3.『トロッコ問題』②
「なら、私は線路を切り替えます。」
「理由を聞いても?」
「功利主義──その行動によってもたらされる利益、みたいな意味でしたよね。
1人を殺す選択をすれば、5人を救うことができますから。
まぁ、私の場合はどちらを選んでも後悔はするのでしょうが、それならばその時に私の心を蝕むものが少ない方がいいという自己的な考えですがね。
もしも、その1人が私の知る人物だったりしたならば答えは変わりますが。」
「なるほど。確かに。
チセの言うとおり、貴方の選択は功利主義ならば『許される』事です。」
「では、教授は?」
「そうですね……私ならば、何もしないでしょうかね。
トロッコ問題において功利主義のついとして上げられる義務論というものがあります。
これに基づくと、他の目的の為に、つまり5人を救う為に1人を殺すことは『許されません』。
そして私個人の考えとしてはチセの逆で、私が関わらなければ死ななかった1人、という点ですね。
もしもその場に私がいなかったのならば、というふうに考えました。
まぁ、私もチセ同様、その1人と何らかの関係があったならば変わるでしょうが。」
「視点によってここまで変わるのは……難しいですね……」
「そうですね。あぁ、もうこんな時間です。では、今日はここまで。
明日はこの『トロッコ問題』の派生についても話しましょうか。」
「ありがとうございました。また、明日。」
「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。また明日。おやすみ」
「おやすみなさい。」
こうして私の一日は終わる。