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30 直前

毎週金曜投稿(ストック次第で可能なら月曜も投稿)予定です。

 闘技場内・東側関係者通路


「放せ!くっ・・・卑怯だぞ二人がかりで!!」

「わめくな!とっとと帰れ!」

 ドンッ!!

「痛っ!」

 ドサッ!


 昨日通った通路から選手控室へ向かおうとしたセンリと俺達であったが今日はなぜか通路の入り口に衛兵が二人配置されており門前払いを食らった。


「昨日は通れたぞ!」

「知らん!しっしっ」

「なんだとこの―――」

「待てセンリ!ハウス!」


 突き飛ばされ罵倒され血が上ったセンリは今にも噛みついてやると立ち上がろうとするが、俺はそれを一喝。こんなところで騒ぎを起こすなと睨みつけると荒事は踏み留まった。


 ケントさんの身内だから何とか通してくださいよと努めて柔らかい口調で衛兵たちにお願いしたが覆面として鼻まで覆った布を指差しながら「そんな形の者を通すわけにはいかん」とピシャリ。さらに食い下がった結果あっさりとつまみ出された。なんたる塩対応だ。


 突き飛ばされたセンリを俺とタクで抱き起こし、さらに衛兵に食って掛かろうとするのをペコペコ謝りつつ二人がかりで引きずって退散。来た通路を戻る。


「あんなやつら本気を出せば一撃なのに・・・!」

「落ち着けよそんなことしたら一発でアウトだろ。ただでさえ、ゴニョゴニョ・・・なんだから」

 そこへ追い付いたタクがセンリを宥める。

「兄さんの言う通りですよセンリさん」

「―――ふう、やっぱり尾けて来て正解でした。センリさん、こんなところで問題は起こさないでくださいね」

 俺とセンリだけで歩いていたはずがいつしかタクとフウタが合流し、フウタの足音とやれやれといった声が聞こえた。

「・・・フウタか」

「一撃とか言いながらあっさり衛兵に捕まってましたね」

「それは、二人だから―――」

 歯に衣着せないフウタの物言いに言いよどむセンリだが、フウタは気にせず続ける。

「ともかく目立つようなことは避けてください。何度も言いますがただでさえ・・・なんですから。自覚してください。いいですね」

「・・・っかったよ」

「ちゃんと目を見る!」

「・・・分ーかーりーまーしーたー!」

 センリは少し肩をいからせながら歩き出した。



 決勝戦まで時間は差し迫りカケル達四人は維江原中へ散ってケントを捜索。宿屋で待機しているハルとリョウを除く、分散していた全てのメンバーはやがてこの闘技場内に集結した。

 しらみ潰しに探し回っても発見できず残るはこの先の通路のみ。しかし衛兵に阻まれ通ることはかなわなかった。しかしいるとすればもうここを除いて他にはない。時間的にも遠くには行けないだろうことからいるならばここしか有り得ないと考えが至ってのこと。

 ところが、十中八九この関係者通路の先にいるであろうというのに衛兵に立ち塞がられるまさかの妨害。替え玉計画、頓挫の予感。



「ああもう!どうすりゃいいんだよ!なあカケル!」

「他はもう全部探したし、行けるならフウタとタクが前みたいに潜り込んでくれたんだけど」

 とタクとフウタに目配せをするも反応は奮わない。

「残すはここだけでした。他には姿なく」

「早くしないと始まっちまうよ―――」


 ・・・ウワァァァァァァ――――!!


