〜プロローグ〜
※ 2018/07/02 脱字訂正しました。
2100年7月23日。今話題のVRMMOに新たな作品がなんと今日発売!?リアルを追求して、五感の全てを現実並みに再現してみせたVRMMO【Another Earth World Online】、もう1つの大地と世界を貴方も楽しんでみませんか?
「そんなに面白いのかな?」
いったい何度目になるのか、同じ呟きをする。
朝から何度もテレビやら、ラジオやら、LINEやTwitterなどで騒がれており、その度に呟いている。
「丁度夏休みに入ってるからやってみようかな」
そう呟く少女の手には【Another Earth World Online】とパッケージに書かれたソフトが…。
「まさか当選するとは思わなかったし、これはやる運命なのかな?」
抽選で1万名まで当たるというのに、倍率が50万分の1の確率にまで上がって、当選は絶望的だと思っていたのに、当日の当選者発表と一緒に、今朝届いたソフトをみて、それはもう喜んだ。
彼女をよく知る友達からは、「あの娘はゲーム好きの廃人何ですよ!可愛いのに勿体無い」などと言われているが、彼女自身、そういった自覚は無い。
それはさておき、今の時刻は13時を過ぎた辺りだが、朝からずっとこの調子で未だにプレイまでには及ばずにいた。
「えっ!?もうこんな時間…丁度いいから、昼ご飯食べてからやりますか」
やっとやる事を決意した少女はそそくさと昼ご飯の準備に取り掛かるのだった。
少女の名前は狼谷妹耶。女性。18歳。高校3年生。彼氏なし。彼女なし。学力上の中。運動神経抜群。スタイルは悲しいほどのスレンダー。そんな彼女の趣味はゲームであり、これまた彼氏がいない理由の一つである。
最近は親元を離れ、一軒家にて一人暮らしをしている。生活費などは親が負担している。こうみえても、妹耶は社長令嬢なのである。
昼ご飯の片付けが済んだのが14時を過ぎた辺りだった。
確か発売は13時からだったはずだから、早い人はもうやり始めてる頃だろう。
リビングから小走りで部屋に戻り、ソフトをギアに繋ぎ、ゴーグルを掛ける。今のギアは昔より更に性能が良くなりコンパクト化されており、ノートパソコンが置けるスペースさえあれば置けるようになっていた。
その後、ベッドに仰向けに寝転ぶ。そして専用のゴーグルを装着し、スイッチを入れる。
『【Another Earth World Online】を起動しますか?』
ゴーグルに付いているモニターに文字が浮かび上がる。
(はい)
このゴーグルには思考を読み取る機能が付いており、言葉にせずとも思考認証で行えるので、声が出ない人、話せない人でも楽しめるように改善されている。
『起動を開始します。』
その文字を認識するのと同時に意識が遠のくのを感じた。
これはVRゲームによくあることで、妹耶はあまりこの感覚が好きではないのだが、VRMMOは好きなので我慢していたりする。
目を開くとそこは何も無い白い空間だった。
『ようこそ、【Another Earth World Online】へ。今からキャラメイクを行います』
そんな機械じみた声が聞こえた。
『まず最初に種族からです』
目の前にプレートが現れる。そこには、色々な種族名が書かれていた。
メインは人種、獣人種、魔人種、天人種の4種類。
人種はそのまま人間。全体的に育ち易いバランス型。魔法は使えるが魔人種や天人種には劣るが、全ての魔法を使える。
獣人種は犬、猫、狼、狐、熊、鹿、馬、狸、鼠などといった多くの種類があり、全体的に筋力と敏捷が育ち易い近接型。魔法を苦手とし、耐性も殆どない。魔法は使えない事は無いが、実用性は皆無に等しい。
魔人種は鬼人族や吸血族(吸血鬼)、淫魔族などといった魔族。攻撃系魔法に特化している。鬼人族などは自己強化魔法に特化している。魔人種は回復系魔法を苦手としている傾向がある。
天人種は天使、精霊族などといった概念系の種族。回復系魔法に特化している。天使は光系統の、精霊族は自分の属する属性の系統魔法に特化しているが、その他の攻撃系魔法は得意では無い。
「う〜む、どれにしよっか」
説明を読み、どれがいいのかわからない。
この説明を見る感じじゃあ、人種が弱いように見えるが、育て方次第では最強になれるそうだ。
獣人種は魔法がほとんど育たない変わりに、筋力と敏捷が強化され、詠唱が必要な魔法にとっては天敵となりうる存在となる。
攻撃系魔法特化の魔人種や回復系魔法特化の天人種も魅力的だ。
「よし、決めた!」
妹耶はーーー。
種族を選んだ後は、顔のパーツや目の色、肌の色、身長、体型などといった細々な設定をする事1時間。
『最後にユーザー名を決めて下さい』
名前か、かっこいい名前がいいな。ならーー
「ヴァルナ」
そう名付ける事にした。
『以上を持ちまして、キャラメイクを終わります。1度プレイを始めると再度キャラメイクは出来ません。よろしいですか?』
「はい」
躊躇わずに即答する。
『それでは、よい世界生活を』
その言葉と共に引っ張られるような感じが襲う。
これが転移の感覚だと気付いたのはいつの間にか、目の前の光景が色鮮やかになっていたからだ。
こうして妹耶の、ヴァルナという、白狼の小柄な女性の新たな世界での生活が始まった。