舞踏
翌日。礼儀作法、刺繍、座学等々の日々の授業をこなし、放課後になった。
いつもの通り生徒会室前までくると会長が出迎えていてくれた。
「今まで校内の美化をありがとう。本日付で美化活動は終了だ。君の働きは十分見させて貰ったよ」
「ありがとうございます。会長」
「さて、ではこれからの話をしよう」
「これから、ですか?」
「この前立候補してくれた精霊祭の実行委員だが、メンバーが暫定であるが集まった。今日はその顔合わせをしようと思っている。他のメンバーにはすでに生徒会から声をかけた。そろそろ集まっている頃だと思う。場所は催事準備室という部屋だ。この生徒会室から階段を挟んで向こう側にある。そこへ行ってきてくれたまえ」
「分かりました会長。では行ってきます!」
ニコッと笑顔で敬礼のポーズを取り、回れ右して目的の部屋を目指す。
催事準備室を見つけドアをノックして入室する。
「失礼しまーす。実行委員に立候補したアルメリーです」
ぱっと室内を見渡すと女子が四人、男子が二人。皆すでに着席しており、会長の予想通り私が最後だった。
「では揃ったようなので始めていきたいと思います」
豊かな胸の明るい茶色の髪の毛を三つ編みにした女生徒が仕切ろうとしている。
きっと眼鏡をかけたら似合いそう。心の中で委員長とあだ名をつける。
眼鏡ってあるのかな?とふと疑問に思う。そういえば誰もかけてるの見たことが無い。
「なんでお前が仕切ってるんだ?」
とさっそく男子の一人が抗議する。
「あなた新入生ね?私は上級生です。上級生に向かってその口の利き方は何?」
「ちっ、上級生かよ……」
「私は去年も実行委員を経験して大体の段取りがわかっています。それに誰かが司会進行をしないと話がすすまないわよね?、それとも他に誰かやりたい人います?」
沈黙が辺りを包む。
「やりたい人がいないようなので私が引き続き司会進行を務めます。まずは役割分担を決めます」
「ちょっとまって?こういうのって自己紹介からじゃないの?」
赤毛のショートカットの女子が口を挟む。
「時間の無駄です。一緒にやっていればそのうち顔も名前も覚えれるでしょう?」
彼女は黒板に何かを書いていく。
「実行委員長」「連絡係」「書記係」「雑務係」「スカウト係」
そして実行委員長の所にさっそく自分の名前を書き込む彼女。
「さあ、立候補優先でポストは早い者順よ。あなた達どこがいいかしら?」
「おいおい!ずりぃぞ!実行委員長は他の奴は立候補すらできねーのかよ!司会進行の立場を利用して自分の名前を最初から書くとか……」
「何かしら。実行委員長は大変よ?それでもいいなら譲ってあげてもいいわよ」
「大変なのか!?……なら、やめとくか……」
さっきからこの男子、抗議はするけど指摘や反論されたらすぐヘタれるなー。ふふふ。面白いわー。
多分この連絡係……生徒会や教官と委員会の間の橋渡し役かな?許認可貰ったりとか。彼女が各係の説明を始めて他の人が興味を持つ前に立候補しておくべきよね?
