友達
本日は風も無く、晴天。絶好のピクニック日和だ。
こんなに天気がいいと心まで弾んでくる。今日は待ちに待った私達のサロンの初めてのイベントよ!ここで彼女との関係が進展してもっと仲が良くなれば彼女の近くにいても何も問題ないし、彼女が最悪の方向へ向かわないように私が助言したり防波堤となって方向転換させてあげられるわ。そうなればより良い未来を提供できるかも!
明るい未来を予想し無性に嬉しくなり足取りも軽い。今にも駆けだしてしまいそう。
「アン早く早く!」
私は軽食と焼き菓子の入ったバスケットを持っていつもの並木道の通学路を歩く。
アンは「外でお茶会を行う」と聞かされて、今日のために急遽いくつかのアイテムを購入していた。お嬢様達に野外でくつろいで貰うために地面へ敷く厚手のシートや、持ち運びの事を考慮して割ないことを重視し、奮発したらしい金属製の良く磨きぬかれたティーセットなど装備一式を背負いその後に続く。
「私、はやくアンの作ったお菓子食べたいわ!料理もよ?」
「ありがとうございます。今度、お嬢様もご一緒にいかがですか?」
いやー、料理もお菓子もまるっきり出来ないのよね、私。だって美味しいモノがコンビニやスーパーに溢れててすぐ買えたんだもの。レンジでチンするだけでいいのよ!?自炊なんて面倒なことしなくてもなんとかなってたし。本当に便利だったのよ……。
「ま、まぁそのうちね……」
などと話してる内に校舎の脇を通り過ぎ、やがて練兵場にでる。
遠くから二の鐘の音が響いてくる。時間にはなんとか間に合ったみたい。
練兵場前にランセリアはすでに来ていた。彼女を直射日光から守るように後ろから侍女が日傘を差して佇んでいる。
「ランセリア様~~!」
彼女に向かって元気よく手を振り駆け寄って合流する。
「アルメリー・キャメリア・ベルフォールお嬢様にお仕えしておりますアンリゼット・ペルーシュと申します。本日はよろしくお願い申し上げます」
「私はランセリア・アルエット・スフェールお嬢様にお仕えしているオネット・ランシールです。こちらこそよろしくお願い申し上げます」
オネットは茶色い髪を邪魔にならないよう後ろで束ねており、黒い瞳が知的な感じを醸し出しており誠実そうな微笑みを浮かべてアンとお互い自己紹介をしている。
「先程二の鐘が鳴ったわけだけど……今日は大目に見て時間通りという事にしておきましょうか。では行くわよ。皆ついてきなさい」
「はい!」
練兵場の脇に林があり、下草は刈り取られて一応手入れはなされているが踏み固められただけの道が奥へと続いている。
「この学院の敷地は元々王家が気晴らしの狩りを行うために所有していた土地を一部提供して作られたらしいの。だから王都のお城の近くなのにこんな広大な林が残されていると聞いたことがあるわ」
「ランセリア様、博識なんですね~」
「お父様やアルベール様から色々なことを聞いたことがあっただけよ……」
その小道を暫く進むと、急に開けた場所に出た。
樹に囲まれた中心に澄んだ水を湛えた泉があった。柔らかな日差しが差し込み、水面をキラキラと輝かせている。
「見てご覧なさい。この泉にはどこからも水が流れ込んで無いの。でもこの泉の水はとても澄んでて綺麗なのよ。きっと湧き水が湧いているのね」
「風も凪いでいるから水面がまるで鏡みたい。それにすごい透き通ってますね~!」
できるだけ平らなところを探し早速持ってきた厚手のシートを引くアン。手伝うオネット。
その上に用意してきたアイテムをてきぱきと並べていく。
「さ、どうぞお座りくださいお嬢様方」
私達が靴を脱いで座る間もアンは給仕を続ける。軽食の入ったバスケットを開き、その隣に用意した楕円の形をした金属の皿に切り分けた焼き菓子を並べる。
