定ですので、それまでのお楽しみですわ~ウフフ~」
私達は目を見合わせる。
「新学期が始まったばかりで、今の所二人に頼むような仕事はないのでな。今日は寮に帰りゆっくり休んでくれたまえ」
「そうそう、あなた達は来週の月曜日の放課後から生徒会室へ来るようにしてくださいね~」
「分かりました!それでは失礼します」
私達は会長に対してカーテシーをして踵を返して歩き出すと、テオドルフとヴィルノー、マルストンが横から声をかけてきた。セドリックはこちらをチラリと見た後、また視線を分厚い本に戻し黙々と読書を続ける。
こいつ-!なによその態度!あなたリザベルトの婚約者でしょう!?何か一声掛けてあげなさいよ!きーっ!ムカツク!
「やったな!まってたぜお二人さん!」
「お二人の生徒会加入、心よりお喜びいたします」
「これからは生徒会でご一緒できますね!うれしいです。なんでも言って下さいね!」
「ありがとう三人とも。これからよろしくね!」
「あの……よろしく……お願いします……」
歩みを止めて部屋を見渡すと、ランセリアとフェルロッテはどうやらいないみたい。やっと念願の生徒会入りができたこの喜びを伝えたかったのに!残念だわ……。
そうこうしているうちに生徒会室のドアがノックされる。
「入ってくれたまえ」
アルベールが声を上げる。
その声に私は、はっ!と気がつく。自分の世界に入り込んでいた私をリザベルトが服をちょんちょんと引っ張って注意をしてくれている。彼女に軽く礼を言って歩き出す。
正面のドアが開き、廊下で書状を持ったまま待機していた生徒が生徒会室へ入っていく。私達はすれ違いざまに軽く会釈し入れ替わりで退室する。
外に出るとティアネットはずっと廊下で忠犬のように待っていた。
「ティアネットお待たせ。用件は終わったし、帰りましょうか?」
「はい!」
リザベルトもコクリと頷く。
私達が生徒会に入って活動するとなると、彼女と一緒にいる時間が減ってしまう。このままではティアネットが一人になって可愛そう……。なんとか出来ないか、今度生徒会の皆さんに聞いてみよう。
他愛のない会話をしながらその日はそれぞれの寮へ帰宅するのだった。
◇
次の日の朝。私はいつものように学院へと登校する。途中ティアネットと合流し一緒に歩く。
「……魔法の授業、どう変わるんですかね-?少し不安です」
「そこまで不安にならなくてもいいんじゃないかしら?」
「……そうですか?」
彼女は心配そうに呟く。
なんと返そうかと考えていたところに、後ろから声がかかる。振り向くとサロンのメンバーの下級生の子がそこに立っていた。
「アルメリー様、おはようございます。明後日、マドレリア様がお茶会を開くそうです。マドレリア様がアルメリー様に『例のモノよろしく……』と伝えておいてとの事なので、私には何の事かよくわかりませんがお伝えましたので、よろしくお願いしますねー」
無邪気な笑顔でそれだけ言うと、彼女はタタタッっと走り去っていった。
マドレリア様の頼み……。うぅ……、前回のあのお茶会から軽く一ヶ月以上空いてるのに、あの人忘れてなかった……。まぁ、今思えば学期末試験勉強中にお茶会を開かれなかっただけでも良しと思わなければ……。
「はぁ……」
ティアネットは私の顔を覗き込みながら不思議そうにしている。彼女は私がため息をついたのを見て気になったのか、尋ねてきた。
「アルメリー様、どうしました?お茶会のお誘いにため息なんて……」
彼女の言葉を聞いてハッと我に帰る。いけないわ!心配かけさせちゃ!慌てて笑顔を作る。
「なんでもないのよ!なんでも。ちょっとしんどいなーと思っただけ!」
「しんどいなら、参加しなければいいんじゃないですか?」
「……」
彼女の言葉に、私は咄嗟に何も返すことが出来なかった。
