16 脱出2
毎週金曜投稿(ストック次第で可能なら月曜も投稿)予定です。
地下牢に囚われていたカケルとセンリを脱出させるべく潜入していたフウタとタク。
猛獣剣闘の順番が回って殺されてしまう前に無事二人を救出した後、行きとは別のルートから地下牢を脱出した。
カケルらが囚われていた地下牢には複数の出入り口がある。
猛獣剣闘の際に使われる闘技場口、最初にザノとカケルが邂逅した際に使った領主館口などがあり、フウタ達はそれとは別の出口から脱獄した。
一キロ程度の地下道は人一人分しか進めないほどの狭さ。
(ザノが有事の際に領主館から脱出できるよう、領主館口と繋がる地下牢からさらに外部に向けて抜け穴を新造させた地下道。双方向からの侵入は想定していないため狭く暗い。)
脱出口の地下道を進み、突き当たりに梯子のかかった縦穴から抜け出すと木造の小さな物置小屋の中に出た。
四人全員穴から出ると小屋の扉を数センチだけ開けてからそーっと外の様子を窺う。
周囲には誰もいない。
細い路と、少し離れた距離に数軒の小さな家、あとは草原のみが広がっている。どうやらこの地下道は町の外に繋がっていたようだ。
新鮮な空気。燦燦と輝く太陽。
数日振りに地上に帰ってきたカケルとセンリは感動の中背伸びをして澄んだ空気を大きく吸い込む。
「ふう・・・!外だ・・・!!」
「安心するにはまだですよ、明るいうちに行きましょう」
そう言うフウタの発言に確かにそうだと納得した。
三ヶ所の出口がある以上、気付かれるのは時間の問題。ここはまだあちらの勢力圏であり安全地帯ではない。フウタは三人を率いて早々にその場を後にした。
小屋から出た俺達は早足で野道を進む。先頭はフウタ。後の三人は固まってそれに続く。遠目から見つからないように身をかがめながら進むが、足を止めずにそのまま今後の身の振り方を話し合う。
「仕方ありませんがここは町を脱出しましょう。仲間をここに呼び寄せて次の町に―――」
「いや、それは駄目だ」
「え?何故ですか?」
「なぜ?なぜってそりゃあ――」
ムカつくからだよ。
俺は何もしてないのに捕まったんだよ。言ってみれば不当逮捕。拉致監禁だよ。
しかも(俺が火をつけたとはいえ)死にかけたんだぞ?そうでなくても元々俺を猛獣剣闘にけしかけて殺す気だった。さすがにこれは許さない。許されないし、許す気もない。誰かに殺されなきゃいけないほど恨みを買った覚えはないぞ。ホントに。
「ま、まぁカケルさんの言い分も分かりますが――」
「ホントだよなぁカケル!!アタシは人助けしたってのにああだよ!許さねェ!!」
ひったくりを捕まえただけなのに莫大な賠償金を吹っ掛けられた上逮捕されたセンリからは、とても熱烈な同意を頂いた。揃ってザノにはお冠だ。
「センリさんまで・・・」
「フウタ君には分からないと思うけどな、冤罪ってのはメチャメチャ腹立つぞ」
「そうだぞフウタ!!殺されかけたんだぞ!!」
「ええ・・・?」
「君もいつか冤罪で捕まってみるといい。きっと今の俺たちの気持ちがよく分かる」
「フウタは何で捕まっちゃうかな~。ん~大泥棒かなぁ、一億エルくらいの金塊盗んじゃったりとかしてさ」
「かなり重いですよ。どうやって盗み出すんですか」
フウタ、謎の集中砲火。横からはタクの落ち着いた問いが挟まれる。
「それはそうとして、どうするんです?兄さん」
「そんなの・・・当たり前だろ?なあ」
「ああ」
「え?まさか――」
「「ぶッ壊すに決まってんだろ!!」」
綺麗にハモった俺とセンリは笑顔で見つめ合い、ガッシと固い握手を交わした。口をあんぐりと明けたタクは言葉を忘れ、フウタは思わず足を止めて振り返った。
