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令嬢は嗤う  作者: バーン
3/63

入学式

ザール王立学院。今ここには国の各地から一定の条件を備えた子供達が集められている。

朝食時に両親へ学院への入学の条件を聞いたところ、私の知っているモノと大差がなかった。


その条件とは、

1.15歳以上であること。

2.魔力がある程度高いと判定されていること。


この2点ね。両親が言うには魔力の素質がある者は希少で王国では魔力を持った者の保護と魔力持ち同士の出会う機会の上昇・結婚に結びつけて確実に次世代を育み、血を濃くさせることでさらに強力な魔力を持った人材を増やし、ひいては国家の戦力の増強につなげる狙いがあるということらしい。


この条件をクリアした貴族(王子~騎士位)の令息や令嬢、有力な富豪の子息、子女、教会の洗礼時に魔力の才能ありと判定され選ばれた一部の平民の子供達が国や教会の支援の元、この時期に各地から王都に集まってくる。


学院に入学するため、各地から集った子供達が学院の入り口で受付を済ませた後、受付の指示によって敷地内にある大講堂に集められていく。


大講堂は外国の有名な観光地にある文化遺産や大聖堂を思わせるような建築様式で建てられている荘厳で大きな建物だ。

講堂の中に入ると中はかなり広く、天井はとても高い。

天井近くの高い場所に等間隔で連なって開いている窓から外の光が差し込んでいるが窓自体があまり大きくないため全体的にやや暗い。正面を見ると大講堂の奥が一段高く舞台のようになっており、その奥の壁には大きなステンドグラスがあり、そこから朝の光が柔らかく差し込んでいて舞台の上が幻想的に明るく見える。


講堂の中央は通路として確保されており4~5人が一緒になって歩けるほど広い間隔がとられている。

通路の左右には長椅子が何列にも渡って設置されている。

その長椅子も大きく前列と後列の間で分けるため、最前列からおよそ1/4の所で間隔があけてあり、そこが通路になっている。


入学生は受付で前列か後列のどちらかに行くよう指示されていた。

前列のグループには貴族や富豪の令息や令嬢、後列には平民出身の子が並ぶことになっていた。その指示に従い、自分達の行くべきグループに向かっていく。

そのグループ内では特に制限がなかったため、各生徒は思い思いに好きな場所を選んで着席していっている。


私はもちろん貴族の令嬢なので前列側である。攻略対象を間近で見るつもりなのでできるだけ前の方を目指す。会場内はまだ人が少なく、望んでいた舞台の近くの席を容易に確保することができた。

あとは式が始まるまでおとなしく待っておこう。


一応受付で私語はできるだけ慎むようにと注意されてはいるが、我慢が出来ないのかあちこちで囁き合う声が聞こえてくる。


やはり皆まだまだ子供ね~。とつい微笑んでしまう。


しばらく待っていると、やがて入学生が全員そろったのか大講堂の大扉が重厚な音を響かせ閉めきられる。


それを合図に講堂内に開始のファンファーレが鳴り響き、その音と共にいきなり会場に現れた大量の白鳩が四方八方に飛び交い、羽ばたく。光を受けて輝く羽根が素敵でその光景と羽音で私の胸は高揚感に包まれた。

暫く目と耳を楽しませてくれた鳩達はファンファーレが終わると共に跡形もなくフッと一瞬で消えてしまった。こんな演出は記憶に無かった。なんかすごい大規模な手品?何をどうやったんだろう?と私は目を白黒させる。


その後は特に何事もなく式典が粛々と進行してゆき、やがてプログラムが生徒会の挨拶に移る。


私の記憶だと生徒会の挨拶は攻略対象の男性キャラの自己紹介的なモノだけだったのだけど、ここではどうなのかしら?


期待を込めた目で舞台を見つめていると舞台袖から生徒会の人達が颯爽と登場する。


その人たちが出てくるとまるでアイドルに対するファンのような黄色い声援が後列の生徒達から上がる。その声に反応するように生徒会の面々は笑顔を振りまいたり、会釈をしたり、手を振って返したりとサービスをしている。


私も、うしろの声援に同調して「キャー!」と叫びたいところ……!だけど我慢する。攻略対象のイケメンの面々が目の前に揃ってる……!中身27歳のお姉さんから見たらみんな可愛いっ!