次に彼女は皮が緑色の柑橘系のような芳香を放つ果物を半分に断つ。中はオレンジ色の瑞々しい果肉が詰まっており、それを徐に絞りはじめ、ティーポットへ注ぎ入れていく。
「アルメリーお嬢様、もしよければこちらへアレをやって貰えないでしょうか?」
「分かったわ!」
授業で習った呪文にアレンジを加え、人の親指ほどの大きさの氷の礫を十数個生み出しティーポットへ向け速度を極限まで抑えて投射。
彼女はそのティーポットを軽く撹拌すると「カランカラン」と涼しげな音が鳴る。ティーポットの表面へ手を当て、温度を測り良い頃合いだと判断したところで二人のカップへ冷えた果汁100%のジュースが注がれ、提供される。
「どうぞお召し上がり下さい」
「あなた達もどう?まだカップはあるんでしょう?人目もないわ。一緒に楽しみましょう」
「ありがとうございますランセリア様。ではお言葉に甘えて」
アンは早速二人分のカップを取り出しジュースを注ぎ、自分と侍女の前に置く。
「オネット様、どうぞ」
「ありがとうございます」
用意された軽食やお菓子をつまみつつ、天気の事から始まり近況や当たり障りのない会話が続く。
「このお菓子、なかなか美味しいわね。どこで売ってるの?」
「あ、それアンが作ったんですよ!寮の厨房をお借りして。彼女お菓子作りが得意なの」
「こんなおいしいお菓子がつくれるメイドがいると日々の生活が潤ってとてもいいわね。それにこの程よく冷えたジュース。これから段々と暑くなるしとても素敵なアイデアよ。この学院で教わる魔法って戦力育成が目的だから戦闘方面に特化してるし、生活を快適にしたり便利にしたりする視点が欠けてると前々から思っていたわ。そもそも魔法を使える人の絶対数が少ないから仕方無いことだけど、魔法をこんな使い方するのは初めて見たわ。あなたとても応用力があるのね」
「私、どうしても冷えた飲み物が飲みたかったので……!」
ついこの間まで冷蔵庫を開けたらキンキンに冷えてる飲み物が普通にあった環境の私にとってこの世界で提供される「生ぬるい飲み物」全般が実は耐えれませんでした。ハイ。なので「早く何とかしないと……」と思うのは当然の結果よね。
「でも授業中はこんな応用の研究や練習なんかさせてくれないでしょう?」
「そうなんです!なので寮に戻ってから色々試しました!練習のためアンに何往復もしてもらって水を用意したり、氷礫の射出速度の調整が上手くいくまで何度も飛び散った水を二人で拭いたり……。その苦労の成果がこの「冷えたおいしい飲み物」として結実したのです!アンがいなくては到底無理な事業でした……!」
かつての日々を思い起こし瞳を潤ませ、あらぬ方向へ向かって敬礼する。
そんなアルメリーをランセリアが困ったように微笑みながら見守っている。
メイドと侍女は主人達の会話を余所に二人で情報交換しあっている。
「アン様、今度レシピを教えていただけますか?」
「ええ、喜んでオネット様」
「……ところであなた。委員会の準備の方は順調?」
「おおむね順調です。あー、いえ、私の担当ではないのですが……人手が集まらなくて困ってるところもあったり……まぁ、あはは……」
「精霊像の製作でしょう。去年も色々あったわね……。そうね、では私も生徒会で暇そうにしてる人がいたら声をかけておいてあげるわ」
「ランセリア様ありがとうございます!とても助かります!あ、もしよければお礼に私にできることであれば何でもします」
「そうね、なら……せっかくだから話を聞いて貰おうかしら。アンと言ったかしら?あなたは少し離れてて貰える?オネット、暫くアンの話し相手になってあげて」
「かしこまりました」
一礼し、二人は連れだって来た道の方へ歩いて行く。十分離れたところでランセリアが片手をあげ止まるよう指図する。オネットは軽く会釈をし、二人はそこで立ち話を始める。何を話しているのかここからではよく聞き取ることが出来ない。
