3.パーティ構成と偏り
2話連続投稿です。次話はキャラ設定や武器等の説明です。特にキャラの外見が殆ど記載されてないので書きました。
「さて、話もまとまった事じゃし、クエストとやらについてじゃが」
ばあやが、ぱん!と手を合わせて話を振ってくる。
「すいません。それでどんなクエスト何ですか?」
「うむ、討伐系の飛びっきり厄介なクエストじゃ」
「厄介なクエスト?どんなのですか?」
クエストによっては様々な厄介な事が存在するが飛びっきりまでは行くことはまず無い。あったとしても、低レベルNPCを護衛しながら高レベルフィールドを探索程度なものだ。
「それがじゃな、神狼様に関係するクエストなんじゃよ」
神狼様。ユウナという女性の事だ。何者かに殺された可哀想な人。
「神狼様を散々苦しめた愚かな国がまた何か仕出かした様でのぅ、大魔王級の魔物が現れたのじゃよ。それがただの魔物ならまだ良かったんじゃが、何やら物騒なものまで抱え込んでおるのじゃよ」
「その物騒なものが厄介、ということですか?」
「左様、それのせいでの、愚かな国が消滅したのじゃよ。このまま野放しには出来んし、これ以上被害が拡大せぬうちにどうにかしたいのじゃ。お前さんたちさえよければ受けてくれんかの?」
ばあやは目で、「ユウナの仇を討ってくだされ」と言ってくる。
「わかりました。まだまだ未熟ですが、私たちで良ければお受けします!」
「ちょ、妹耶!?」
「放ってはおけないよ。わかってるでしょ?」
目でアルテナに問う。元より、クエストを受けるためにここに来ているわけだし。
「うっ、わかったよ、わかりました!お受けします」
「ありがたや。それでその魔物はまだ愚かな国におるそうじゃからそこまでの道標としてコレを持っておれ」
そう言ってばあやは、1つの髪留めを差し出してきた。
「これは…神話級!?」
「それはの、あの娘が、神狼様が身に付けておった髪留めじゃ。きっと奴のところに導いてくれるじゃろ」
差し出された髪留めを受け取ったアルテナは固まっていた。
「それでは朗報を待っておるぞ」
「はい、では、行ってきます」
私はまだ固まっているアルテナを引き摺るように引っ張って神社を後にした。アマツキはばあやに一礼し、抱き締めてから後を追いかけてきた。
「受けたのはいいけど、今から行くの?もう夜だよ?」
アルテナが聞いてくる。
だいぶ話しこんでいたし、ログインするのも遅かったからか、既に外は暗くなっていた。
このVRMMO【Another Earth World Online】は、現実と変わりない時間で動いている。その為、朝昼晩が現実世界とほぼ一緒に訪れる。
ちなみに、四季も現実世界にそってちゃんもある。
「確かに。私は大丈夫だけど、アルテナとアマツキさんは大丈夫なの?」
「私は大丈夫。今日友達の家に泊まるって言ってきたし」
アルテナは大丈夫だそうだ。アマツキは…。
「あー喋れないって言ってたね。アレは?チャットとか思考会話は出来ないのかな?」
チャット機能はわざわざ文字を打つ必要があるが、仲間内チャットなら、離れていても会話が出来るのでよく重宝されている。
思考会話は身内専用で、口に出さずとも、相手の脳内に直接語りかける機能である。喋れないくても、言葉さえわかれば誰でも使える機能だ。ただ、周囲10m以内に居ないと聞こえないのが難点だ。
アマツキは首を傾げている。
「もしかして、使い方知らないの?」
首を縦に振る。どうやら知らなかったようだ。
「えっとね、ウィンドは開けるよね?」
首を縦に振り、人差し指を縦に振る。するとウィンドが開かれた。
「それの右下らへんに、歯車みたいなマークがあるよね?そこをタップして、チャット編集、思考会話設定の順でタップして、身内選択で私とアルテナを選択して」
言われた通りに操作するアマツキ。
『……これでいいのかな?』
首を傾げる。
「そう!それでいいの、ちゃんと聞こえてるよ!」
『本当ですか!よかったです…』
胸に手を当て、ホッとするアマツキ。
『改めて自己紹介させていただきます。私は天月拝華っていいます。17歳です。これからよろしくお願いします』
ぺこりと軽く頭を下げる。
「ちょ、ちょっと待とうか。え?アマツキって本名だったの?」
『はい、そうですが?』
コテっと頭を傾げる。その仕草が似合い過ぎていて、胸にくるものがあるが、何とか堪える。
「こういったゲームでは基本、本名は使わないのが暗黙のルール何だけど、まさか、それも知らなかったの?」
『え、そうなんですか!?知らなかったです…』
しょぼん、となるアマツキ。
「ここまで初心者とは…えと、それで時間は大丈夫なの?」
『はい。家には私以外誰もいませんし、ご飯はもう食べたので』
アマツキの表情に影が差す。
「あ、その、ごめん」
暗い空気になり、つい謝ってしまう。
すると、ずっと黙っていたアルテナが口を開く。
「……天月、おうか、拝華?アマツキちゃんって、まさかとは思いますが、姫月高校2年生だったりします?」