「あっ、私、連絡係を希望します!アルメリーです」
「はい、連絡係ね」
すぐに黒板に名前を書き込んでいく。
「他に立候補はいない?なら残った係がどんなことをするのか説明するわ。それを聞いてから決めて頂戴。それでも立候補が無ければ私が独断で任命するから」
「「「「「横暴だ!」」」」」
……実行委員。なんだか大変になりそうな予感しかしない。
◇
翌日。
お昼の休憩時間。フェルロッテからのお誘いがあったので一緒に食事を摂ることに。
雑談を交わしつつ食事をしていると彼女が話を振ってきた。
「最近、先輩方のサロンに入ったの。よければアルメリーも一緒に入らない?」
「すみません、サロンってなんでしょうか?」
「まぁ、この子ったら何も知らないのね。いいわ教えてあげる」
本当に面倒見がいいなーと思う。嬉しそうに解説してくる。
「主人が著名人を招いて知的な会話を楽しむ社交界のことよ。でも私達はまだ学生の身なのでそれの練習ね。メンバーで集まってお茶会を開いたりするの。将来のための人脈作りという面もあったりするわ」
「ただ、私が参加したサロンは貴族の子女しか入れないという条件があって……でもその条件のお陰で、皆さんとても上品で礼儀正しく素敵な方ばかりよ?あなたも貴族の子女だから条件はクリアしているわ。どうかしら?」
「すみません、質問なんですが男子生徒はそこには在籍されているのでしょうか?」
プッと吹き出すフェルロッテ。
「そんなこと心配したの?メンバーはみな令嬢の女生徒ばかりよ。安心して?あーでも、私的にはテオドルフ様なら入ってもらっても良いのでは?と思っていますけどね」
「い、いきなりのお話なのでちょっと考えさせて貰っていいでしょうか……」
今考えられるのは以下の二択。
・入ってしまったら将来、家格から見て彼女がそのサロンの主宰になるだろう。そうなると私はただの取り巻きAに……。メンバーやサロンの影響力によるがその庇護下に入れるので学園内では守ってもらえると思う。このサロンより影響力が下のグループや個人から手を出されることはなくなるだろう。
・入らなければこの前のクリュエルみたいな生徒会メンバーのファンから次から次へと嫌がらせを受けるかも知れない。
でもどうせその手のグループに入るなら……できればランセリアの居るグループに入りたい。近くにいて彼女が破滅するのをなんとか防ぎたいもの。
「いい返事を期待していますわ。では私は仕事がありますのでお先に」
立ち去る彼女を笑顔で見送るが、「どうしよう……?」と内心汗が出まくっていた。
◇
同日、生徒会室。今ここにはアルベールとセドリック、ヴィルノーの三人しかいない。
「セドリック。アルメリーという子を覚えているか?」
「ああ、覚えている。それがどうかしたか?」
「一週間近く校内の美化をやらせてみたのだが、貴族の出なのに嫌がるそぶりも見せず、進んでやりたがったのだ。頼んだ場所を後で確認したのだがその仕事も丁寧で見事だったよ」
「いいじゃないか。それで……気に入ったのか?」
「ああ……そうだな。我が弟も彼女のことは気に入っているようだし、いずれ生徒会に入って貰いたいと思っている。そこで、だ。過去に中途で生徒会へ入れたような案件の前例が無いか調べてくれないか?」
「分かった。生徒会の過去の議事録をあたってみよう」
「頼む」
「アルベール。その子の名前で思い出したが、この前の実行委員の会合で彼女が連絡係に立候補したみたいだな。これだ」
実行委員から提出されていた役職候補の一覧が記入された用紙をセドリックは会長の席へ持って行く。
アルベールは何も言わずその用紙にざっと目を通すと『許可』の印を押す。
話が一旦終わった事を確認したヴィルノーがそこで話を切り出す。
「彼女の件で話があるんだが、どうやら一部の女生徒に不興をかっているらしい……」
◇
翌日。ダンスの授業のため教室を移動する。校舎のエントランスをそのまま真っ直ぐ突き抜け、両開きのドアをぬけた先に通路を挟んで一階建ての練習用の多目的ホールがある。
更衣室で着替えを終わらせてホールに入る。すでに思い思いのグループができあがって雑談を交わしている。空いたスペースに座り少し待っていると、やがて教官が現れた。教官の指示で経験者と初心者で別れる事となり、正直に初心者側に混じっていると指導教官から「アルメリーさんあなたはこちら側でしょう?」と経験者側に回される。抗議をするが聞き入れて貰えない。貴族の子女はある程度は出来て当然という常識のせいである。
教官の手拍子に合わせて経験者の皆は踊り始める。私も周りを見ながら見よう見まねでやってみるが、経験が無いためその動きはぎこちなく滑稽に見え周りからも嘲笑され、近づきざまに「こんな鈍くさい子、あの方には似合わないわー」など小声で好き勝手言われる。
わざとぶつかってこられたり、終いには足を引っかけられてつまづき体勢が崩れ見事に転ぶ。ただでさえ奇異な目で見られている所に大きな音を出し、さらに注目を集めてしまう。
拳をきつく握りしめ、心に誓う。
絶対に旨くなって見返してやるっ!覚えてろ!