「私がアルベール様の婚約者、ということは知ってるわね?」
「あ、はい。よく知っております……」
「幼い頃、多数の候補者の中から第一王子の婚約者に選ばれたと知った時はとても嬉しかったのを覚えているわ……でも、暫くして周りの子達の態度が変わったのよ。表情は笑っているのに目は笑っていない。それに新しく近づいてきたのはアルベール様へ取り入ろうと私を利用しようとする奴ばかりだったの。幼い私はそれに気付くのに時間が掛かったわ。気付いてからは群がってくる子達を遠ざけるようになり、いつの間にか私は近寄りがたい存在として皆に認識されるに至ったわ」
なるほど……。入学式の時に見た「近寄りがたいオーラ」はこの時からすでに作り上げられていたんだ。
「数年後、彼の母であるアリアンナ・フェルバラ・ザール・リオン王妃に何度かお会いする機会があり、その度に『将来、あなたは国母になるのだから誰から見ても完璧な女性にならないといけません』と薫陶を受けたわ。それからその言葉を第一に考え、あの方以外に興味を持つこと無く、相応しくなれるよう自分を磨いてきたつもりよ。アルベール様の婚約者であるという事だけを心の支えにして」
あのクリュエルが『普段ならあなた、こんな状況見て見ぬフリをするか、離れた所からただ見てるだけじゃない』って言ってたっけ、もしあの時ランセリア様が普段通りだったなら助けて貰えなかったってこと!?……思い出すと恐ろしくなり鳥肌が立つ。
「覚えてる?入学式のこと」
「ええ、ついこの間のことですし……?」
「上から見てるとね態度がすぐ分かるのよ。貴族の他の子達は隣の子達と小声でお喋りに夢中だったのに 、あなただけ真っ直ぐ私の目をみつめてきたの」
その時の事を思い出し顔がみるみる赤くなる。
「あの時、初めてあなたに興味を覚えたわ。でも上級生と下級生、関わる事はあまりないと思っていたのよ」
「なのにあなたったら、入学してすぐクラスで面倒事を起こして一躍名が知れ渡ったわね」
「あ、あの件は私が被害者ですよ!?」
「あら、そうだったの?フフ……それが元でフェルロッテやテオドルフ様と知り合いになって生徒会にも度々顔を出すようになり……。あなたも彼と関わるようになってからは周りから浮いていたと小耳に挟んだわ」
「それにダンスの練習に付き合ってあげた時も、私の指導は授業より厳しくしたつもりだけど投げ出さずに必死についてきていたし、辛い表情なんて少しも見せずにずっと笑顔だったじゃない?」
「ランセリア様が直接指導してくれたんですよ!?自然と笑顔になるに決まってるじゃないですか!私、あの時本当に嬉しくて嬉しくて……」
「あの時点でもう私はあなたに心を少し許してしまったのかもね。その後、成り行きで私のサロンにも入れてしまったわけだし……」
そよ風が彼女の黒髪を撫でるように通り過ぎ、少し乱れた髪の毛を耳の上へ掻き上げる。
「フッ。私がこんなにべらべらと喋るなんて普段ならあり得ないことなのに。何故かしら?ここが開放的な所だから?私達以外誰も聞いていないから……つい口が軽くなってしまったのかしらね?」
彼女、自身の変化に少し戸惑っているの?やっぱり孤高で居続けるのは彼女も寂しいのかも?……なんて分析してる場合じゃない!これは彼女の心にもう一歩近づける最初で最後のチャンスかも。ええいままよ!
目をつむり頭を下げると同時に右手を差し出し、まくし立てる。
「ランセリア様、あの……よかったら私と友達になって貰えませんか!?身分不相応で許されないとかなら断って頂いてもいいですし、もし、お嫌ではなければ……」
ちょっといきなりぶっこみすぎたかな……?