頭をぶるぶるっと振って気持ちを切り替え、彼女の手を取って歩き始める。
「ほら!早く行きましょう!遅刻しちゃうわ!」
私達は急いで校舎へ向かうのであった。
◇
「……以上だ。今日から通常通りの授業を再開する。各自、受講する授業に遅れないように」
担任の教官が連絡事項を注げ、教室を出る。
1限目に行われたのは席替えだった。「公平に決めるため」と言う教官の判断でくじ引きが行われ、席が決まった。リザベルトとティアネットとは割と近くになったので良かった。スリーズ達は謎の剛運で前後並びとなり、三人とも一ヶ所に纏まったが席はちょっと離れた所になった。
教室はクラス替えで生徒が大幅に入れ替わり、交友関係がまだ出来てないのか皆どこかぎこちない。
ティアネットが近づいてきてモジモジと話し始める。
「次の授業、魔法薬調合の授業があるのでそちらに行きたいのですが、いいですか?」
「遠慮は要らないわ。私より受けたい授業を優先して?それは貴女の力になるから。がんばってね」
「はい、頑張ります!」
手を振って彼女を見送る。
「さぁ、私達も行きましょう、リサベルト様」
「……ええ、そうね。……いきましょう」
リザベルトの表情が一瞬寂しそうな気がしたが、すぐに笑顔になり私の横に立つ。私達は廊下に出て雑談をしながら研究棟へ向かう。
話すネタが尽きてしまい暫く会話もなく歩いていたが、彼女は少し考え込んだ後、徐ろに口を開く。
「……ねぇ、アルメリー……私を呼ぶとき……様を……付けないで……欲しい……の」
「え、でも……周りがなんて言うか……。それに今更じゃない?」
いきなりのことでちょっと困惑する。
「……いいから……お願い」
「ごめんなさい、何故か聞いてもいい?いきなりすぎて、ちょっと私も戸惑っているの」
「実家で……休みの間ずっと……考えていたの。……貴女も、令嬢として……敬称……つけて呼んでくれて……いるのは、理解……できるの。でも……ティアネット、と……あなたを……見てると、どうしても……自分と、比べて……しまって……距離を……感じるの。スリーズさんとも……お互い、敬称無しで……呼び合って……いるし……」
「二人きりの時は敬称無しで呼んでると思うけど……?」
彼女はぎゅっと目をつむって髪を振り、イヤイヤとジェスチャーして、目を見開くと肩を掴み、急に顔がぶつかりそうなぐらい寄せてきて私の目の中を覗き込み懇願する。そんな彼女に気圧され私はしぶしぶ了承する。
ここまで言われると仕方ないわよね、夏季休暇中もずっと悩んでたみたいだし……。
「……わかったわ。えっと、リザベルト?」
リザベルトはとても晴れやかで満足そうな顔をする。
「ウフフ……ありがとう……アルメリー……」
彼女は微笑むと嬉しそうにくるりと回って軽やかにスカートを翻して歩き出す。私もそれに合わせて足を進めるのだった。
私達は研究棟の奥へ進み練習場が併設されている教室へと到着する。
教室はすでに半分ぐらい席が埋まっていた。まだ覚えていないけど学級で見たことある顔もちらほら。私たちは空いている中央あたりの席に座る。
横から声がかかる。
「おはよー!」
「おはようございます」
「アルメリー、おはよう。隣いいかしら?」
「あ、スリーズおはよう。空いてるのでご自由にどうぞ?フェーヴ様、サントノーレ様もおはようございます」
彼女は回り込んできて右隣に座る。スリーズ、サントノーレは一段上の机に座る。
「ティアネットはー?」
「彼女なら……魔法薬調合の……授業に……」
「なるほどー」
スリーズがコホンとわざとらしく咳をする。
「……私、魔法では一番上の学級を目指すから。あなたもそのつもりでいてよね?」
「ええ、もちろんよ」
「えー。私無理よー」
