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第4話 スペシャルVSスペシャル

 【ダークブルー】は『スカイベース』の下部を飛ぶ【ジャンクS】を追いつつ、射角を調整する。


 『エネルギーライフル』の総弾数は5発。連射は出来ず、一射ごとにチャージが必要となる。

 手間とコストを考えれば実弾の方が良いと言う話が多いが、ソレを補う程の貫通性と無反動がある。


 精密射撃姿勢が可能であれば一射で一機堕とす事は不可能ではない。そして、ソレが可能なのが【ダークブルー】だった。


『ソレを1弾倉(カードリッジ)使わされるとはな』


 エネルギーを安定させる信管は一発事に使用不可になる。使い切った弾倉を外し、新たな弾倉を装填する。

 そもそも、『エネルギー兵器』自体が機密扱いの代物。にも関わらず【ジャンクS】はソレに対応する機器と装備を携えていた。


 明らかに『スカイベース』の機密が漏れている。その為、機体とパイロットは確実に回収し、情報を得なければならない。


『有限の底はそちらが早いぞ』


 【ジャンクS】は『飛行機関(ジェットエンジン)』を長時間使用する為に燃料タンクを背負っている。


 ならば狙うのは消耗戦。背部のタンクの積載量を見るに高機動を続ければ続けるだけ、燃料の消費も早いだろう。

 『スカイベース』に入らない様に牽制しつつ、『エネルギーライフル』で敵の攻撃力を削ぎ、鹵獲する。


『僕でもそうするよ』

『――なに?』


 【ジャンクS】の後を追う【ダークブルー】は回避行動を取る。何故なら、【ジャンクS】の装甲板が剥がれる様に飛来してきたからだ。


 一層、二層、と【ジャンクS】の身体は装甲板を解除(パージ)し、仰向けに姿勢を変えると上体を僅かに起こして【ダークブルー】を視認。

 装甲板の下に内蔵されていた火器を一斉に放ち始めた。


『器用だな』


 パージされた装甲板の雨を避けつつ、【ダークブルー】は上昇し弾幕の射線より離脱。『スカイベース』の下部ギリギリを飛行する。


『いいの? 当たっちゃうよ?』


 【ジャンクS】はその【ダークブルー】を追うように姿勢を斜め下へ移動させながら射線を上へ向ける。


『気にするな。この程度の小粒、『スカイベース』にとって石を投げる様なモノだ』

『じゃあ、僕たちは石の裏にいる“虫”ってことかな』

『“虫”はお前だけだ。ワタシは全てを管理する』

『感謝で反吐が出るよ!』


 【ダークブルー】は『エネルギーライフル』を構えない。このままの【ジャンクS】の機動では……


『ホントに面倒だなぁ』


 負荷のかかる重力と距離が開いていく関係から射撃を停止し、姿勢を戻さざる得ない。

 【ジャンクS】は背面による斜め下への降下から、縦に弧を描き、姿勢を整える。しかし、ソレは必然と、


『こちらに背を向ける』


 その背中へ【ダークブルー】が追従すると同時に【ジャンクS】の状態を分析――


 反射シートの装甲板はかなり減っている。故に今、姿勢制御を取っているのは四肢。その内を一つを破壊するだけで、機体バランスは大きく崩れる。


 『エネルギーライフル』を構える。チャージ開始。狙いは脚部。命中率100%――


『もう一度言うよ。僕でもそうする』


 搭乗者は笑う。あまりにも【ダークブルー】の動きが予定通り過ぎたからだ。故に――


『なに?』


 『飛行機関(ジェットエンジン)』を停止し、燃料タンクを捨てた。

 唐突な減速に『エネルギーライフル』は【ジャンクS】の肩部を掠める。


『回避の為に機動力を全て捨てるか』


 『飛行機関(ジェットエンジン)』の停止により落下を始める【ジャンクS】。ソレを直接的鹵獲に向かう【ダークブルー】が追うように近づく。


『そっちと違って、こっちは色々とマニュアルでしね』


 次の瞬間、『飛行機関(ジェットエンジン)』が再起動。回るタービンの音と生まれる熱エネルギーを的確に検知。上昇を始めるが、速度が生まれるまで時間がかかる。


『終わりだ』


 警戒すべきは【ジャンクS】の腕部に持つ『ガトリング』だ。それがこちらに向けられていない以上は接近しても問題は無い――


『分析の得意な君なら。僕が何を狙ってるのか分かるかな?』


 『ガトリング』の銃口は――落下する燃料タンク。

 被害推定――


 【ダークブルー】より漂う粒子が“赤”から“蒼”に変わった瞬間、『ガトリング』による射撃が燃料タンクを撃ち抜き――


『うっおっと!』


 大爆発。

 発生する衝撃波により、【ジャンクS】は大きく上部――『スカイベース』へ向かって加速を得る。

 コックピット内では武装の喪失や高熱源に対する警報がオールで鳴り響くも、モニターには本来予定していた通気シャフトが近づいていた。


『彼は逃げたかな?』


 どっちしろ『スカイベース』へ無視できない被害が生まれる。僕はその騒ぎの間に色々と目的を果たさせて――


 その時、ふと思った。


「?」


 爆発の光が消えない。

 モニターを後ろに向けると、あり得ない光景を見た。

 遥か後方にて炸裂した燃料タンクの爆熱を掴むように(・・・・・)両手で抑え込む【ダークブルー】が居たのだ。その姿は蒼色の軌跡に包まれている。


『……それってどう言う状況?』

『お前の操作技術が“熟練(スペシャル)”である様に、ワタシも“特別(スペシャル)”であると言う事だ』


 膨張しかけた爆熱は次第に【ダークブルー】の手の平までに縮められていくと、完全に握り込まれるまでに縮小し――開かれた時には一つの“小石”となって落ちていく。


『君、オカルト混じってるじゃん!』


 思わず苦笑い。アレも技術の粋か?! 理解が全く追いつかない。


 通気シャフトを誤認信号で開放し、『飛行機関(ジェットエンジン)』の速度を上げ、【ジャンクS】は開ききる前にその中へ高速で入り込む。


『逃がさん』


 【ダークブルー】はその【ジャンクS】に向き直ると、『飛行機関(ジャナフ)』の機動力を最大にし通気シャフトへ追走を開始する。

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