「ん!?」

「何だ!」


 突如、にわかに色めき立ちたる歓声。

 その発信源は上方全周。


「まさか!」

「まずい!もう時間がないぞ!」

「どうすれば」

「くうっ始まっちまうよチクショウ!」


 動揺四人。目配せの中、無策。

 八方塞がりに地団駄を踏む。


 時刻はもうまもなくである。

 数万大挙、観客のボルテージが高まっているのがこの階下の屋内へ地鳴りの様に響いた。






 爆竹の束を火中に投げ入れたかのような拍手が鳴り響く闘技場内。

 観客席は完全に埋まり、その混雑は通路階段にまで人があぶれる。


「おおい見えねえぞ!」

「おいお前でけえんだよ!後ろ行け!」

「ざけんなテメェ!チビなのが悪ぃんだろうが!」

「んだとオラァ!!」


 方々ではこの超過密状態からくる不快感ゆえ些細なことで諍いを始め出した。

 決勝を今か今かと楽しみにしていたすぐ近くの観客たちはそれを肴に囃し立てる。


「おいそこのお前何をしている!」

「なんだようるせえな」

「そこに登ってはいかん!降りなさい!」

「チケットは買ってんだぞ。見えねえし、客なんだから構わねえだろうが」

「今すぐ降りなさい!降りなければ」

「何だ?ちょっ!おいなんだお前ら!触んじゃねえ!」


 あまりの人の多さにフィールドが満足に見られない客はそれぞれスタンドへ下層階から続く階段にある石造りの屋根や、掲揚台横の出っ張り、区切りの塀の上によじ登って観戦しようとする。

 各所で頻発した客の危険行為に対して大忙しの巡回兵たち。よじ登った客たちは巡回兵の注意を無視するものの実力行使に対しては抵抗虚しく引き下ろされる。が、別の場所で他の観客がまたもよじ登り、そこへまた巡回兵が急行するいたちごっこがせわしなく繰り広げられる。


「ねぇまたあのお兄ちゃんのぼってるよー」

「こら指差しちゃいけないだろう。ちゃんと手つなごうね」

「うー。みえないよー」

「そうかあ、ようし!」

「うわあ?!きゃーたかーい!」

「これなら見えるだろう」

「みえるー!・・・あー!出てきたよー!」

「どれどれ?」


 ある父の肩車で担ぎ上げられた幼い女の子は一気に開けた視界にはしゃぐ。

 もはや身じろぎも出来ないほどの超過密状態となった闘技場内であるが二名の人物に一斉に色めき立つ。


「来たぞ!」

「英雄さまのお出ましだ」

「おおいこっち見てくれー!」

「ケント様~!」

「はっ、今私のことを見たかも」

「違うわよ私よ!」

「いいえ私!ケント様ー!愛しのケント様こっちよー!」

「ケントさまーーー!」

「ケント様ぁぁぁ!!」


 東西、青赤の扉から現れたのは決勝戦に駒を進めた二名。

 いつもの軽鎧を纏い白の仮面ハーフマスクを着けたケントには心なしか女性ファンからの声援が多い。


「あのお方の素顔を見たいですわ!」

「さぞやお美しくあられるでしょうね」

「それなのにあんなにもお強く・・・ああなんてミステリアスなんでしょう!」

「はぁん!わたくしもうダメです・・・!」


 良家のお嬢様方からのウケも良く、ケントには黄色い歓声が飛ぶ。

 ケントは手を振るほどに応えるでも、一切見ずに無視するでもなく、程よく絶妙なラインで目線を観客席に配る。

 その控えめな目線であっても自分に向けられたものと勘違いした乙女たちは息を詰まらせ、雛鳥のように両手をばたつかせるのだ。


「・・・チッ」


 ケントの近くから聞こえた舌打ちの方向。

 それはすぐ目の前の対戦相手から発せられた。

 帝国から参戦した楯割の異名を持つ男・アレッド。

 見た目は一言で言うならばヘビー級のタンク。着用している防具は胸当てのみだが逆三角形に張り出した筋肉そのものが鎧と見紛うほどの剛健さ。身長もケントより一回り高く威圧感のある男だ。