「サントノーレ、あなたねー……最初からあきらめるんじゃないの。私たちはスリーズ様と一緒にいくって決めたでしょう?」
フェーヴがサントノーレを窘める。
「はーい。わかりましたぁー」
サントノーレは横を向いて口笛を吹く。
私達が喋っているうちに予鈴が鳴り、教室のドアが開く。
そして三人の教官が入ってきた。教官達はその後ろに用務員を連れて来ていた。用務員は重たそうに台車を押している。その台車にはぎっしり本が積み上がっていた。
「は~い皆さ~ん注目~!皆さんには新しい教本を渡しますぅ~。端の方から順に取りに来てくださいね~一人一冊ですよ~」
生徒に渡す際、用務員がリストの名前をチェックしている。生徒が各自それぞれ本を受け取り、自分の席へ戻る。
用務員に渡されたリストをみて、リリアナ教官が隣の男性教官となにか言葉を交わして納得したように頷いている。
リリアナ教官が指示を出すと用務員は台車を押し、教室から出て行った。
「ルージュ、ヴェール、ジョーヌの三学級は後期から中級魔術の勉強と、詠唱という『力ある言葉』の『最後の鍵』を学び、今まで詠唱だけだったものを一つ上の魔法として完成させる事を学んでいきますぅ~。あなたたちジョーヌ学級は詠唱での魔法の発動と制御が最低限、確実にできると私達教官が判断した子達ですぅ。今年の生徒さん達は優秀ですので~、中級魔法の授業に入れる学級が三つもあり私たちも喜んでいますぅ~」
「教官、ヴィオレ、マロン学級は後期、授業はどんな内容をするのでしょうか?」
好奇心旺盛な男子生徒が手をあげて質問する。
「ヴィオレ学級とマロン学級は前期と同じ内容の復習ですね~。発動と制御の安定ができなければぁ、『最後の鍵』を教えることはできませんから~。一か月に一回、認定試験ありますので~その結果次第で一つ上の学級に上がれる子もいると思いますぅ」
「ありがとうございました!」
リリアナ教官は手をあげてそれに返し、教壇の上に置いた鞄の中からごそごそと羊皮紙の束を取り出す。
「これから皆さんには~、後期からの授業内容を秘匿してもらいますぅ~。そのため簡単な誓約をしてもらいますぅ~。誓約にはこちらの用紙に自筆のサインと血を一滴いただきますぅ。内容は~、『他の学級の生徒および、学院外の者には誓約の内容と、これ以降習った内容を教えない』というものですぅ~。誓約を破ってしまうと~、呪いが発動して、喉がどんどん痛くなってもう魔法を使うどころか日常生活までとても辛くなってしまいますぅ~。ちなみにこの呪いの効果は永続なので~、それはもう大変ですよぉ~?」
リリアナ教官が笑顔で生徒を見回す。その笑顔に生徒たちは顔面が引きつり戦々恐々とする。
「まぁ、そうなると授業どころではなくなるので~、誓約を破ってしまった悪い子には~、最低一週間は独房でその罰を受けていただき~、独房から出た後にこれを付けて貰いますぅ。学院内でのみ、その呪いを抑制する魔道具、それがこの『コントレディラの腕輪』ですぅ~」
男性教官がリリアナ教官に腕輪を渡す。彼女はその腕輪がよく見えるようにと、教壇の上に乗せる。それは精緻な紋様と学院の紋章を刻印した銀色の金属製の腕輪だった。
「これは一度身に着けると学院を正式に卒業するまで外されることはありません~。そして、この腕輪を装備しているということは~、『秘密を守れない……信用ができない者』とみなされるので~、その後の学院生活が灰色に変わってしまうことでしょう~。また、学院を出てしまうと腕輪の抑制効果は発動しませんので~、あらあら?休日に繁華街に出て行っても痛みが激しくて遊ぶどころでは無いと思いますよ~?それから~、卒業後はこの腕輪は学院が回収しますので~、その後の生活はぁ~皆さんの想像にお任せしますが~。楽では無いでしょうねぇ~♪」
ひええ……なにそれ、怖い!
