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Мake the call  作者: 古河新後
1章 地下技術(アンダーラウンド)

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第42話 ケツを焼かれる前に退却するぞ!

「やっぱり、こっちにも出たみたいだね」

「あ、アニキー!」


 僕は二人の無事を確認し、近くで頭が吹っ飛んで倒れているロボットを見る。まぁ、近接戦闘でディンに攻撃を当てるのは腕が2本じゃ足りないのだ。


「ケガない?」

「ないよ。お前は?」

「無傷! じゃなくて、ちょっとかすった」


 ディンは持ち前の反応速度からギリギリまで敵を引きつける癖がある。もうちょっと搦め手を意識してくれれば安定感があるんだけどなぁ。


「アニキ、フツーに来れたの?」

「ん? ああ。隔壁は開放されてたよ」


 レイチェルさんとディンの所に戻る道は思ったよりもスムーズに行った。このロボットが通る為なのか、隔壁は全て開放されている。


「ヴァン、無事そうね。ディンも、ちょっと私の話を聞いてくれるかしら?」

「どうしました?」

「なんか見つけた?」

「ええ。貴方たちさえ避ければ先に進みたいのだけれど」


 ディンが倒したらしきロボットを調べていたレイチェルさんがそう提案してきた。

 確かに隔壁が開いている今はチャンスではある。しかし……それ以上にこのロボットの脅威は無視できるモノでは無い。


「レイチェルさん。ここは一旦退却した方が良いです」

「俺はまだまだ行けるぜ!」

「お前はちょっと黙ってて」


 僕とディンの様子にレイチェルさんは、クスリ、と笑う。


「確かにリスクはあるけど、今の状況は唯一、全てを丸く収めるタイミングかもしれないの」

「どういう事ですか?」

「あなた達が倒した『アーミー・ドール』は恐らく、この艦内における防衛システムよ。艦の規模を考えれば100体以上は居る可能性がある」

「100!?」

「流石にソレは捌けませんね」

「低く見積もってその体数よ。全機が起動して今も侵入者の排除に動いているのなら後に動力部を調べる事はほぼ不可能になるわ」


 今、安全に脱出したとしても、次の侵入には相当な抵抗が予想される。『ウォーターバック』の件を含めると、この調査に時間はかけられず確実に終わらせないといけない。

 無理やりでも突破する必要が出てきたら死傷者を覚悟しなければならないだろう。


「でも、隔壁が開いている今のタイミングなら一気に管制室まで駆け抜けられると思う」


 レイチェルさんが通路の奥へ視線を向ける。


「最短距離は分かりませんしそれ相応の距離があります。管制室に向かう程に『アーミー・ドール』の妨害も増えるハズです」

「私も無茶を言ってるのは百も承知よ。でも、現実的に貴方たちがいれば突破する事は難しくないハズ」


 僕とディンの戦闘力を見た上でのレイチェルさんの考えは悪くないとは思う。しかし決定的な問題がある。


「管制室に行っても100%、『アーミー・ドール』を止められる保証がありません。そのまま袋小路に入ったら僕たちが死にます」


 突破しても『アーミー・ドール』は追いかけてくるだろうし、艦内全ての『アーミー・ドール』は管制室に殺到するだろう。そうなったら完全に終わりだ。


「もし、命令を書き換えられるとすれば?」

「どう言う事ですか?」

「これを見て」


 すると、レイチェルさんは倒れた『アーミー・ドール』のうなじ部分に刻まれた刻印を指摘する。


「これは“アークライト”の刻印よ。それで小さい頃にお祖父様から聞いた話を思い出したの」

「どう言う話です?」

「かつての“アークライト”は軍人の家系だったの。資産を惜しみなく投じて、兵器の開発に注視してたそうよ。でも『終焉戦争』で軍属だった者は殆ど亡くなって、莫大な資産の大半も消失。戦争後に『スカイベース』へ移り住んでからは軍属に拘らなくなって何とか資産を積み上げたんだって」

