第39話 頼もし過ぎるっす!
侵入者アリ……
緊急排除プロトコル始動……
『キップ・ドール』1機ロスト……脅威度――強
侵入者反応――
1区画……2
4区画……3
動力部……8
『アーミー・ドール』8機起動……脅威ヲ排除シ、艦長命令ノ更新マデ現状保全……
侵入者ノ捕縛ハ必要ナシ――
壁に埋まるように取り付けられた電灯が艦内の廊下を明るく照らす。
僕たちはそれぞれ背嚢を背負い、それにはリグ姉さんの弁当と最低限の仕事道具を持って来ていた。(ディンに関しては重箱が入るリュックバックと無線機)
少しホコリ臭いが変わり映えのしない真っ白な廊下を問題なく進み、ボルさん達がパワーで破った部屋(多分金庫)を軽く覗き、特に何もなかったので先へ。
念の為、腰にはライトを吊るし、灯りが消えた時も慌てず行動できる様に準備は整えてある。
「なんか警戒システムは平気そうじゃん」
「そうね。ライトも赤色の警告色になってないから、今は平時みたいな扱いかしら」
「それでも、油断はしない方向でお願いします」
何となくだけど……少し心がザワつく。かなり広い『戦艦』だ。何を積んでいて何を搭載しているのか分からない以上、まだ見ぬナニかが飛び出してくる可能性は十分にある。
「ここが行き止まりか」
ボルさん達が先に行けなかった例の隔壁を見つけた。僅かにピッケルを打ち付けた跡があり、途中で断念したみたいだ。
「レイチェルさん。何とか出来ます?」
「ちょっと待ってね」
と、レイチェルさんは隔壁ではなく、近くの壁へ視線を向けた。すると、壁と同化に近い形で蓋がしてあったパネルを見つける。
「この手の隔壁は場の人間でも開けられる様に個々で独立した配線が設定されてる場合もあるの」
「へー」
パネルは0から9までの数字が振られたボタンが設置されている。その下にはレバーがあった。
「でも、暗証番号もセットよ」
「レイ姉でも無理かー」
「でも、この手の隔壁は――」
次にレイチェルさんは周囲を調べ始めた。
僕は隔壁を軽く叩いて壁の厚みを測るけど、返しの振動が殆どない。かなりの厚みがある様だ。となれば、ここで疑問が浮かぶ。
何故、隔壁が閉じたのか?
ボルさん達が侵入した時に閉じたならまだ理解できる。けど、既に閉じた状態だったから、僕たちが見つける前――この『戦艦』が動いている時期に脅威の侵入に対して隔壁を閉じたと言う事だ。
遺体はあったそうだけど荒々しい襲撃があったとは思えない程に床や壁は綺麗。となれば……内部に敵を招き入れた……のかな?
「ヴァン、ちょっと良いかしら?」
「何です?」
僕はその考えを一旦切って振り返るとレイチェルさんとディンは天井を見上げていた。その視線の先には通気ダクトの入り口が見える。
「あのダクトを通じて向こう側に行けるかしら?」
「行けると思いますけど、隔壁の開け方はわかりませんよ?」
「もしも、向こう側にこのパネルと同じ端末があったら下のレバーを同時に引くことで隔壁は開くハズよ」
レイチェルさんが言うには、パネルによる暗証番号は一方から開くために、レバーは両側の同意が成立したら手動で開く為の物であると説明してくれた。
「じゃあ、ちょっと行ってみます。ディン」
「おっけー」
金を見つけた部屋で適度な乗り物を見つけて、ソレを台替わりにディンが乗り、その妹の肩に靴を脱いで僕は立つ。
手を限界まで伸ばしたらギリギリ、ダクトの入り口に届いたので工具を使って網を外し、そのまま手を伸ばして入り込んだ。
「靴」
「ほい」
ディンに靴を投げてもらい、二人を見下ろす。
「向こう側に着いたら合図します」
「わかったわ」
「ディン、レイチェルさんをちゃんと護るようにね」
「おう!」
僕は靴を履いてダクトを進む。埃が凄くて、服が汚れるのがちょっと嫌だな。
「本ばっかだな。しかも、全部ボロボロ。宝石とかねぇのかよ」
「キャプテン、こっちに地図があります」
「どれどれ……どうやら、この辺りは艦の先頭付近か。管制室が近いな」
「行ってみます?」
「いや、居住区の方に向かうぞ」
「地図の文字読めるんすか?」
「いんや。だが、この手の艦はより危険を避けるために、後方に居住区を設けてる可能性が高い」
「そこに金目の物が?」
「当然」
「おお! なんか、テンション上がってきましたよ!」
「っだろ? アタシに任せときゃ、全部上手く行くんだよ」
「あ、さっきキャプテンがぶっ壊したロボットはどうします?」
「何もなかったらアレをペルティダの伝手を使って闇市で叩き売る」
「『オーランド号』の修理費くらいは稼ぎたいですね」
「【ブレイズ】も修理して3位のクソ野郎にリベンジだ。アタシの邪魔するヤツは全部金に変えてやるぜ!」
「頼もし過ぎるっす! ん?」
「どうした?」
「またロボットっすよ。あ、腕をこっちに向けてなんか開い――」
『アーミー・ドール』に内臓された火炎放射が二人を襲う。