恐る恐る目を開けてみると、そこには鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をした彼女が。
話そうとしては口を紡ぐランセリア。そして逡巡して口を開け、また……ということを延々繰り返すのをただただ待つ……。永劫の様に感じられた時が経過し(そろそろこの緊張感耐えられないかも……)と思った瞬間、彼女は頬を上気させて重い口を開く。
「……あなたが私の友達になる事を許可してあげるわ」
右手を差し出してくるがいまだ恥ずかしいのか、プイッと横を向く。
うわーっなにこの可愛い人!キュンキュンする!だめ、萌え死にしそう!今すぐこのシートの上で転げ回りたいっ!……という思いを精神力をフル動員して心の奥底へ追いやり、彼女の手をしっかりと掴んでブンブン振って応える。
「はい!!!」
この時の私、多分入学以来で最高の笑顔をしたと思う。
「……フフ。アルメリー、私達友達になったわけだし、何か他の人に言えないような秘密を教えなさいな」
「秘密ですか……!?」
「そう、お互い秘密を共有すれば、それが他の人に話さない抑止力になるでしょう?あなたとはまだ付き合いが短いし少し不安なのよ。……どうかしら、私を信用させては貰えない?」
ここまで言われたら、私のこと少しだけ話してもいいかな……?
「言っても信じて貰えないかもしれないですけど……私、前世の記憶があるみたいなんです。そればかりか入学以前の記憶がまったく思い出せないんですよ。周りには階段から落ちた衝撃による記憶喪失ということにして誤魔化しているんですが……」
そこまで話すと、彼女が思考停止したように固まってた。
「え?えっ?ごめんなさい、それ即席で考えた作り話とかではないわよね?」
「こんな大事な時に嘘なんか言いませんよ!?」
「私、てっきり『○歳までおねしょしてました』とか、『実は○○様が好きなんです』程度の秘密を打ち明けられるのかと思ってたわ。まさか……たとえ千人に聞いたとしても普通は返ってこないような不可思議な秘密があったなんて、本当にびっくりしたわ。流石にそんなこと、周りの人に知られたら頭のおかしい子扱いされちゃうわね?それだけで済めばいいけど……」
「あなたの秘密を聞いてしまったわけだし私の方も話すわ。私の秘密というのは実はアルベール様との関係についてよ」
「もしかしたらあなたもどこかで聞いてるかもしれないけど、 段々とアルベール様が私を敬遠する様になっているのは紛れもない事実よ」
「先程も言ったけど、婚約が決まってから私は王妃様に気に入られようと色々なことを努力してそれを実践してきたわ。でも後で知った話だけどアルベール様に歳の離れた妹君が誕生なさってからは王妃はその子のことを溺愛され、アルベール様はあまり顧みられなくなったらしくて……城内では第一王子と王妃は不仲は決定的だという噂なのよ。だから王妃様に色々似てきた私のことがきっと……もう私、どうすればいいのか分からない!」
彼女は悲しそうに顔を曇らせ両手で顔を覆う。
「それに最近、同じような悪夢を見るようになったわ……。顔は不鮮明で朧気だけど、ある令嬢がアルベール様に言い寄り……それをあの方が受け入れてしまうの。夢の中で私は嫉妬に狂い、その令嬢にあの方への想いを諦めるように警告し、陰湿ないじめを始めるの。その子を快く思ってない令嬢達をまとめ上げて……。でもその令嬢は屈すること無く気丈に振る舞い耐え続けるの。その後とうとういじめの現場をあの方に目撃され、怒りに満ちた顔で婚約破棄を宣言され、そこでいつも飛び起き目が覚めるの……」
この内容ってまさか『 断罪 』の展開じゃない!?私しか知らないハズのあり得るかも知れない未来の一つよ!?そんな嫌な夢を何回も見させられたらノイローゼになってしまうわ。やがて重篤化して性格がねじ曲がり「悪役令嬢」に堕ちてしまうかもしれない……。彼女はなんでそんな夢を見てしまうの……?やはり運命的な何かの力が働いて……?