「ちょっと何言ってるんです!ダメに決まってるでしょう!ぶっ壊すって何をするつもりなんですか!これ以上の騒ぎはやめてくださいよ、普通に町の外に逃げた方がいいですって!・・・タク君も何とか言ってよ~」
「――兄さんが決めたなら僕はついていくだけです」
「タク君・・・」
「あとはアンタだけだぞ?フウタァ。だいたい鍵はともかくあんな書類も見つけてくっからこうなってんだからなぁ?フウタく~ん?ね~えフウタく~ん」
センリは流し目をしながらいやらしく後ろからフウタに纏わりつくように抱きしめなでくりまわす。良いようになでられまくってるけど、どうしたそんなため息ついて。そんな目で俺を見るんじゃない。
書類は先程フウタに見せられて俺とセンリは把握済みだ。タクは既に最初の段階で見ていたようだ。なんでも牢番の控室みたいなところにあったもので、机や棚を開け放ちひっくり返しで見つけたものだそうだ。片付け大変だろうなぁ・・・。まあでもそれだけにこいつはなかなかヤバいブツだ。よくあんな切羽詰まった状況で金と刀と鍵の他に盗み出せたもんだ。鍵は必要なかったんだけどさ。
センリに散々ワシャワシャされた髪を力ない手つきで整える。抱きつかれるのはもう甘受したようで、早々にフウタは折れた。
「もう!わーかーりーまーしたーよ!!やりますよ!やればいいんでしょう?そう言わないと納得しないんでしょう二人は!」
「おう、決まりだな!!」
「よっし!」
ニカッと笑ったセンリにまたもワシャワシャと髪をかき回される。
「直したのに・・・」とため息をついて諦めた様子のフウタはドリルの様に頭上で暴れるセンリの手を振り払うのは無駄とそのまま身を預けた。
フウタよ、どの道センリに良いようにされちゃうんだな・・・。
「・・・二人って兄弟はいるの?」
「兄と姉が一人ずつ・・・」
「アタシはこれでも長女だぜ!!」
「あ、長女なんだ」
・・・なるほどね。把握。
俺達が抜け出たのは維江原から程近い村。
村と言うには小さすぎるほどで、家も数軒しかなく本当に人が住んでいるのか分からないくらいに存在感がない。きっと小さすぎて地図には載らないような村なんだろう。
維江原からは距離にして数時間程度。
ここから俺たちは維江原に向かって進む。
脱出口を使って抜け出たのは遅かれ早かれバレる。
普通ならここから遠くに逃げるんだろうけども、俺たちはその裏をかく。維江原から脱出口を使って逃げたやつが維江原の中にいるとは思わないよな。灯台下暗しってやつだ。
これの発案自体はフウタである。
遠くに逃げると見せかけて近くに潜伏して追跡をかいくぐるヤツは映画とかでよくあるトリックだから、俺もそういう事は考えてたぜ。うん。ホントに。
もちろんメインの目的は"ぶッ壊す"。
猛獣のエサにさせられかけた俺たちは腸が煮えくり返っている。無理矢理捕まえられたし、何の罪状で捕まったかもそもそも分かっていない。
領主ってのはそんなに偉いのか?
自分勝手。
傍若無人。
唯我独尊。
揃って監禁されて殺されかけた俺たちは「お気になさらず。大丈夫ですよ」と笑って許すほど人間は出来ていない。俺は左手で黒刀の柄を握りながらいかり肩で歩いてるし、センリは指をパキパキ鳴らしながら突如飛び出して膝蹴りを空に放っている。
「ふ、二人共。あんまり目立つような行動は・・・」
「うっさい!」
「っさい!」
ウォーミングアップはバッチリだ。
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19/6/22 加筆訂正・スペース改行追加等レイアウト修正