「って事は……どういう事?」


 ディンの頭じゃ理解が出来なかったので、レイチェルさんが補足する。


「『アーミー・ドール』に“アークライト”の刻印が刻まれてるって事は、この『戦艦』に対するスポンサーか、もしくは重要な役職で乗ってた可能性が高いわ。もし、そうなら私の言葉に従う可能性があるかも」

「スゲー! アニキ、行けそうじゃん!」


 ディンはレイチェルさんに賛同しているみたいだけど、僕としてはまだ命をかける要素としては弱いと感じている。


「レイチェルさん。それでも――」

「そして、もし今の仮説が全部間違ってた場合でも『アーミー・ドール』を全て破壊できるとしたら、私の案に乗ってくれる?」






「熱ちち!」

「下がれ、下がれ!」

「クソが!」

「道具は捨てろ!」

「ふざけやがって!」

「筋肉が役に立たねぇ!」

「火炎放射は卑怯だろ!」

「嬢ちゃん、聞こえるか?! 妙なヤツが出た! こっちは火に巻かれて退却してる!」


 ボルスティンは無線に叫びながらレイチェルへ『アーミー・ドール』の襲来を告げる。


 彼らは奥から現れた『アーミー・ドール』の火炎放射に成す術も無く後退していた。足止めをしようにも近づけない為に筋肉をぶつける事が出来ない。

 すると、無線に返答が入る。


『ボルさん』

「ヴァンか?! 入り口付近はギリギリまで持ち堪えて、固めとく! お前らも引き上げて来い!」

『ボルさん達はそのまま艦内から脱出してください。無理に残るとワラワラ出て来ますよ』

「お前らはどうするんだ?」

『僕たちは管制室に向かいます。全部一度に終わらせられる可能性が出てきましたので』

「おい、それは確実な作戦(モノ)なんだろうな?」

『少なくとも、その火炎放射を噴いているヤツは全滅しますよ』

「なら任せるが、無事に帰ってこいよ」

『はい。リグ姉さんに現状の報告をお願いします』


 それを最後に通信が切れた。移動を開始したのだろう。


「野郎共! ケツを焼かれる前に退却するぞ!」

「レイチェルちゃんはどうするんすか!?」

「俺は見捨てませんよ!」

「ファンクラブ会員1号として絶対に助けに行く!」

「なにどさくさに1号になってんだテメー!」

「言ったもん勝ちなら俺が1号だ!」

「そもそも、“ちゃん”づけする程親しくねぇだろ!」

「アホ言ってねぇで、さっさと行け! ボケ共!」


 ボルスティンは殿を努めつつ部下7人を蹴り進ませると、来た道を戻り、最後に侵入してきた外装扉から脱出する。


「ヤツが外まで追いかけてきたら、囲んでタコに殴りするぞ!」

「「「「「「「うっす!!!!!!!」」」」」」」


 外に置いてあったピッケルやら鉄材やらを武器として振り回せる筋肉で掴むと、『アーミー・ドール』の追撃に備えた。

 先ほどは狭い通路だったので炎を壁に成す術も無かったか、拓けた空間なら存分に筋肉を振るえる。


 すると、外装の向こうに『アーミー・ドール』が姿を現した。しかし、外までは出て来ず、分析する様に顔部を逆Y字に開く。


『侵入者。艦内離脱……優先事項更新――』


 そして顔部を閉じると、ヴァン達が進んだ方へ歩いて行った。その様子に男たちは、ふはぁー、と緊張を吐き出す。

 ボルスティンは部下に警戒を続ける様に告げ、外の無線を手に取ると周波数をリグレットに繋げる。


「リグレット、居るか?」

『居るわよ。ボルさんって事は……そっちにはヴァン達を送ったけど『戦艦』の調査はもう終わったの?』

「いや、少し変な方向に傾いた」


 ボルスティンはこれまでの経緯とヴァン達がやろうとしている事をリグレットへ伝えた。

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