うら若き美少女である今のこの姿と、私の知識が合わさればもはや無敵。誰でも落とせそうな気がしてくるわ。「選択するのは我にあり」ってね?ふふっ。

ゲームと同じように向こうから言い寄ってきてくれると楽なんだけどねー。

でも、そう簡単にはいかないわよねー……。


舞台の中央に一同が綺麗に整列すると、講堂全体に男性の野太い音声が響き渡る。


「君達の入学前に行った筆記、及び武術の実技試験の結果、成績上位の数名が生徒会へ入ることが決定した。新たに生徒会へ入った者はテオドルフ・アロガン・ザール・ヴァレッド、セドリック・フェール・エミリアン、フェルロッテ・リベルテ・サンドレイ、ヴィルノー・ラファル・ベルトラン、マルストン・シュエットの5名である。各自一人ずつ前へ出て、自己紹介をするように」

「また、その後に生徒会会長、および副会長から君たち新入生へ祝辞がある」


講堂内をきょろきょろと見まわして見るが、ぱっと見ではスピーカーなど見当たらないし、声の主らしき人物も見えない。今の私には想像がつかないがこの世界独特のなんらかの手段・方法で音声を拡大して講堂全体に届けているのだろう。


列から一人、一歩前に出て舞台の中央に設置されている台の前に立ち、口を開く。

この時も先ほどと同じように彼のスピーチの音声が講堂全体に響く。


「今、紹介されたのがこの俺、テオドルフ・アロガン・ザール・ヴァレッドさ。皆、知ってると思うが『ザール』の名を持つってことは……フッ、分かるよなっ!?生徒会では広報を担当することになったッ!何か困ったことがあったらいつでも言ってくれよな!俺は君たちの味方だぜ?フッ……」


左手でサッと髪をかきあげた手を流れるように顔に当て、座席側の生徒達に向かって右手を差し出すような大げさなポーズをキメる。さらに一呼吸空けてウィンクというサービス。気のせいか「キラッ☆」って擬音が聞こえた気がする。


早めに登校してきたお陰で前の方が陣取れて、間近に見れたのはよかったわ。

ゲームの攻略対象だったキャラが肉体をもって動き、生き生きと話している。

これはちょっと感動ものだわ……。

その一挙手一投足にキラキラしたエフェクトが掛かってるように見えるけど、……気のせいよね?


後方の女子生徒からキャーキャー!という黄色い声が上がる。

周りの令嬢は黄色い声を出すのが恥ずかしいのか扇子で口元を隠している子が多い。好意を持ってそうな子は頬を染め、上目遣いで舞台上の彼を注視している。流石に貴族令嬢だけあって落ち着いてるというか教育が行き届いているなーと感心する。


紫の髪に薄い赤い瞳の彼は、確か第二王位継承権をもってるんだっけ。

王族ってだけでも玉の輿だし、さらにイケメンだから女生徒が黄色い声を上げるのもわかるわ。


ちょっと所々思い出せないけど何か自己主張の激しい自信家だった気が。それが原因で常に暴走してたような記憶が。あと登場する毎に違う女の子を侍らせてたような……。

彼の攻略ルートに入れば後で一途になると分かってても、やっぱりそんな軽率な行動されると、精神衛生上あまり良くないし……ね。

そう!彼は黄色い声を上げている彼女達に任せよう、それがいいわ。


第二王子が他の生徒会と同じ列まで下がり、生徒たちが一旦落ち着いたところを見計らって、次の人が前に出てスピーチを始める。


「私の名前はセドリック・フェール・エミリアン。生徒会では書記を務めさせてもらう。私が生徒会に入った以上、生徒の模範となるべく精進していくつもりだ。また、貴族として生まれたからには人の上に立つ者として己を律し、それにふさわしい振る舞いをすべきだと考えている。私と同じく、責任ある立場に生まれた者にはこの事をよくよく自覚しておいて貰いたい。以上だ」


セドリックは確か宰相の令息だったかしら?将来彼も父と同じ宰相を目指しているらしく、成績は常にトップクラスを維持してるのよね。

真面目な性格に加えて、青い髪に青い瞳だから余計クールさが際立つの。

スピーチしてる内容も私の知ってるセドリックとほぼ違いはなさそう。

今のところ私の懸念は杞憂だったみたいでよかったわ。私も真面目が取り柄だし、セドリックとは相性が良さそうよねー。うんうん。


軽く見渡して見るとまわり令嬢から小声で賞賛してる子や、頬を赤らめて溜息を漏らす子、陶酔してるような面持ちで彼を見ている子が多く見受けられた。

第二王子とは違う層に人気が高いわね。もしかしてライバル多い……?