その音に気がついた男子生徒が一人、人をかき分けて出てきた。そして私の顔を確認するなり駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?アルメリー嬢?」
かがみ込んで私の手を取り、起き上がらせてくれた後、キッ!っと周りを睨み付ける。
「あの、手を貸して頂きありがとうございます。ですが何故、ヴィルノー様がここに?」
「この前の休日にご一緒した際に週末のダンスの授業を受けると聞いていたので共に授業を受けたいと思い自分もこの時間に……それで、その時の約束を……」
「あ、ええ、そう言えばそうでしたね!」
段々と声が小さくなり不安そうな顔をしていた彼の表情がぱぁああ!っと輝くようにみるみる明るく嬉しそうに変わっていく。
教官が手を打ち鳴らし、次の練習に移行することを告げる。
「さあ、ではこれから男女でペアを組んで貰います。手近な人と一緒になって下さい」
手を握ったまま、顔が近づき真っ直ぐ目を見つめられる。
「ではあの日の約束通り、自分とペアを組んで貰っても良いだろうか?」
「ええ、是非お願いしますわ」
ちょっとヴィルノー見直しちゃった。筋肉バカとか思っててごめん。
ヴィルノーの力強い腕に抱き抱えられて教官の手拍子に合わせて練習が始まる。力があるので私が少々ふらついてもカバーしてくれる。密着するパートも多く、顔が近い、近い。ここまで近いと流石に意識してしまう。汗臭く無いだろうか?口が臭く無いだろうか?そんなことばかりが頭の中でぐるぐるして顔が熱くなる。
頭がふわふわするのはさっきからくるくる回っているから?
リードされているからか、さっきまで無様を晒してたのが嘘のようだ。
段々と体が動きを思い出したように彼の動きについていくようになってきた。
ダンスの動きは体が覚えていたらしい。
ペアになって踊り出した最初のうちは何度か足を踏むこともあったが、彼は終始笑顔のままだ。そのままリードを崩さず、慣れてきだした後半の方は殆どミスも無く私は周りをチラ見する余裕まで生まれた。
「はい、アルメリーさん大変素晴らしかったです。最初はどうなるかとおもいましたが……」
踊りきると教官は拍手して褒めてくれた。
「ヴィルノー様がリードしてくれたので。私はついて行くのがやっとでした」
私は息を切らせながら返答するが、彼はほんの少ししか息が上がっていない。
「アルメリー嬢はもう少し筋肉を付けた方がいいのでは?動きがもっと洗練されますよ。もしよければ放課後に自分達と一緒に鍛えてみるのはいかがですか?」
「お、お気持ちだけで……」
「まぁ!それは良いご提案ですね。アルメリーさん是非いくべきです。筋肉をつければ姿勢も良くなりますしスタミナもついて息も続くようになります。私も後で見学に行きましょう」
マジか……やはり彼は筋肉バカだったわ……。教官も勧めてくるし、確認にくる気まんまん。まだ学園生活始まったばかりなのにスルーして教官の不興を買うのは避けたい……あぁ、これは強制筋トレコースね……。
◇
休日。ベッドから起き上がることが辛い。
「アン、今日は筋肉痛で私動けないわ……」
「お嬢様……」
やれやれ、と言う風に呆れている。