「おい、あれ」「ああ。シアン川の」「あいつが楯割か」「帝国随一のメイス使いだ」と観客席でヒソヒソ語られる。

 だが観客たちのその顔は決してアレッドを称えるものではなく、むしろ苦々しげである。


 帝国軍に従軍していたアレッドは王国軍との交戦中にいくつもの王国軍防衛陣地を自慢のメイス一本でぶち抜いてきた帝国戦勝の立役者の一人。

 停戦から九年ほどが経ったがシアン川北岸の戦いはその経過が凄まじいこともあり人民の記憶に新しい。

 先の戦争末期、帝国の一方的な攻勢に後退続きの王国軍はシアン川を最終防衛線と決定。北岸に残って帝国軍主力を食い止めるべく抵抗を続けていたがその王国軍陣地につに帝国軍の別動隊が側面から奇襲を仕掛け、総勢八千の王国軍守備兵を立て続けに食い破り、補給を絶たれ混乱する王国軍本隊の敗残兵をもろとも次々に川へ突き落した。


 以後シアン川を境に戦況は膠着したが、王国軍の反撃の芽を摘み取ったのは間違いなくアレッドの属する南方軍の功績であることは間違いない。

 王国がシアン川向こうの北方領土を大きく切り取られたのはいわばアレッドの属する帝国南方軍の仕業であり、王国民が大半を占めている闘技場観客席内においていかに停戦中とはいえアレッドを見る目は気持ちのいいものではない。


「随分と人気だなぁ。ええ?」

「―――そうでしょうか」


 黄色い歓声と熱持った眼差しを浴びるケントと冷たい目線と畏怖を浴びるアレッド。

 対照的な反応をまざまざと見せつけられアレッドの心中は穏やかではない。嫉妬にも似た感情が渦巻く。


「あなたも名のあるお方ではありませんか」

「なんだそれは、皮肉か」

「そう聞こえたのでしたら失礼しました」


 男は強くあるべき。

 破った陣の数、蹴散らした部隊の数、討ち取った敵の数の多きに誇りと価値を置くアレッドにとって、目の前で黄色い歓声を浴びるケントは軟弱で軽薄に映った。


「―――人気にあぐらをかいてると痛い目見るぜ」

「ご忠告ありがとうございます。とても心の篭ったお言葉身に沁みます」

「・・・チッ」


 クールに言い放つケントにアレッドは少し癇に障った。特に"名のある"が引っ掛かった。

 あれほどの手柄を立てておきながら昇格もないのか?と率直な心境を透かし覗かれたような気分になったのだ。


 ―――本来であればあの戦争で俺は十分に活躍した。帝国軍屈指だと自負している。

 最前線の一兵卒とは思えない大戦果を挙げたと思っているし実際に周囲にもそう思われている。

 盾持ちの横陣に一番槍を上げたのは俺だし、堅固な防柵をメイス一本だけで突き破って大局を揺り動かし戦況を有利に運んだのはシアン川北岸だけに限らない。初戦から毎回そんな突撃をして帝国軍を勝利に運んだ俺に対して当然の褒賞が直ぐにあってしかるべき。


 それがズルズル先延ばしされてこんな武闘会に出る羽目になって。

 あのお方からの、たっての頼みだというから待ってやった。出てやった。

 そうでもなきゃ今年の武闘会は辞退することもよぎった。なにが前年度優勝者だ。なにが防衛線だと。

 そんなに待たせんならじゃあもういっそのこととんでもねえことでもやってやろうかと思ったが、あんな話を持ち込まれたんじゃあ一応の結末には居合わさせてもらうわ。

 60万エルの優勝賞金と今回の記念大会の副賞として授与される将軍の位はまずまず魅力的。たとえそれがスパイであっても。そして、それはこれだけじゃない―――。


 遥華王国を飲み込んで併合したらあわよくば大領主になれるかも知れん。

 俺にはそれを成すだけの腕があるんだからな。




 アレッドは早くも目の前にいる白仮面の男とやり合いたいとうずうずしている。

 さっさと決着させてさっさと賞金授与と将軍位の任命式に移りたい。もう既に目の前にぶら下げられた霜降り肉にかぶりつきたくて仕方ないのだ。すぐにも美酒に酔いたくてたまらないのだ。