っと、思いにふけっていたら次の人のスピーチが始まってる……。ちょっと冒頭聞き逃してしまったわ。


「……執行部へ自分が入ったからにはこの学院の風紀を乱す者は身分・立場に関係なく厳しく取り締まっていく!皆そのつもりで気を付けてくれたまえ!清く正しい学園生活を送ろうではないか!」


男子達から応援の声があがる。

そっかー、この世界の彼は人望があるのね……意外だったわ。


たしか彼は ヴィルノー・ラファル・ベルトラン。近衛騎士団長の令息ね。黒い髪に意思の強そうな黒い瞳、生徒会の中でも一際背丈が高く戦闘パートでも使えたキャラだったわね。戦闘が強い人も悪くはないんだけど……。

でも言われたことなんでも信じちゃうから、すぐ騙されたり……ちょっと頭が残念だったような?まぁ暫くは様子を見ておこっと。


同じように次の生徒に交代していく。


「あー、ぼくはー、マルストン・シュエットです。生徒会では会計を担当することになりましたー。みんなよろしくね。それとー、シュエット商会では色々なモノを取り扱ってまーす。お買い物には是非ウチをご贔屓にしてねー!」


それだけ言うとぺこりとお辞儀し、そそくさと列に戻ってしまった。

こんなところでも実家の宣伝を忘れないとか、さすが商家の子は逞しいわね。ふふ。

マルストンは茶髪で、深い緑の瞳、体型はちょっとぽっちゃり系で生徒会の男子の中では一番小柄ね。並んでると一層よくわかるわ。

いつもにこにこと笑顔を絶やさないのがチャームポイントだったかしら……?

童顔で丸くてかわいいのが母性本能をくすぐるのよね。


私の周りからも「かわいい!」とか「ちょっとペットにしてみたい!」という声がちらほら聞こえてくる。それには私も同意するわ。


カッ……カッ……カッ!と響いた靴音が私の注意を舞台へ引き戻す。


「私は、フェルロッテ・リベルテ・サンドレイ。生徒会では執行部に入りましたわ。あなた達に最初に言っておくわ。くれぐれも面倒事をおこさないようにね!私からは以上よ」


左手は腰に当て、上から目線で言いたいことだけ言い放ち、右手で自慢の髪を後ろに跳ね上げるフェルロッテ。


たしか彼女は侯爵の令嬢だったわね。プラチナブロンドの縦ロール、美しい肌、濃紫の瞳、意志の強そうな眉+つり目。これぞお嬢様!という雰囲気で、ゲームでも初見の人なら「この子が悪役令嬢になるんでしょ!?」とつっこんでしまうぐらい、それっぽい見た目をしていた。


講堂全体が一瞬で静寂に包まれ、「まるで氷の女王ね……」と誰かぼそりと呟く。


フェルロッテはツンとしたままドレスを翻し、列に戻る。


なんと大胆な宣言なんだろう……。私もこれぐらい堂々とできたらいいのに……。

と彼女の性格を羨望し、少し惚けてしまった意識を舞台に引き戻すとすでに交代が終わり、次の人がスピーチを始めていた。


「私が生徒会長のアルベール・リオン・ザール・ヴァレッドだ。新入生の諸君、ザール王立学院への入学おめでとう!私は常々、国家国土を護るには優秀な人材の育成こそが重要と思っている!そのため同じ学び舎に集った我々は切磋琢磨し、お互い競い合い個々の能力を高め合い、親交を深めながら確固たる絆を未来へ向かって築き上げようではないか!」