「教官、もしその誓約を断ったらどうなるんですか?」
女子生徒が震えながら手をあげて質問する。
「それは決まってますよぉ~。今すぐこの教室……いえ研究棟から出て行ってもらうだけですよ~?誓約できない生徒さんには学院の規則で~、この先は教えられませんから~。明日以降の授業も参加させませんし~、最悪欠席扱いになりますぅ~」
「ひっ!わ、わかりました……」
笑顔を貼り付けているリリアナ教官の背後に、ドス黒い何かが一瞬見えた気がした。
「え~散々怖がらせるような事を言いましたが~、皆さんが誓約を守っている間は何もおきませんので安心してくださいね~。あと~、他の授業で今日来られてないジョーヌ学級の他の生徒達にも次の授業でちゃんと誓約はしてもらいますから~。ではオテル教官が誓約の方をやってくれますので~、皆さんオテル教官の前に出席番号順に並んでください~」
生徒が席を立ち、ゾロゾロと列を作っていく。
「あ~そうそう~、今年の下級生は優秀な子が多いので~、後期は生徒の学級入れ替わりが多くなるかもしれませんね〜。今、あなたたちはジョーヌ学級にいるからと言って安穏とはしていられませんよぉ~?」
教官のいう通りだわ。気を引き締めて上を目指さないと。
列に並ぶと暫くして私の番が来た。誓約書にサインして、オテル教官の唱える言葉を復唱し、指先に針を突き刺し血を一滴、誓約書にたらす。すると誓約書は青い炎をあげ、あっという間に燃え尽きる。
「よし、誓約は成立した。席に戻っていいぞ」
生徒全員の誓約が終了し、改めてリリアナ教官が教鞭をとる。
「では、ここで前期の授業のおさらいをしますね~。魔法は詠唱だけでも発動しますぅ。前期であなた達が練習していたものですね~。これは制御をしやすくし、暴発や魔力枯渇により気絶して怪我をするのを未然に防ぎ、消費魔力を抑えて魔法を放てる回数を増やして自信に繋げ、とにかく基礎練習をしてもらい~、あなたたちの体内の魔力経路の強化や基礎魔力量を大きくする事が目的でした~。前期はここに重点を置いていました~」
前期は基礎連習だったのね……。うーん確かに。最初に教わったいくつかの詠唱以外、前期は一つも増えなかったもんね。中にはサントノーレみたいに勝手に覚えちゃう子も少しは居るみたいだけど。その分、一つ一つの魔法の精度をあげれた気はする。初級魔導書にも各属性の基本の詠唱が少ししか書いてなかったし……。
皆も同じ様に思っているみたいね。前期の授業内容のおさらいだと理解している分、気が抜けてしまっているのかあくびをする子もチラホラ。
「前期で皆さんがしっかり身に着けた詠唱という『力ある言葉』に『最後の鍵』を加えるとぉ、例えば攻撃魔法だとそれだけで威力を増幅することができますぅ。その分、消費する魔力は増えちゃうので魔法が放てる回数が減りますが~。その減った回数をある一定の水準まで引き上げるのが最初の目標ですぅ。う~ん、そうですね……個人差もありますが、最低七~十回ぐらいが目途でしょうか?では皆さん、教本をもって隣の練習場へ移動してください~」
私たちはゾロゾロと言われた通り併設されている練習場へ移動する。
「皆さん~、中級魔導書を開いてください~。最初の方に今まで練習してきた魔法の『最後の鍵』が書いてあると思いますぅ。自分の得意属性の頁をあけて~、ちょっと見てみてください~」
リリアナ教官は暫く生徒たちを見守る。
これを加えて唱えるだけ……?もっと難しい文言がいっぱい書いてあるかと思ったわ。ちょっと拍子抜けね。
「やってみたい子はいるかな~?」
生徒達がザワザワとしている中、スリーズが率先して手をあげる。
教官はパラパラと書類をめくって確認する。
「では~、スリーズさん。あそこの訓練用の人形に対して~、いままで練習してきた魔法の詠唱に『最後の鍵』をつけ加えて魔法を放ってみて~?」
「はい!」
