一人
「クダリ、お前も男なんだ。一人で良い子にできるな?」
ブリント父さんがそうやって僕の頭を撫でながら笑顔で言った。
うん、大丈夫だよお父さん。
「心配かけてしまうけど、お母さんたちも一週間以内には帰って来るからいつもどおり畑仕事をしてまってて頂戴ね。」
メアリー母さんが申し訳なさそうな顔と、微笑んでいる表情が混ざったような顔で僕にそうつげた。
わかったよ。お母さん。二人ともいってらっしゃい。
「おう」「ええ」
「「いってきます。」」
お父さんとお母さんは国からの要請でドラゴンの討伐に行く羽目になったらしく昔の仕事着を着てた。別れの挨拶を済ますと、お母さんとお父さんは出掛けてった。
これが、俺が見たお父さんとお母さんの最後の姿だった。
それから数年後
クダリは、村の隅の畑へ追いやられ自分の畑と少ない家畜で慎ましく生きていました。
父と母が帰って来ない日々が続いたある日、村長から「お前の親は村に貢献していたが、お前は何も出来ない。」と言われ理不尽に畑を搾取されてしまった。
休耕地用の畑が消えてしまったので狭い畑で休耕地を作らないといけないのでクダリの生活は楽ではなかった。
「はぁ……今日も疲れたなぁ。」
クダリは、晩御飯を食べながらため息を吐いてました。
「転生して早八年まさかこんな事になるとはなぁ……。」
そう言うとクダリは、父と母が居た頃のことを思い出していた。
父と母そして自分と言う三人で畑作業をしながらまったり生活をする……しかし、クダリの親は冒険者だったのだ。
二人はドラゴンも目撃情報が出たので、討伐に出かけそれっきり帰ってこなかった。
待てども暮らせども帰ってこない親に、クダリはずっと胸が張り裂けそうな思いをした。
そして、同時に後悔もした。
「俺がもっと強かったらお父さんたちについて行けたのに……。」
クダリには、戦闘する能力が人並みにしかなかった。
魔法も基本的なものしか使えない。
平凡な少年だった。
綺麗な黒髪を除いては。
この世界では黒髪は珍しい人種と言う風に扱われる。
「……今日は、もう寝よう。」
晩御飯を食べた後、クダリは、明日に備え床につくのであった。
次の日、日課の畑仕事をして村長の家に向かった。
クダリの住んでいる村は最寄りの町から少し離れた位置にある農村だ。山の傍にある場所なので国境に近いわけではない。
そんな田舎の村であるクダリの住む村では村長の家に数冊の本が、あるだけだった。
転生する前の頃、読書が好きだったクダリは、村長に頼み本を見ながら字の勉強をした。
クダリは、今でこそ読書を楽しんでいるが最初は焦っていた。
なぜなら、この世界で黒髪は黒髪の一族と言う民族が居て、誰もがとても綺麗な黒髪を有していると言う。
そして、その美しい黒髪のせいで奴隷狩りされることがある。
クダリは、村長や村から奴隷商人に売られないように知恵を付ける必要があった。
少しでも売られる可能性を減らすため村の雑用なども進んでうけた。
毎日疲れているのはそれが原因だったりする。
こうして読書をしつつ村でこき使われたクダリは夜に思いっきり寝ると言うサイクルで生活するのであった。
しかし、黒髪の一族は、自分達が治める国がある。
村から逃げ、黒髪の一族の国へ行けばいいのに、なぜ行かないのか。
それは、親が何時帰って来てもいいように、ずっと待っているのだ。
奴隷となれば、買い手により様々な扱いを受けるようになる。
しかし、クダリは待ち続ける。
いつか二人が帰って来ると信じて。