姫月高校。それはヴァルナの|リアル(現実)である妹耶とアルテナでの|リアル(現実)である舞那が通っていた学校である。偏差値は49とそこそこで、元女子高のせいか男女比が3:7の国立高校である。
『え!?なんでわかったんですか!?』
驚いて、アルテナに詰め寄るアマツキ。
アルテナ×アマツキ、アルアマか…アリかな。などと思っていると私に話が回ってきた。
「ほら、ヴァルナも覚えてない?ほら、1年に頭はイイけど、喋れず、男嫌いの人が居たでしょ?」
「居たかな?アルテナ以外興味なかったから覚えてないや」
「っ!?」
不意を打たれ、思わず赤くなるアルテナ。それを見て、頭の上に?を3つも浮かべるアマツキ。
「そ、それは兎も角、居るんだよ後輩に」
顔を赤らめてる為、顔を逸らしてるアルテナを見て、不思議に思いながらも返事を返す。
「?アルテナがそういうなら居たんだね」
『先輩だったんですか!?』
「元、ね。だから今まで通りでいいからね?アマツキちゃん」
『は、はい!わかりました』
ほっとするアマツキにヴァルナが問う。
「そういえば、討伐クエに行くのはいいけど、装備やレベルは大丈夫なの?特にアマツキさん」
『はい、大丈夫だと思います』
「とりあえず、ステータス見してくれないかな?私たちのも見せるので」
『わかりました。あの、どうやって見るんですか?』
「そこから!?本当に何も知らずにこのゲームやってたのね…」
『す、す、すいません!』
勢いよく頭を下げる。
「いや、怒ってないからね?ステータスは装備の欄で見れるから。後、名前とレベルの公開も次いでにしとこうか」
『はい!』
アマツキの準備が出来たので3人同時にステータスを公開し合う。
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名前:ヴァルナ
性別:♀
種族:獣人種/モデル:狼
Lv.183
HP:1733(0)+347
MP:188(0)
物攻:1472(0)+1125
物防:1108(0)+435
敏捷:1654(920)+1467
魔攻:183(0)
魔防:920(0)+92
精神:183(0)
称号:
『運営から最強の名を授かりし者』
武器:
『終剣』ラグナロク(神話級)
『開祖』クレアシオン(神話級)
防具:
女神の髪飾り(幻想級)
生命のチョーカー(伝説級)
不滅の首飾り(神話級)
風神の羽衣(幻想級)
天竜の胸当て(幻想級)
戦神の腕輪(神話級))
神秘の指輪(幻想級)
龍花のトランクス(伝説級)
天駆のミサンガ(幻想級)
精霊王の靴(神話級)
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名前:アルテナ
性別:♀
種族:人種
Lv.170
HP:1432(0)+1000
MP:388(0)
物攻:855(0)+260
物防:855(845)+1120
敏捷:855(0)+50
魔攻:855(0)
魔防:855(0)+100
精神:855(0)
称号:
『騎士王の生まれ変わり』
装備:
騎士王の剣(伝説級)
騎士王の大盾(伝説級)
防具:
騎士王の兜(伝説級)
神狼の髪留め(神話級)
女神のブレスレット(幻想級)
騎士王の鎧(伝説級)
女神のリング(幻想級)
騎士王の靴(伝説級)
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名前:アマツキ
性別:♀
種族:天人種/モデル:聖妖精
Lv.164
HP:865(0)
MP:1364(0)+1364
物攻:494(0)
物防:497(0)+500
敏捷:496(0)+50
魔攻:824(0)
魔防:988(0)
精神:1152(815)+3936
称号:
『神子の巫女』
防具:
神子の髪飾り(神話級)
神子の髪留め(神話級)
神子の首飾り(神話級)
神子の巫女装束(神話級)
神子の腕輪(神話級)
神子の指輪(神話級)
神子のミサンガ(神話級)
神子の下駄(神話級)
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お互いがお互いのをみて驚き合う。
『え!?運営から最強認定されたのって、マスコットキャラか、元から存在しないんじゃないんですか!?まさかヴァルナさんとは…』
「いや、存在してるし、私だし。てか、その巫女装束って何気に神話級なんだね、全部」
「そうですよ!私なんて貰い物でやっと1個なんですよ!てか、ヴァルナは神話級2個じゃなかったんですか!?」
「いや、誰も2個しかないとか言ってないじゃん。てか、アマツキさんレベル意外に高いですね…」
3人して言い争う。
暫く言い争っていると、アルテナから話題転換が来た。
「それはそうと、みんな偏ってるね」
『確かに偏ってますね』
ヴァルナは敏捷、アルテナは物防、アマツキは精神。偏ってはいるが、バランスがいい組み合わせとも言えるだろう。