訓練用の人形を見ると前期の授業ではただの木製の人形だったのに、今日は兵士用の金属の兜と胴鎧をつけられていた。
スリーズは一人、前へ出て所定の位置につく。片手に中級魔導書を持ち、火属性魔法の『最後の鍵』が載っている頁を開いたまま、利き手に持った杖を訓練用人形へ向け、詠唱を唱える。
「我は願う 火よ出でよ 火球となりて 疾く走り 敵を燃やし給え 火球」
彼女の前の中空に小さい火球が三つ、四つ生まれる。その火球が訓練用の人形に向かって勢いよく飛んでいく。
その内、いくつかの火球が訓練用人形に当たると、その接触した周囲をメラメラと少しの間燃やし、やがて鎮火する。
「教官、すみません言われた通りやったのですが、普段の時と同じでした。特に変化がみられなかったのですが……?」
彼女はそういって疑問の表情のまま教官を見る。
「そうですねぇ~、ただの初級の火球の魔法のままですよね~。何故だか分かりますか~?」
「い、いえ……分かりません」
「それは『最後の鍵』に魔力が込められてないからですぅ。では~、パルレ教官、お手本をお願いします~。皆さんよく見ててくださいね~?」
パルレ教官は標的となる鎧を身に着けた練習用人形に向け手を突き出す。その手には杖を持っていない。その代わり、その指にキラリと光るものが見えた。彼女は詠唱を唱え始める。
「渦巻く風よ! 我に敵なす者に 疾くゆきて その刃を振るい給え!」
手の先に埃や塵を巻き込みながら空気が集まり回転しつつ段々と大きく薄い円板状になっていき、人の頭部位の大きさに成長したそれは、手綱から解き放たれた猟犬のような獰猛さで空間を一気に駆け抜け標的の練習用人形に食らいつく。
金属の鎧が甲高い音を響かせ暫く振動を続けていた。確かに衝撃があったことが伝わってくる。
前期の授業で木人形だけの時は鋭利に両断されていたのを見た覚えがある。だけど金属鎧には効果が無いみたいだった。
リリアナ教官に代わり、パルレ教官が解説を引き継ぐ。
「詠唱だけの時は、金属鎧などをつけられているとこの通り弾かれてしまいます。では、次に『最後の鍵』を付け加え、その鍵に魔力を込めます」
すぅぅ……。
パルレ教官が息を大きく吸い込み、標的となる胴鎧を身に着けた練習用の木人形に向け手を突き出し、呪文を唱え始める。
「渦巻く風よ!我に敵なす者に 疾くゆきて その刃を振るい給え!風刃!」
先ほどと同じく、手の先に埃や塵を巻き込みながら空気が集まり、回転しつつ段々と大きく薄い円板状になっていく。先ほどと同じ大きさに成長したそれはさらに成長を続け、最終的に二、三倍程の大きさになった。教官がそれを解き放つと空間を一気に駆け抜け、標的の練習木人形に接触した一瞬だけ音を発して通り抜け霧散する。
木人形は微動だにしなかった。室内は静寂に包まれる。
……数秒の間を置き練習用人形は鎧ごと達人に斬られたかのように鋭利に両断され斜めにゆっくりとずり落ち、金属の甲高い音を室内に響かせる。
生徒達から一斉に「おぉー!」という歓声が上がる。
「この『最後の鍵』に魔力を込める……『一つ上の魔法として完成させる』事、これが魔法を習得する最大の難所でもあり、時間が掛かる所以なのです。感覚的なものなので、できる人は二、三週間から一ヶ月ぐらいですぐに習得できますが、連続して魔力を操作する……これが掴めない人は習得するまでとにかく時間が掛かります。この感覚の掴み方、理解の仕方には個人差がありますので私達教官も指導が難しいところでもあります。ですがこれが出来るようになれば応用範囲は広いですよ?込める魔力をより多く消費して、単純に威力をあげたり、効果範囲を広げたり、効果時間を伸ばしたりすることも簡単に出来るようになります。皆さん頑張って行きましょう」
実際目の当たりにして凄いと思った。同じ魔法なのに『最後の鍵』を付けるだけでこんなに強力になるなんて。でも、詠唱に集中してるのにそこにさらに任意で魔力を込めるってできるのかしら……?
