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TSUBAME=PHOENIX  作者: カノウラン
第1章:TAKU
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アイドル事務所所属モデル・鳥海航

 シーン2



『火曜の憂鬱を、吹っ飛ばせ! ついでに、五月病も吹っ飛ばしてこーぜ。こんばんわー。深夜の放送部、火曜日担当は鳥海航です』


ザーザーと雑音まじりに、愉快そうな声が聞こえてきた。

他の曜日ならとっくに眠ってる時間だけど、火曜だけはほんの少し夜更かしして、AMのチューニングを東京の放送局に合わせる。


『五月も、残り十日だけど、どんなカンジ?連休後のだらだらーっとしたところに、中間テストが加わって、ますます、やる気が低下しちゃったりしてない?』


してるー、とつい返事をしたくなるような力が、ラジオ越しに聞くコウの声にはあった。

スピーカーに耳を当てながら床を見ると、ママが「売り上げに協力」とか何とか言って買い集めてくるファッション雑誌やアイドル雑誌が、いくつも散らばっている。

ほとんど使われない勉強づくえの上には、おれとコウが三人で映ってる六年前の写真が飾ってあった。


『中間が終わると、梅雨の季節、到来かァ。オレ、六月はホント憂鬱なんだよ。雨のなか練習してたら、全身ドロドロになるんだもん。練習着についた泥って、どうやったら落ちるんだ、あれ。主婦のひと、ぜひおしえてー』

「いや、コウ。雨でも外で練習すんのって、サッカーだからだよ」

『あ、そうか。野球とかテニスの試合って、雨天中止じゃん。なんだよ、雨のなかで練習すんの、サッカーだけ?』


まるで、こちらの声が聞こえたみたいに、ラジオの向こうでコウが言葉を継いだ。

たぶん、スタジオで向かいに誰かが座っているんだろうなと、聞いてていつもおもう。


『でも、芝のグランドで雨の日にサッカーをするのは、気持ちいいよ。ボールがすべって、いつも以上にスピードが出るしね』


スピード、という単語にどきっとした。

こうして時々、コウはまるでキーワードのような言葉を電波にのせる。

おれが感じてる距離なんて、幻でしかないみたいに。


『では、最初のメール。CM見て、デジカメ欲しくなったので夏休みはバイトしまーす、って。いやキミ、オレと同い年ってことは、受験生じゃないの? 大丈夫かよ。落ちたらオレのせいじゃん。おっと、落ちるは禁句か。カメラって、基本あそびの道具だけど、それ、勉強に活用する方法もありそうじゃない? アイデア考えたら、メールで送ってきてよ。ナイスアイデアはCMで採用とか、いいよね。ま、そこはオレの一存では決められないので、広告代理店のひと、お願いしまーす。って、こんなラジオ聞いてねーよな』


ケタケタと笑うコウのしゃべりは、どことなく檜山さんに似たものを感じさせる。

同じ左利きの人間だからかな、とおもって。

コウは右利きだったことを思い出した。

あいつは、器用を絵に描いたようなやつだから。

おれと右サイドのポジションを争ったあげく、おれにはこなせなかった左サイドに、平然と居ついてしまったんだった。




……デジカメ(笑)

そのうちスマホも死語になるのか?(笑)

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