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第6話 m9(^Д^)

 【ダークブルー】に投げ飛ばされた機体が目の前の別荘を破壊し停止した。

 シュー、と何が漏れ出しているのか分からない音が響き、次に機体の至る所から煙が漂い出す。私は間髪入れずに機体へ走り出していた。


「お嬢様! なりません! 危険です!」

「ロートスは車を回してちょうだい! すぐに離れる準備をお願い!」


 私はロートスにそれだけを言って、機体へ近づく。それは好奇心ではない。不穏な音は過去に聞いた事のある音だったからだ。


「かなり古い『パースロイド』ね」


 飛ばす事だけを考えられた設計。外から見てもバランサーは最悪で操作性は酷いモノだろう。故にコックピットの衝撃保護がパイロットに対する考慮が出来ているか不明だ。


「緊急開放ボタンは同じね」


 基礎骨格は全『パースロイド』共通なので、ある程度のボタン配置は通じるモノがある。

 機体は機能停止しているが緊急開放ボタンは僅かな電力で開く為、問題なく動くハズだ。


「……開かない?」


 しかし、古いからか、または落下の衝撃で故障したからかボタンを押しても反応はない。

 私はボタン周りに亀裂が入っている様子を確認し近くに落ちた金属片で無理やりこじ開ける。すると、内部からあふれる煙に呷られた。


「うっ……ゴホッゴホッ!!」


 思わず吸ってしまったが、ハンカチを口に巻いて、涙目ながらも配線を確認する。中の配線の束は落下の衝撃で圧迫された事で断裂されていた。


「6世代前の配線配列ね……」


 機体の世代さえ分かれば繋ぎ直す事は難しくない。煙を避けるように細目にて作業しつつ、素手で配線を繋ぎ直す。そして、改めて緊急開放ボタンを押す。

 ガシュ、と胸部ハッチが開放され、その中から煙が吐き出てくる。


「っ!」


 私は即座に胸部ハッチの前に回る。

 機体にアプローチしたのは好奇心からじゃない。パイロットに救助の必要があるならすぐに対応しなければならないと思ったからだ。機体の腕部は『エネルギーライフル』を持っている。

 ハッチの中――コックピットを覗くとそこには……


「子供……?」


 年齢的には16歳前後の少年が横たわっていた。額から血を流し、気を失っている。その感に煙を吸っていたのならかなり危険な状態だ。

 私は彼の手をつかんで引っ張り出す。小さな彼の身体は軽く、健康の為に基本的な運動しかしない私でも簡単に引き出せた。

 肩を回し、共に機体から降りる。


「お嬢様!」


 ギュイっ、と敷地内を専用で移動する小型車を寄せてきたロートスの元へ私は彼を運ぶ。その時、背後でバチバチと火花が鳴り、液のようなモノも漏れ始めていた。

 彼を後部座席に乗せ、その横に私も座る。



「出して!」

「とにかく離れます!」


 小型車が走り出し、数分後――機体は炎に包まれると小規模な爆発を繰り返し崩壊を始めた。それが『エネルギーライフル』へも影響を及ぼそうとした所で、


『――――』


 いつの間にか寄ってきていた【ダークブルー】が“蒼の軌跡”を纏いながら手をかざし熱を抑え込む。


「アークライトの敷地に落とすなんてね。御父様は許容したのかしら?」

「お嬢様! それよりも、先ほどの無茶はあまりにも危険すぎますぞ! 下手をすればお嬢様も炎に巻かれていた可能性もありましたでしょう?!」


 ロートスが運転しながら私の行動を注意してくる。


「人命が最優よ」

「お嬢様の命も人命です! それにハッチを開いた瞬間にパイロットより危害を受ける可能性もありました! 突発的に動き過ぎです! お嬢様の身に何かあれば……このロートスは死んでも悔やみきれませぬ……」

「……そうね。軽率だったわ。ごめんさない。次からは気をつける」


 ロートスが心からこちらを心配しての発言だと言うことは理解している。結果的に良かったとは言え、流石に警戒心が無さ過ぎたわね……


「わかっていただけたのならば、この件に関しては私の中で留めておきますぞ。とりあえず少年の治療ですな」

「ええ。屋敷へ医療スタッフを手配して頂戴」

「かしこまりました」


 その時、私は上空を透明化した【リベリオン】が通過した事に気が付かなかった。






「お父さん……来たよ」

『機体の消火は完了した。コックピットは調べられるか?』

「ん……焦げ臭い」

『さっきまで燃えていた。熱は消したが、匂いが消えるまでは時間がかかる』

「調べる。…………ダメ、回路もチップも全部燃えてる。動かない」

『メイン端末はどうだ?』

「……こっちもダメ。端末、焦げてる。持って帰っても機能しない」

『ブラックBOXがある筈だ。それは火災程度では損傷しない』

「まって……あった。うわ!?」

『! どうした!?』

「……びっくりした……バネの玩具になってる。むかつく……」

『怪我はないか?』

「ない……ブラックBOXも玩具に改造されてて……奥に何か書いて……』

『どうした?』

「これ……書いてあった……」


 “m9(^Д^)”


『……どう言う意味だ?』

「こっちをおちょくってる……くそむかつく」

『機体からは情報は得られないか。パイロットを確保するしか無さそうだな』

「さっき……レイチェル様とスレ違った」

『先に行って搬送先を特定しておきなさい。ワタシはデューク主席に引き渡しの交渉を行う』

「わかった。引き渡されたら……そいつ一発撃っていい?」

『場所を特定したらワタシが行くまで待て』

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