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Мake the call  作者: 古河新後
1章 地下技術(アンダーラウンド)

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第34話 古い時代の入浴

 混浴。その知識はある。

 古い時代の入浴……または緊急時に身体を温める手段として男女共に同じ湯に浸かる事を言う。

 他は――恋仲の男女がより親身になるために――


 ガンッ、とレイチェルは脱衣場のロッカーにその考えを遠ざけるように頭をぶつけた。


「……」


 これから自分の裸を見られる。それも同性ではなく異性から。抵抗はある……どちらかと言えば嫌な部類だ。

 しかし、汗と埃で汚れたまま過ごす方がもっと嫌だった。


「……時間もない……」


 考えと覚悟をまとめるには時間が足りなさ過ぎる。こうやって悩んでる間も……刻々と入浴時間が――


『レイチェルさん』


 その時、先に大入浴場に入ったヴァンが戸の向こうから声をかけられ、ちょっとビクッ。


『僕がサッと出て、リグ姉さんに交渉してくるのでレイチェルさんは僕が出てからゆっくり入ってください』

「…………」


 私は何をしているんだ。自分の意志で『スカイベース』を飛び出した時から、もうお嬢様でも何でもないのに……

 “アークライト”と言う肩書は全く意味がない場所で、誰かに気を使わせて同じような扱いをされる為に彼と【ゼノス】に乗ったワケでは無い。


「……ヴァン、別に貴方は出なくても良いわ」

『……え?』

「今から入るから」

『わ、わかりました……じゃあ、僕はなるべく見ないように隅っこにいますね』


 戸の向こうからヴァンの気配が消えた。

 私は服を脱ぐとポニーテールにまとめた髪を解くきタオルを持つ。


「…………」


 タオル一つでは胸が軽く隠れるだけだが……覚悟を決めろ。

 戸を開ける。






「はぁ……タイミングはいくらでもズラせそうだけどなぁ」


 僕はさっさと身体を洗って湯槽に使っていた。

 店は閉店しているので客は居ない。貸し切り状態。いつもなら、リラックスして湯を堪能しつつ解ける様な心地よさに身を任せる時間なのだが……


「……」


 姉さんはホントに何を考えてるんだろう。女の人も男の人も平等に扱うのが区画統括者としては必要な事だけど避けられるなら避けるべきだよ……

 無論、肉体的に男女で出来ることに限界はある。けどソレを踏まえた上で姉さんはきちんと采配している。


 僕とディンもなるべく姉さんの負担を減らすように動いているけど……やっぱり代わりは出来ない。


「……せめて“ジャバウォック(コレ)”が役に立ってると良いけど」


“ヴァン。無理に浮き上がろうとするから中途半端になるんだ。やるなら徹底的に闇に染まれ。とりあえず教えた通りに“ジャバウォック”を殺しとけ。あっはっは。ソレでようやくお前は始まる(・・・)


「……オーランドさんも今思えば無茶苦茶だよなぁ」


 あのセクハラ船長の事は考えるだけ無駄か。

 すると、カラカラと戸が開く気配。僕は色々と考えていたけどレイチェルさんが入ってきたと認識したら考え事が全てが消し飛んだ。


「ヴァン?」

「えっと……僕は湯槽で背を向けて見ないように努めますのでレイチェルさんは安心して身体を洗ってください」

「……そう。ありがと。でも別に――ううん。何でもない」


 座って身体を流すレイチェルさんの気配。

 でも別に? レイチェルさんは何を言おうとしたんだ?

 血行が良くなったからか。もあもあ〜と妄想が浮かぶ。

 僕は相手の身体の動きを先読みする関係上、そのプロポーションは服の上からでも明確にイメージ出来るのだ。


「……止めよう……」


 磨いている技術がこんな所で変な才能として発揮されるとは……

 『アンダー』で生活する女性でも高貴をイメージ出来る人は更に少ない。僕が知る限りだとバッカスさんの娘さんであるメデューさんくらいかなぁ。

 第4区画の女性とは混浴する事はあるけど……一緒に仕事をする事もあってあんまり羞恥心はない。と言うよりも皆、僕を子供扱いするんだよなぁ……

 まぁ、こんな見た目じゃしょうがないけど。


“うぅ……許さない……おまえ……絶対に許さない……”


「……彼もどこかで僕の事を忘れて生きてると良いけど」

「となり、良いかしら?」

「フェッ」


 急に斜め右後ろから声をかけられ、そんな声が出て硬直。そのまま、スッ……と少し横にズレた。


「ありがと」


 レイチェルさんの白くて綺麗な足がとなりに入ってきた所でそれ以上見ない様に顔を反らす。

 湯気で視界は60%程しか確保出来ないが、それでも身体の輪郭は十分に分かるのでレイチェルさんのスタイルはスレンダーな美人――ゴンッ。


「ヴァン?! どうしたの?! 岩に頭を打ちつけて――」

「た、大丈夫です! 大丈夫! ちょっとばかり、邪な自分を追い出しただけなので!」

「――ふふ。そう」


 と、僕の奇行を心配して立ち上がったレイチェルさんは再び湯槽に肩まで浸かってくれた。

 僕はなるべく見ないように身体を正面に戻す。


「…………」

「…………」


 互いに正面を向いて無言。

 何を話したら良いのか……共通の話題……話題……


「……ヴァン。一つ、私から提案があるのだけど」

「は、はい。何でしょう?」

「私を見てくれない?」

「……え?」


 と、思わずそんな声を返すとレイチェルさんが続ける。


「このままだと、リラックスにはほど遠いわ。だから……いっその事……上限を振り切っちゃった方が良いと思って」

「上限を……振り切る?」


 すると、レイチェルさんの手が僕の頬に触れる感触に思わず彼女を見た。

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