ヴァルナは遊撃、アルテナは前衛、アマツキは後衛もとい、支援回復。
「バランスいいねぇ。ヴァルナのステが既に敏捷特化なのか分からないけど」
「装備統一補正は凄いけど、それよりも装備の組み合わせ方によっては強くなったりするんだよ!私みたいにね!」
キラっとウィンクと一緒に目の前でピースを作ってみる。
「いや、神話級を複数持っているヴァルナに言われても」
スルーされて少し恥ずかしい。
『私のはどうなんでしょうか?神話級?で統一もされてますけど、バラバラにした方がいいんでしょうか?』
心配そうに聞いてくる。
「そのままでお願いします。回復特化でそのステは貴重なので。それに十分チートです」
『あ、はい。わかりました』
「いいなぁ、私も神話級欲しいなぁ。どうやったらGET出来るのかなぁ」
はぁ、とため息をつきながら1人グチグチ言ってるアルテナにヴァルナが聞く。
「ん?それなら私が使わない装備でいいならあげようか?確か神話級で物防特化の防具があったはず…」
「え、マジで!いいの!?ちょうだい!いや、ください!お願いします!!」
土下座するぐらいの勢いで頼み込んでくるのをみて、ニヤリと笑う。
「なら今度、私の言うことを1つ聞いてくれるならいいよ?」
「うっ!?………くっ、腹に背は変えられない。聞くのでどうか私に神話級を恵んでください」
凄まじい葛藤の後、言うことを聞いてくるそうだ。やったね!
『何を命令するつもりなんですか?』
蚊帳の外に置かれていたアマツキが、気になったのか聞いてきた。
「それは、ひ・み・つ・です!」
『あら、そう言われると余計気になりますね』
「秘密ですってば。ただ本音を聞くだけですし」
アマツキの耳元でつぶやく。
『なるほど、いい機会ですからね、なんて思ってるのか聞いてみたいですよね』
「え?ちょ、2人して何の話してるの!私も混ぜなさいよ!」
「ただ、ちょっと、ね?」
『うん、ちょっと。命令についてです』
アマツキもアルテナをからかうように言う。
『女』3人集まると『姦しい』ってよく言ったものだ。
気が済むまで3人でイチャイチャし合い、気が済んだところで話を元に戻した。
「はいこれ。さっき言ってたヤツ」
アルテナにプレゼント経由で装備を渡す。
「ありがとう!早速装備してみるね!」
アルテナの体全体を光のエフェクトが覆う。
このエフェクトは設定でオンオフ出来るが、オフの状態だと、装備を変え終わるまで全裸になる。オフでも18歳未満のプレイヤーには強制的に光のエフェクトが付く。見てる側も同じ。
エフェクトが晴れた時には姿が変わっていた。
「おお!案外似合ってるじゃん!」
『とてもお似合いですよ』
「えへへー、そうかな?」
褒められたことが素直に嬉しいようで照れている。
「ステータスの方はどうなった?下がってないよね?」
「ちょっとまって」
指操作をしてステータスをこちらに見せてくる。
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名前:アルテナ
性別:♀
種族:人種
Lv.170
HP:1432(0)+1432
MP:388(0)
物攻:855(0)+650
物防:855(845)+1640
敏捷:855(0)+75
魔攻:855(0)
魔防:855(0)+100
精神:855(0)
称号:
『守護神の化身』
武器:
守護神の剣(神話級)
守護神の神楯(神話級)
防具:
守護神の兜(神話級)神狼の髪留め(神話級)
女神のブレスレット(幻想級)
守護神の全身鎧(神話級)
女神のリング(幻想級)
守護神のブーツ(神話級)
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「おぉ!高くなってる!」
『ですね!それに、MP消費しますが神楯の攻撃魔法無効化は魅力的ですね』
「本当にありがとう!5つも貰っちゃって。なんだか、命令で何されるか怖くなってきた…」
「ふふっ、それは戻ってからのお楽しみよ!」
「それが怖いんだよ…」
『お2人は仲がいいですね。羨ましいです』
「それならアマツキさんも一緒にどうですかっ!」
そう言いながら抱き着く。
『それはいいですね!今度お願いします』
「ちょ、やめた方がいいよ!?」
「アマツキさんがいいならいいじゃない。なに?ヤキモチ焼いてくれてるの?可愛いなぁもう!」
アマツキから離れ、アルテナに抱き着く。
「ひゃい!?ちょ!恥ずかしいからやめれ!」
『ふふ、本当に仲がいいですね』
「あぁもう!ほら、ヴァルナも離れて!さっきから見られてるから!アマツキちゃんも見てないで離すの手伝って!」
あわあわするアルテナをみて微笑んでるアマツキにキッと涙目で睨むアルテナ。
「むぅ、見せつけてるのに」
「見せつけなくていいから!早くクエストに行こうよ!」
『そうですね、そろそろ行かないと辺りが真っ暗になりますよ』
「はーい」
こうして私達はクエストに向かった。