「今日だけですからね?」
そして休日をほぼ一日寝て過ごしたのだった。
◇
翌日の朝早く。前日早くに寝たので早朝に目が覚めてしまった。忘れないうちに自主練をしたほうがいいかもと思い立ち、寝具をはね除け天井に手を伸ばし「んーー!」と伸びをする。
いつもより随分早く起きたのにもかかわらず、既にアンは起きていてメイド服に身を包み登校の準備を整えて主の起床を待っていたのだった。
「アン、今日はダンスの自主練をしにいくわ。ちょっと早いけど今から出るわ」
「かしこまりました」
アンは一礼をすると手早く用意をしてくれた。
登校。流石にまだ辺りには誰もいない。校舎のエントランスを通り過ぎ、練習用ホールへに入るとキュッキュというシューズと床との摩擦音などが聞こえてきて、既に誰かが自主練をしているようだった。のぞき込むとそこにいたのはランセリアだった。
「わ、私も一緒に練習していいですか?」
「ええ、構わないわ」
了解を得てから更衣室で着替え、ホールに戻る。
最初は一人で練習していたのだが、こちらのあまりの稚拙さに気が散ったのか、いたたまれなくなったのかランセリアは自分の練習を早々に切り上げて私を指導してくれることになった。
それから分かりやすい指導と本気で教えてくれてる熱心さがこちらにも伝わり厳しいながらも優しい時間を暫く共に過ごす。
「そろそろ切り上げましょうかアルメリーさん」
ランセリアが汗を拭きながら窓の外を見る。つられて窓の外をみると生徒をチラホラと見かけるようになってきた。
「ランセリア様!今日は本当にありがとうございました」
「私は後片付けして教官にここの鍵を返却するから、あなたは先に出ておいてね」
笑顔で彼女に向けて深く礼をし、更衣室で体を清め、着替えて練習用ホールからでる。校舎のエントランスに入ると登校してきたクリュエルとその取り巻きに鉢合わせてしまった。
「あらあらあら、これはアルメリーさん、良いところで出会いましたね」
「おはようございます」
気がつかなかった振りをして通りすぎたかったが名前を呼ばれてしまったので、それもできない。
まるで蛇が獲物を狙うようないやらしい笑みを浮かべるクリュエル。
彼女が指を鳴らすと取り巻きが私の周りを囲み簡単には逃げられないようにする。
「わたくし、良いことを思いつきましたの。あなたをわたくしのサロンに入れて差し上げますわ。伯爵家の令嬢である私の主催するサロンですのよ。と・て・も名誉なことでしょう?きっと毎日が楽しくなりましてよ?まさか、わたくしのお誘いを断るなんてこと……ありえませんよねぇ?ホホホ」
彼女の表情を見るだけでわかる。これは決して友好的な勧誘ではないことが。前回未遂で終わった虐めの続きや彼女のストレス発散を行うつもりなのが簡単に予想がつく。そのために自分のグループへ入ることを強要しているのだ。こんな下卑た人の主催するグループに入るつもりは毛頭ないし興味もない。
それならどうする?
今、包囲から無理矢理逃げ出せたとしても、しつこく付きまとってくると思う。
ならばフェルロッテのグループに入れてもらう?
それも頭によぎる。でもそれでは私の目的がまた遠のいてしまう。
じゃあどうするの?
今はこの状況から抜け出す方法は?