いや、そんなことはさせない。絶対にさせてたまるもんか!
彼女を守るその為にやっとここまで近づいたんだもの!!
「もし誰かがアルベール様に言い寄り……それをあの方が受け入れてしまったら私、自分が抑えられなくなって夢と同じような事をその子にしてしまうかも知れない……」
あれだけ冷静で凜としていた彼女が怯えた小さな幼子のように体を抱え込み、僅かに震えている。
これは私が恋のキューピットとなってがんばり二人のよりを戻せば、彼女を『 断罪 』とは別の幸せな未来へ導くことができるんじゃない!?
「顔を上げて下さいランセリア様。今、とても心が不安だからそんなありもしない夢を見てしまうんですよ。私がきっとお二人の関係を改善させて見せます!」
最初はビックリしていたが、いつの間にか彼女の震えも治まっていた。普段きつめな瞳が少し穏やかになってこちらを優しく見つめてくる。
そんな目で見つめられたらヤバイ……!
ドキドキして心臓の鼓動が早くなっていく。
「……ありがとうアルメリー。あなたのおかげで心が穏やかになった気がするわ。こんな清々しい気分は久しぶりよ。それだけでも今日、ここに来た甲斐があったかしらね」
「ランセリア様の笑顔が見れて私も嬉しいです!」
「私達の秘密の話はこれで終わりにしましょう。そろそろ二人を呼んで頂戴?」
「はいっ!」
「アン-!オネットー!話は終わったから戻ってきてー!!」
いきなり出した大きな声にびっくりしたのか樹にとまっていた鳥が二羽、飛び立つ。
仲睦まじく青空に向かって羽ばたいていく。
叫んだ後、シートに背中から倒れ込み「んー!」と伸びをする。
もしアンが近くにいたら『お行儀が悪いですよお嬢様!』と叱られていただろう。だが幸いなことに彼女達とはまだ十分距離がある。すでに倒れた後ならば諦めて溜息をつくぐらいで終わるはず。
「ランセリア様もどうですか?気持ちいいですよ!」
「そうね……ふふっ」
彼女も同じように背中から倒れ込む。
「あの鳥達みたいにアルベール様と仲がよかった幼い頃の関係に戻れたら、どんなに素敵かしらね……」
「それじゃ目標が低いです!私も手伝いますからもっと、もーっと前進しましょう!まずは関係改善、その次は相思相愛の未来をつかみ取りにいきましょう!」
寝転がったまま、お互い指と指を絡ませ見つめ合う。そしてどちらからとも無く笑い声があがる。
そこへメイドと侍女が戻って来て「もうホントにお嬢様ったら……」と諦めた溜息が漏れる。
「まぁまぁアン様、良いじゃないですか。私、こんなに楽しそうなお嬢様を見たのはすごく久しぶりなんです。大目に見てあげて下さい」
「ではオネット様に免じて今回は目を瞑りましょう」
「アルメリー様、今回はお嬢様をお誘い下さりありがとうございました」
「オネットさん、そんな……お礼なんていいですよ~!」
深々とお辞儀をするオネットにこちらも嬉しくなり照れてクネクネしてしまう。
「ランセリア様、また度々こういう機会をつくっていけたらいいですね」
「そうね、でも次があるとすれば私が主催するわ」
「楽しみにしておきますっ!」
「さあ、来週から色々と忙しくなるわよー!おー!」
空いている手を天に突き上げるが、誰も一緒に乗ってくれない。一人惨めさを感じてると。
「クスクス。アハハッ!」
突然ランセリアが笑い出した。
私も釣られて笑い出し、アンもオネットも穏やかに微笑んでいる。
今、二人の心はこの空のようにどこまでも青く澄み渡っていた。