 観客も同様に今か今かとまもなく始まる娯楽を心待ちにしていた。

 白人・黒人・黄色人が入り交ざり金髪・茶髪・赤髪・黒髪織り交ぜた色の坩堝と化した観客席。

 かたやケントを、かたやアレッドを応援し、誰がどのように口を発しているのかわからないほどの数万の声は、やがて壇上へと上られた人物の側近の挙手に一斉に静まる。



「第二十回・維江原大武闘会、決勝戦を執り行います。試合に先立ちまして維江原領主・ザノ男爵から参加者ならびに観客の皆様にお言葉をいただきます――」


 司会の進行に合わせて壇上の定位置に着いたザノはフィールドに視線を移す。

 一人は帝国派の重戦士。

 もう一人は想定外を持ち込んでくれた白仮面の男。

 前者には期待を込め、後者には引っ掻き回してくれおって。ゴミめが。と悪意を込めた目線をくれる。




「オホン。・・・決勝まで辿り着いた勇敢なる戦士たちよ。今その舞台に立てることはこの上ない誉れ。有望なる人材は国の宝。誇りである」



 ザノの言葉にケントの眉がピクリと動いた。

 ―――"有望な人材は国の宝"?白々しいことを。


 嘲笑うようフンと小さく鼻を鳴らす。どの口がそんなことを言っているのかと思わず笑いそうになった。


「強き者たちが一堂に会しその腕を競うのは雄虎が雌虎を得るべく行われる生存本能そのもの。種の存続を求める純粋な覚悟だ。そしてその勝者はたった一人。わずかに一人しかおらなんだ」


 つまるところ蟲毒とでも言いたいのか。

 脅威のない所から甕の中を覗き見るのはさぞ気分が良いだろう。さぞ面白がっていたことだろうな。

 ならば負けた者のことごとくをむざむざ敗死させたのかは言うまでもないと言うことだな。カケルの言っていた通りシッチャカメッチャカな領主なようだ。


 誰もが見るからに決着がついたと感じた試合であっても不必要にして執拗な追い討ちを行っているものが多く見られた。戦意を喪失し逃げ回っている者の背に斬撃を浴びせていた。

 明らかに娯楽ではない。あまりにも度を超えている。

 国の宝と思っているとは到底思えない。無意味な死を与える必要が全くない。


 だが分かっているぞ。

 男爵あなたが言う有望なる人材も、国の宝の出処も。


 この第二十回大会が救導教総本山から次期教皇候補のズーイ・コージャ老師をお招きしての記念大会であること、試合内容が不確定要素の少なく残虐性の高い抜き合いであること。その意図。目論見。


 笑っているがいい。

 今はあとわずかで届く蜜の味を想像して存分に楽しむがいいさ。



「―――正々堂々、力の限り戦い抜くことを期待する。儂からは以上である」

「御一同、礼」


 司会の号令に合わせてケントとアレッド、観客のすべてがザノに向かって礼を取った。

 正々堂々と言う言葉がこれほど薄っぺらに聞こえるのも珍しいと感じながら形は立派な礼をした。

 たとえ仮面をしていなかったところできちんと外面は保つが、それにしても心の伴わない礼であった。


 偉そうに講釈を垂れたザノは話し終えるやすぐさま隣に立っているズーイの下座へ進み、手で先を促す。

 うむと頷いたズーイは司会の紹介を待ち、一歩前に進み出る。


「続きましてズーイ・コージャ老師から参加者の方々に有難くも直々にお言葉を賜ります。起立のままご拝聴ください」



 フィールドに立っていたケントとアレッドは少し胸を張り良い姿勢を心掛ける。ザノとは違って心を込めて。

 観客席の数万数千の観客は老師からのお言葉とあって一斉に起立。

 直立不動の姿勢を持ってズーイ・コージャ老師の言葉を待った。


 落ち着いた歩調から落ち着いた呼吸声色でゆったりとした表情のズーイはフィールド上の二人を慈愛に満ちた目で見ると言葉を紡ぎ始めた。


「厳しい戦いを経て立つその地は数々の思いや無念が込められた地である。夢破れた者の願いに最も近いそなたたちの奮戦は皆の知るところ。唯一無二の猛者ぶりである。持ち得るすべて、真価を十二分に発揮し悔いなく戦いを終えられるよう切に祈る。天の救いと我らが御神のお導きを―――」