「さて次、誰かやりたい人はいますか?」
戻ってきたスリーズが私の近くに来て肘を当て、小声で囁いてくる。
「貴女、行きなさいよ……」
「わ、わかったわよ……」
最初から上手くできるはずはないわよねえ……どうせスリーズと同じ結果になるのが関の山よね。そう思えば割と気が楽かも。うん。
皆が迷っている中、私は手をあげ立候補する。
「あ、あの、やります……!」
「では、前に来て頂戴?」
パルレ教官に手招きされたので、私は前に進む。先ほどの練習用人形は教官が真っ二つにしたので隣の練習用人形の前へと移動して所定の位置につく。
教官はパラパラと書類をめくって確認する。
「えっと、アルメリーさんね?水属性の……氷系魔法が得意なのね」
「はい、そうです」
「では、アルメリーさん。やってみて貰えるかしら?」
「はい!」
精神を集中し、詠唱を唱える。
「我は願う 水よ出でよ 水よ氷の針と化し 目の前の敵を貫き給え氷針!」
それは思ったより簡単にできた。無意識に近い感覚で、私の口から『最後の鍵』が紡がれると同時にその『言葉』に魔力が乗る。そう、まるで呼吸をするように自然に……やり方を身体が昔から識っているというように。
一つ上の魔法に昇華した私の氷の針は同時に出現した数本の針がそれぞれ氷の枝を伸ばしながら互いに接触し結合し合い一つの塊となってビキビキ……と激しい音を奏でつつ成長し、腕と同じぐらい太く逞しい歪な一本の氷の針、いえ、これはどう見ても棍棒……。が生まれた。それを目標の人形に向けて解き放つと猛る猟犬のように勢いよく飛んでいく。
ガァアアアアアン……。
人形に被された胴鎧はまるで怪力の男がハンマーで思い切りぶったたいた様に中心部が大きくへしゃげ、暫く振動が続いていた。
やがてその動きを止め、胴鎧は人形からずれ落ちた。地面に叩きつけられ鈍い音が響く。その音を合図にしたかのように生徒達が一斉に騒ぎ出した。
「おおおおぉぉぉ!!すげええええぇぇぇ!!」
「すげーな今の!威力半端ねえぞ!?」
「何あれ!?見たこと無いんだけど!?」
「……これマジやばいんじゃ……」
は、はわわわ……。す……凄いわ。いままでの詠唱だけの氷針の魔法だと金属鎧に対しては、当れば砕けるか角度で弾かれるかだったのに、鎧を一撃で変形させるなんて……。
ざわつきが広がる室内の中で一人、パルレ教官だけは黙ってじっとその様子を眺めていた。
誰にも聞かれないほどの小さな声で一人呟く。
「こんな事……ありえない……。異常よ。普通これから何時間も掛けて感覚を掴んでいくものなのに……今までどんなに優秀と言われてた子でも『最後の鍵』を教えた最初の授業で出来る子なんていなかったわ……。一体彼女は何者なの……?会議で報告しなくては……」
私は、教官から難しいと言われていた事を簡単に成し遂げた達成感と、まわりからの礼賛の声に、興奮し舞い上がり、一人だけ上のステージに立ったような優越感を全身で感じていた。
そう、まるで歌を普段より上手く歌えた時のように体が熱くなり、歓声に興奮して頬が紅潮し、下腹部が熱く疼きえもいえぬ快感が私を包み込む。
パルレ教官は書類に何かを書き込むと、拍手をしつつ私に向かって笑顔で話しかける。
「おめでとう、アルメリーさん。あなたは今、下級生の中で……いえこの学院始まって以来、最短で『一つ上の魔法として完成させる』ことができた生徒だと思います。これは学院史に残る快挙といっても過言ではありません。とても素晴らしい結果です」
「まさか、今年の下級生にこんな事ができるヤツがいるとはな……」
「アルメリーさん、素晴らしいですぅ~!」
「はっ!ひゃい!?あ、ありがとうございますぅ!」
余韻に浸っていた所へ教官達から急に声をかけられて驚いたが、満面の笑みで返事を返し、内また気味にややゆっくりとリザベルトの隣へ戻る。
リザベルトはキラキラした目で私を見つめている。
「アルメリー……すごいわ……!」
「え~。えへへ。ありがとう」
そこへスリーズが話しかけてきた。
「流石私が認めただけはあるわね!フン!待ってなさい、すぐに追いついてやるんだから!」
「あはは……」
私の魔法を見て、興奮した生徒達は我も我もと手をあげる。
「皆さん、ちょっと待って下さい~。今から練習用人形を直しますので~。オテル教官手伝ってください~。私たちが離れたら、順に並んで各自練習を始めてくださいね~」
オテル教官は金属の鎧を軽々と担ぎ、へしゃげて壊れた鎧を回収して新しい物に交換し、リリアナ教官が真っ二つになった人形の所へ行き魔法を唱えると、その人形の支柱周りの地面がもこもこと盛り上がり、土と共にしっかりと杭打ちされていた人形を地面から吐き出す。オテル教官はそれを拾って片付け、真っ二つになった人形を新しいものに交換して設置しなおす。リリアナ教官が魔法でそれを地面に固定する。
……ものの数分程度で練習用人形は元とほぼ同じ状態へと戻ったのだった。
「はい、用意が整いましたので練習を再開します。人形は五体ありますが、端の一体だけちょっと使いますので、皆さんは残りの四体に分かれて順に練習をしてください」
パルレ教官の指示で皆それぞれ移動を開始した。私もそれに従って並ぶ事にした。
「ああ、アルメリーさんはちょっとこちらへ」
パルレ教官から呼ばれる。
なんだろう……?私、何かしたかしら?