自問自答を繰り返すが何も思いつけない自分の無力さに悔しくて歯を食いしばり、ただ俯き黙り込む。
「ねえ、なんとか言いなさいよ!」
「早く答えてよね。私達も暇じゃないんだからさぁ。あはは」
取り巻きからヤジが飛んでくる。
「あなたたち、こんな入り口でたむろして通行の邪魔じゃない。一体何をしているの?道を開けなさい」
少し苛立ちの混じった澄んだ声が校舎のエントランスに響く。
まわりがざわつき始め空気が変わった。私を含め皆、声のした方向へ振り向く。
練習用ホールからでてきたランセリアが少し怒気を帯びた顔つきで割って入ってくる。流石に取り巻きの連中も怖気づいて包囲が割れ、数歩後ずさり、彼女の通ったあとに道ができた。
スムーズな通路の通行、それが彼女にとっては秩序でありそれを乱される事に少々苛ついていたのだ。
彼女から見るとクリュエルとその取り巻きが広がり通路を塞いでいる。これは秩序を乱す悪である。その中心に女生徒が一人いた。明らかに被害者である。
「あ、あら……普段ならあなた、こんな状況見て見ぬフリをするか、離れた所からただ見てるだけじゃない。いつもの通りさっさと生徒会室なり教室なりにいけばいいじゃない。この子、あなたとは何も関係ないでしょう?どうして今日に限って……」
顔を引きつらせながら忌々しそうにランセリアを睨め付ける。
ついさっき手ほどきしていた、一緒にいた間ずっと私に笑顔を向けてくれていた子が、性格の悪い連中にとり囲まれていた。ここまで笑顔を向けてくれた人物がここ最近いただろうか。
その彼女に対し、通路を集団で塞いで秩序を乱しているクリュエルの表情や言動はどうか?とても許せるものではない。それは心に燻っていた火にくべる薪となり燃え上る。その結果、普段のランセリアならありえない思考・行動をとらせた。
「それで……アルメリーさん。あなたは彼女達に何をされようとしていたの?」
「……この人達のサロンへの参加を無理矢理に強要されていたんです!私はこんな人達の所には入りたくありません!!」
「そう……あなたの意志は分かったわ……」
彼女が聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で呪文を唱えると体の周りに人の頭部ほどの大きさの波打つ水球が幾つも発生する。
私の作れる小さな火球、彼女の取り巻きの作れる拳大の数個の火球と比べるとなんて数、なんて圧倒的な大きさの球だろう。彼我の実力差というのがはっきりと分かる。
空中に漂う水球が髪の傍まで近づくと黒く美しい緩いウェーブの髪がゆらゆらとゆれる。
クリュエルとその取り巻き達はそれに怒りを感じ取り皆怯えていたが私は唯々、美しい一枚の絵画のようだとしか思えなかった。
「この子は私のサロンに入れる!あなたたちは即刻立ち去りなさい!」
「「「なっ!?」」」
クリュエルに左腕を突き出し宣言すると、私を見つめてくる。
「あなたもそれでいいわね!?」
「はい!ランセリア様!」
顎の前で手を組み神に祈るような仕草で目を潤ませながらランセリアを見上げる。
「お、覚えてなさいよ!いくわよあなたたち!」
魔法に怯え、そそくさと退散するクリュエルと取り巻き達。
彼女たちが見えなくなるとランセリアは軽く指を鳴らす。その瞬間、漂っていた水球達は弾けたあと渦を巻き空気中に霧散し消え去った。
「この度は本当にありがとうございました!ランセリア様は私の救世主です!」
「これで彼女は手を出してくる事はないでしょう。よほどの『覚悟を決める』か『お馬鹿さん』でなければ、ね。私の庇護下に入ったあなたに手を出せば我が公爵家にも喧嘩を売ると同義になる。流石に分かってると思うわ」
穏やかに微笑む彼女。
「あの……ランセリア様、ご自分のサロンを持たれていたんですね?」
「先輩方から名前だけ引き継いだの。活動はしていないし、するつもりもなかったから人もいないのにサロンと言うのはおこがましいのだけど……もし他に入りたい所があれば遠慮無くそちらへ入っても構わないわ」
「ではこれから活動を再開しましょう!二人だけだけど私は嬉しくてワクワクします!」
「そ、そうね。では近いうちに何か活動しましょう。また連絡するわね」
予鈴が校内に鳴る。
私は笑顔で大きく手を振り、それに応えるように彼女も微笑とも苦笑ともとれる微妙な表情を浮かべ軽く手を振り去っていった。彼女を見送った私は一歩どころか二、三歩は確実に近づけたのでは?という達成感に満たされて教室へと向かうのだった。




