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20 センリの心境

毎週金曜投稿(ストック次第で可能なら月曜も投稿)予定です。

 アタシはセンリ。

 冒険者グループ「麗しのバラ」の大将をやってる。なんで大将かって?かっこいいからだよ。深い意味はない。

 アタシの赤髪とフウタの薄緑色の服は、見てそのまんまバラ!バラは鋭いトゲ――力を持った、誰が見ても美しい冒険者!アタシ達にはピッタリでいいじゃない?でも、フウタは目立ちたくないんだってさ。

 ケントも「あなたのどこが麗しで美しいのか箇条書きで十個以上教えてくれるかい?」ってそれはそれは鳥肌の立つような笑顔で言ってくるんだ。ああいう時の敬語はホント怖い。幼馴染なのにね。


 ケントとフウタはこのグループ名嫌がってんだよね。

 だから一応オフィシャルでは「旋風」で名乗ってる。

 でもセンリとフウタで「旋風」なんてありきたり過ぎてつまんない(ケントは名前を入れて語呂悪くしたくないから辞退)し、せっかく名付けたんだから、アタシ一人だけでも呼んでやらないとね。




 あの地下牢に捕まって数日。

 アタシ達は牢番から猛獣剣闘に出されることを聞いて何とか出られないか探した。

 でも格子はかったいし、窓はないから出られないし。

 武器も膝当ても全部取り上げられちゃって何にもないからどうしようもない。

 だから暇さえあればカケルに話しかけたり愚痴ったり。


 イヤイヤだけどあたしの話を聞いてくれるあたり、カケルって良い奴だよね。なんだかんだいって結局面倒見ちゃうっていう感じ。

 あ、違うよ?アタシが面倒とか手間とかそういう意味じゃないからね。今はそういう事じゃないから。

 だから、アタシばっかり話してばっかだとなんか悪い気がしたからカケルの話も聞いてみたんだよね。


「・・・カケルはなんか話したい事とかないの?アタシ聞くよ?」

「ええ?うーん・・・」

「何でもいいよー?お姉さんに言ってみなさい」

「そんな年変わらないでしょ」

「人生経験ほーふなの!いいから言いなさいって」

「・・・じゃあ」

「どうぞどうぞ」

「・・・実はハルに避けられてて」

「うん・・・どうして?」

「えっと・・・うん・・・」

「なに?なんか思い当たる節あるんでしょ?」

「あるにはあるけど――」

「言ってみ言ってみ」

「いやでも――」

「いいから」

「引くかもしれない――」

「引かないから」

「でも――」

「引かないから言ってみろって!」

「・・・・・・・・実は――」



「――それ以来、まともに目も合わせてくれなくてさ」

「・・・・・・」


 思ったよりもヘビーな話だった。

 人の口から聞く分には軽い感じがするけど実際に自分にそれが起きたと想像すると結構キツい。時間が経てばたぶん笑い話になるけど、まだ全然。新鮮すぎる話だよ。


 だって好きな人の目の前で漏らすなんて。ねえ。


 まあその一騎打ちした時はそれが最終手段だったってのは分かるけど、いざ切り抜けて冷静になっちゃうとその辺取り返しがつかないよね。


「・・・他に思い当たる節はないの?」

「ない。それから態度がガラッと変わった。会話もハルからしてくれない。・・・話しかけても目が合わないし」


 これは・・・相当嫌われてるね。そうでなくてもだいぶアレだ。

 もしアタシを助けてくれようとした男に目の前で漏らされちゃったらどう言葉かけていいか分かんないよ。自分から近付いてこないだろうから、どっちからも話しかけられないし。どうしようもないよ。



「しかもその後意識がなくなってる時にべっちょべちょの服を着替えさせてくれたのもハル。全裸も見られたわけで」

「うわあ」

「その後だったかな、ハルのために渡した金も全額突き返されちゃったし。そうだよね。小便垂れの汚ぇ金だもんな。受け取りたくないってのも分かるよ」

「しょん・・・、嫌われるどころの話じゃねえな・・・」

「・・・・・・だよな」

「あっ悪ぃ、そういうつもりじゃ」


 牢屋の壁で姿が見えないけど、すっごいため息。絶対落ち込ませちゃった。

 ごめんカケル、ゴメンね。そういうつもりじゃなくて。なんとかして励まさないと!


「じゃ、じゃあなんで一緒に旅してんだ?」

「多分俺がハルの借金を返して村から解放したからだと思う。そんな恩かけちゃったからハルを縛っちゃってるんだろうね。当初の目的は遥礼ヨウライに行くって事だったけど、あんなことがあったんじゃあなぁ・・・」


 はぁあ、と大きなため息が聞こえた。ダメだ、励ませらんない。


「維江原に着いて、リョウの薬の手配が終わって全部荷が下りたらお役御免だよ。案外、こうして捕まってるのをハルは気にしてないかもな。"リョウはかすがい"だったってことだね」


 それっきり黙るようになって、それから脱出するまでカケルと多くは交わさなかった。




 そして、数日後なんとか地下牢を脱出して維江原の宿屋に戻ってきたアタシたち。

 宿屋で待っていたハルちゃんは――、


 勢いよく抱きついてカケルの帰りを迎えた。



 あれ?


 ハルちゃんはカケルの事を嫌ってるはずだったんじゃないの?


 あれ?


 なんで抱きついてんの?ええ?




 ・・・いろいろとおかしいな。

 嫌いだったら抱きつくなんてこと絶対しないし、煤で汚れたカケルの服も風呂の隙にいそいそと洗いに行かないよな。


 これ・・・



 カケル一人の誤解なんじゃないのか?



 それにしては材料が揃いすぎてるけど、当事者じゃないからな――




 ひょっとしてこれ・・・両想いなんじゃないの??




 うん――、そう考えてみると・・・、一応の理由はつくか。カケルの推理は十分分かるけどでも、傍から見た分かりやすいことでも自分の事には鈍感になるみたいなことわざあったよね、なんかこう、あれ。・・・まぁいいや。そういうやつだと思う。


 それでもしアタシの思ってるようなことがそうだとすれば、アタシが手伝ってやらないとな。

 死にかけたけどフウタ達が来なかったことを考えてみると自力脱出できたのはカケルのおかげで、あいつに命助けてもらったようなもんだからな。ちゃんとお礼はしないとな。


 でもこれ、かなりややこしいことになってんな。


 ハルに抱きつかれたときはまぁまぁな顔してたけど話の途中から一気に顔色変わって落ち込んだから、カケルにしかわからない事情があるんだろうな。なにがあったんだろう。俵の中に隠れてた時も漏らしてたって訳でもなかったよな。汚れるようなこともしてないし・・・アタシの俵は臭くなかったぞ。カケルも大丈夫だと思うけど・・・




 どうしよ。


 思ったより厄介だなあ。カケルとハルちゃん。一筋縄じゃいかないわ。お互い素直になれればいいのに。


 よし!タイミングを見てどっかでセッティングしてやろう。

 アタシが二人をうまーくくっつけちゃったりしてあげちゃおうかな!



 センリはそう考え至るとスッキリした表情で眠りについた。

 快眠快眠。

評価・ブクマ・感想やご意見などお待ちしております。


19/6/23 加筆訂正・スペース改行追加等レイアウト修正

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