前に伸ばし広げた左手を胸の前で勢いよく横へ払い、右手を握って肩の辺りまで力強く突き上げる。イケメンがやればどんなポーズも様になるわねー、とつい見とれてしまう。


会場の雰囲気に呑まれたのか我慢出来なくなった前列の令嬢達からもキャーキャー!という黄色い声が上がる。その声の大きさは第二王子と同じ?いやそれ以上かしら?うわぁ、すごい人気だなぁ……。


金髪、薄い青い瞳。彼は正室との子で王の髪の色と母の瞳の色を確かに受け継いでいる。

いかにも正統派の王子様っていう風貌で、現に今見たとおり令嬢達の人気も非常に高い。弟の髪と目の色が違うのは弟が側室の子だからだったっけ。

第一王位継承権持ちでイケメンで生真面目。ゲームでは融通が利かないところがあったけど、この王子様はどうなのかしら?


また思考の海に入り込んでいた私は、周りのざわつきから現実に引き戻された。

舞台に目を向けると、中央に立っている女性の凜々しい佇まいながらも儚げな表情に私は目を奪われてしまった。


「副会長のランセリア・アルエット・スフェールです。皆さん入学おめでとう。この学院では授業の半分以上が主に魔法について学んでいくことになります。今ここに集められたあなた方は人並み以上の魔力の持ち主です。その力がひとたび暴走すれば途轍もない脅威となり、もしかしたらあなた方の親しい方に危害が及ぶかも知れません。それを未然に防ぐためにも、魔力を「自分の意志」で「確実に制御」するその術を、共にこの学院で学んでいきましょう……」


緩くウェーブをかけた美しく長い黒髪に、澄んだ湖の底の様な深い青色の瞳。透き通るような白い肌、美しい顔つき。ややつり目気味なのが凜とした雰囲気を醸し出している。彼女は新入生に向かって両手を広げ、まるで聖母のように全てを包み込むような仕草をしているが、どこか張り詰めたような近寄りがたいオーラみたいなものを感じてしまう。


そんな彼女を私が見上げているとお互いに目が合ってしまった。深い青色の瞳は哀しみを帯びているような、寂しそうな、言葉にならない何かを訴えかけてきてる気がした。

私は蛇に睨まれたカエルのように身動きができなくなっていた。


何で私を見つめるの!?混乱し、みるみるうちに頬が紅潮していくのが分かる。

緊張で私の心臓が激しく鼓動し、彼女から目を離すことが何故かできない。


どうして?今までこんな、こんなこと……なったことが無いのに。どうすればいの!?

実際にはほんの十数秒程だったのかもしれない。私達はお互い刹那の時間を永劫の長きに渡って引き延ばしたような時間感覚の中、長い間見つめあっていた気がした。

ふいに彼女が目を離し、列へ戻っていく。


私は緊張から解放され、思い切り息を吐き出す。

少し落ちついた所で彼女について思い出した。

ランセリアは公爵令嬢に生まれ、その高い爵位から幼少時から第一王子との将来が約束されていた婚約者である。

ゲームでは主人公に対し色々と妨害工作をしていくが失敗を繰り返し、攻略対象周りの心象が段々と悪化してゆく。

その都度ヘイトが溜まっていき、ドレスが段々と派手に変化して見た目でも彼女の怒りゲージが見えるようだった。最終段階では多数の取り巻きを従え、それこそラスボスの風格を漂わせていた。そして最終的に断罪される「 悪役令嬢 」その人となるのだ。


この先を……私は知っている。

これだけ類似している世界だもの……私が状況に流されるまま日々を過ごせば、私の知っている結果と同じようになるかも知れない。

それは可能性だけの話であって、もしくはそうはならないかもしれない。

でも、あらゆる状況が彼女をその方向に集約させていく可能性は……多分高いと思う。


私は一人の女の子が「 断罪 」されるという、そう遠くない未来の可能性を知っている。それを見て見ぬ振りをするの?

いいえ、追い詰められていない今の彼女なら「私」が救えるかもしれない。


私が私として、今この世界に干渉できる存在としてここにいる!

私が行動を起こせば未来を変えれるかもしれない!

だから、手を差し伸べて救ってあげたい。いえ、救うの!

考えればきっと道はあるはず!