「リザベルト、ごめん教官に呼ばれたからちょっと行ってくるね」
「ええ……、行ってらっしゃい……」
私は教官の下へと向かう。パルレ教官がニコニコしながら話し掛けてくる。
「ごめんなさい、実はね、あなたにお願いしたいことがあるの……」
「何でしょうか?」
私は小首をかしげながら返事をした。すると、パルレ教官は少し周りを確認してから話始める。
「貴女の魔法もう一度見せて貰っていいかしら?標的は端の練習用人形を使ってね」
「はぁ、分かりました。もう一度やればいいんですね?」
「ええ、お願いね」
パルレ教官はニコリと笑顔を向けてくる。
杖を練習用人形に向け、精神を集中し、魔法を唱える。
先程より、氷の先を尖らせるイメージを思い浮かべる。
「我は願う 水よ出でよ 水よ氷の針と化し 目の前の敵を貫き給え 氷針」
先程とは違い、氷の針は私の前に一列に連なって数本同時に出現する。針がそれぞれ氷の枝を伸ばしながら互いに接触し結合し合い塊となってピキピキ……と涼しげな音を奏でつつ成長し、腕と同じぐらい太く逞しく、思った通りの先端が尖った円錐形をした一本の氷の針……いや、短槍が生まれた。
私はそれを解き放つ。氷の短槍は空中を疾走し吸い込まれるように練習用人形へ突き刺さる!
ズガァアン!!
氷の短槍は練習用人形に被せられた胴鎧のその中心に深々と穴を開け、中の木人形の胴を深く抉ってから細かく弾け、空中に霧散する。
「アルメリーさん、一つ聞きますが『最後の鍵』への魔力を載せる時、意識してやっていますか?それとも特に意識せずに出来ていますか?」
「はい?ええ、特に意識してないですけど……。なんて言うかスッと出来ちゃいますね……?」
「……そう。一つ言わせて貰うと、あなたの魔力の乗せ方は……初めてというには、余りに自然すぎるのよ。まるで習得してから何年……いえ何十年と魔法を使いこなしてきた熟練の魔導師のようだわ……」
パルレ教官は訝しげな表情で私を見る。
「教官は他人の魔力の流れが見えるんですか!?」
「ある程度は、ね?」
「す、すごい……でも私自身、そう言われてもよく分からないんですけど……」
パルレ教官はぶつぶつ呟きながら、思案顔で考え込んでしまった。
そこまで言われると逆に不安になってくる。だって魔法の『最後の鍵』なんて今日初めて教わったし、他の子がまったく出来ないのに、教官から私だけ熟練の魔導師のように自然にできてるって言われるのおかしくない?一体なんなの?この身体がおかしいの!?
「……まぁ、いいでしょう。とにかく、あなたはもう出来るみたいだから、今日の所は他の子に順番を譲ってあげてはどうかしら?あと、あなたは他の子に教えるのもダメよ?皆はあなたのようには出来ないわ。正直、理解できないとおもうの。考え方ややり方にへんなクセが付いてその子の成長が阻害されても困るから。いいかしら?」
「わかりました。では大人しくしておきます」
教官は頷いて、オテル教官へ声を掛ける。
「すみませーん。オテル教官、端の練習用人形の鎧の交換おねがいます」
「分かった。任せろ」
その後、私は教官に言われたとおり壁際で他の人の練習をずっと見ていた。順番待ちの生徒から視線が集中してなんとも言えぬ気分になるが、仕方がない。
やがて鐘が鳴り響き、授業が終わる。
「はい、今日はここまで。皆さんお疲れ様でした」
「「「ありがとうございました!」」」
結局、この授業中に『最後の鍵』に魔力を乗せる事ができた生徒は私を除いてあらわれなかった。
授業が終わると好奇心旺盛な生徒達が私の所へ集まり、「どうやったの!?」「教えて!?」とか色々質問攻めにあったが、「ごめん、教えられないの。教官から私のやり方は特殊だから、他の人へ教えるのは変な影響があるかも知れないのでダメだって言われたから……」とやんわりと断ると、皆から恨めしい目で見られることに……。
なんか、前期に引き続いて後期も嫌なスタートになったのだった。