 ズーイ・コージャ老師は両手を広げ天高く掲げる。

 観客全員が右手を左胸・心臓の位置に当て四十五度最敬礼―――救導礼を取った。

 フィールド上のケントとアレッドは自身に向けられたお言葉ゆえ片膝まで地に付けての礼を取った。


 ズーイの鼓舞激励はザノの権力を背景にした驕りの見える美辞麗句よりも、簡潔にまとめたものであるのに数十倍の心地よさをもって数万観衆二名戦士の耳から心の深くへ沁み入った。

 世界的なオペラ歌手たちが揃い踏みし巨大なホールの舞台でユニゾンしているのを間近で聞いたかのような鳥肌が全身に広がる。


 救導教教皇本人は言うまでもないがその御子と言えば天皇陛下・ローマ法王・英国女王にも匹敵するほどの雲の上の存在。普段は世俗には居られず総本山に慎ましくおわすお方、所詮は口では何十倍にまで栄えたとて地方都市の域を出ない維江原にあっては過ぎたるお方だ。


 ズーイから皆平等に注がれたのは一言で端的に言えば博愛。良きも悪しきも貧富も問わず皆に。

 等しく我が子を見るかのような優しい眼差しと物腰柔らかかつ存在感のある語り口。全身から発せられる清廉なオーラ。

 壇上からフィールドまでは距離があるがその偉大さ神々しさにはひれ伏さずにはいられない。



「―――お直りください。それではこれより第二十回・維江原大武闘会最終日・決勝戦へ移ります。盛大な拍手でお送りください」


 司会の合図に合わせて壇上から退場されるズーイ・コージャ老師とザノ男爵へ注がれる数万の拍手。

 大半の観衆の拍手の送り先はもちろんズーイである。ザノにではない。悪政は布いてはいないがザノ個人を民が慕うきっかけになるようなことはしていない。結果的にこの維江原を発展させたのはザノの功績ではあるがその維江原を街たらしめたのは土を耕し家を建て外壁を囲った市民たちに他ならない。


 ズーイの先を腰低く先導しつつも、向けられた大きな拍手になかなか悪い気はしないザノ。儂の手で作り上げたと思っている街が実はザノの願うように思われていないのは知らないほうが幸せだろう。知ってしまえば痩せ狸間違いなしだ。



「・・・お前の化けの皮が剥がれんのももうすぐだな」


 思案にふけるケントへアレッドは細めた目で睨みつけながらそうつぶやいた。

 同じく膝をついて礼を取っていたケントとほぼ同じタイミングで立ち上がった時、膝の砂を払いながらケントに意地の悪そうな顔で挑発した。


「人一人も斬れない根性無しってとこ、みんなに見せてやろうぜ」


 クックックと笑いつつ肩を震わせながらクルリと反転、フィールドの端へと向かう。


「・・・」


 ケントはその挑発に対して一瞬気を向けたのみで特段の反応は見せなかった。




 まもなく決勝戦が始まる。

 これから行われる試合は武闘会の最終戦。これですべてが決まる。

 もしここで負けてしまえばこの維江原一帯は帝国領になることは必定。


 もし王国に仕えていれば忠義の士でも言われるのだろうな。

 だがそれを誰が伝えるというのだ。もみ消されるに違いない。闇の出来事は闇からは出られないものだから。日に当てればすぐさま消え去る事だろう。


「ケント様、もう間もなく始まりますのでこちらへ」

「分かりました」


 アレッドと入れ違いにやってきた二人の係員はケントと台座へ分かれて向かう。

 決勝戦開始前の挨拶と激励のため空白となっていた台座に剣が差し込まれるのをケントは力のない目で見ていた。

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19/6/25 加筆訂正・スペース改行追加等レイアウト修正

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