私は決意と共に拳を握りしめていた。

後ろからヒソヒソ話しをする声が聞こえ、その会話に聞き耳を立てる。


「あの人が、アルベール様の婚約者ですって。最近はアルベール様とは上手くいってないとか?ほら、その証拠に列に戻る際にもお互い目もあわせないでしょう?もしかしたら私達にもチャンスがあるかもしれないわよね!?」

「そうなの!?だったら私も積極的にアプローチしてみようかしら?」


彼女達はとても楽しそうに話しているが、私の決意を踏みにじられたようで腹が立つ。


よし決めた。他の誰がなんと言おうと、私ひとりでも彼女の味方になる!



学長の登場と入れ替わるように生徒会の面々は去り、学長の訓示が始まった。


「……我が校は将来の国の中枢を担う有望な若者の育成を目的として先代国王より設立された四十年の歴史を持つ高等教育機関であります」

「あー、入学された皆さんには学院というこの共同体で共に日々生活し、在学中は同じ学院の一生徒という対等な立場でより親密で円滑な信頼関係を構築してもらうことを目的としております」

「えー、この学院は全寮制であり、親元を離れ自立した精神を養う場でもあり……」

「あー、この学院を卒業した生徒はこの国の将来を担う人材として各方面で……」

「えー、我が国は年々魔導戦力が大幅に強化されております。特に我が国の魔法兵団の組織化・大規模化にこの学院は大きく貢献しており、外交においてもその力は周辺諸国に対して絶大なる影響力が……」

「あー、これはまさに先代国王様の先見の明が……」


どっちの世界も「長」がつく人の話は長いわよね…。

学長の話はこの学院やこの国、歴代の王などを褒め称えるような、少しだけニュアンスを変え同じような内容の話の繰り返しが続くのだった。


永遠に続くかと思われた学長の演説もやがて終わり、予定されていたことは粛々と進み入学式は無事終了した。


やがて大講堂の重厚な大扉が開放されると、生徒が一人また一人と出ていく。他の生徒の流れに乗り外に出ると……正面に大きな掲示板が設置されていた。そこにはクラス分けの表が掲示されていた。


私はその表に目を走らせ、現在の自分の名前と割り振られたクラスを確認し、そのあと同じクラスに生徒会メンバーの名前がないかと探す。


「……なかった」


軽くショックを受けよろめく。

一人も該当していなかった……改めて各クラスのリストを見てみると、生徒会の男子は全員同じクラスに纏まっていた。……これは学院の忖度によるもの?と疑ってみたが、生徒会の女子は別のクラスに分かれていたので不承不承ながら納得し掲示板から離れることにした。


複数の係の担当職員が、声を張り上げ同じ説明を何度も繰り返している。

「皆さん、自分のクラスを確認したら、本日の行事は終了となります。以後は自由時間となりますが、ご自分の宿舎の確認を行い、ゆっくり自室で休養し明日からの授業へ備えて下さい。もし何か問題があれば寮長と相談を行って下さい」


講堂内では、生徒側の席側はやや薄暗かったので個人が特定されることもなく特に何もなかったが、外の明るい日差しの元では姿形や顔立ちなどがハッキリと分かるため、周りの一部の子達の視線がこちらに向いている気がするのがなんだか気になる……。


「あの子、あのパーティの……じゃない?」


「……あの噂の……?」


あ、なんか私既に有名人……?噂になってない……?


まぁ、初日からちょっかい出してくることもないだろうから、とりあえずは無視。下手に反応して波風を立てるより、何事もなかったようにして過ぎるのが大人の嗜みよね。見た目は少女だけど。

初日から精神的に疲れるような事はしたくないし。


自分のクラスを確認しおわった学生達がちらほらと移動を開始する。皆、宿舎へ向かうみたいだ。私もその流れに乗り宿舎へ移動する。


移動しながらずっと考えを巡らす。

どうやって彼女を「 断罪 」されないように救うべきか……。

まずは近づかないといけないわよね……。さて、どうするべきかしら……。


……そうだわ!生徒会の彼らを利用するのがいいんじゃない!?


そう思いつくと自然に唇の端に笑みが浮かぶ。

「……ふ、ふふっ」


……でも、よく考えたら彼らと私、今のところ何も接点ないのよね……クラスも違ったし……。


歩きながら色々と案が浮かんでは消え、浮かんでは消え、うまく考えが纏まらないまま、さして遠くない目的地に到着したのだった。

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