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Мake the call  作者: 古河新後
1章 地下技術(アンダーラウンド)

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第32話 不滅の悪夢

「わっ、マルザのおじちゃんありがとー」

「お菓子もこんなに……」

「皆の分ある!」


 ストリートチルドレン達はグループ事による横の繋がりはない。故に他のグループが消えても、場所が空いた、ラッキー程度の認識しか彼らには無く恵んでくれる“良い人”に巡り会える大型エレベーター付近は特に人気のスポットだった。


「はっはっハ。そう焦るナヨ。足りなかっタラ、また持ってくルサ」


 筋骨隆々の体躯をしたマルザは好意的な笑みを作りながら、両手に一杯のお菓子や服を持ってきた。

 マルザの噂はストリートチルドレンの間では広く伝わっていた。無論、良い人、と言う情報が100%である。


「マルザさん……本当にありがとうございます!」


 グループリーダーの少女、ウェイは深々と頭を下げる。

 彼女のグループとマルザの出会いは、ストリートチルドレンを忌み嫌う一般人の間に入って助けた事で関わる様になったのである。

 それからマルザは見捨てられない、と言う建前で定期的にウェイのグループと接触し、遂に隠れ家まで招かれる所まで信頼関係を得ていた。


「こんなわたし達を助けてくれるなんて……なんとお礼をすれば良いのか」

「気にすルナ。俺は子供が苦しんデル所を見るのは我慢ならナイ性分デネ。『サイフォスの月』に入ったノモ、世界からそんな子供達を減ラス為サ。まぁ、情けなく逃げ出す事になっちまったけどナ」

「な、情けなくなんて無いです! マルザさんは何度もわたし達を助けてくれました! ストリートチルドレンと関わるのは無駄だって……他の大人は手を貸さないのに……マルザさんはわたし達のお父さんです!」

「ありがトヨ、ウェイ」


 ぽん、と大きな手で頭を撫でられてウェイは頬を赤らめると恥ずかしそうに眼を伏せて慌てる。


「あ! ウェイの姉ちゃん顔が真っ赤だー!」

「マルザのおじさん、ウェイ姉ちゃん。ずっとおじさんの事ばっかり話すんだぜー」

「こ、こら!」

「はっはっは。子供に好かれる事は大人からすれば何よりも嬉しい事サ。そして、お前達の笑顔もナ」

「マルザさん……」


 と、マルザはウェイのグループが隠れ家にしている空間を見て、


「ここは空気も見通しも悪イ。お前達が良けレバ俺の“別宅”に来なイカ?」

「別宅?」

「最近、他の区画で労働力を得る為にストリートチルドレンを攫ってるヤツが居るって噂デナ」


 ウェイ達もその事は耳にしていた。

 最近の“第1区画”ではストリートチルドレンのグループが消える事が度々発生しており、リーダーであるウェイも気にかけていた事だった。


「そんな事が……」

「ああ。俺の親父は“第3区画”の統括者と仲が良くテナ。その手の情報も入ってクル。お前らが良ければ、一時的にでも俺の別宅に身を寄せイカ?」


 ウェイ達に断る理由は無かった。満場一致でマルザの提案を受け入れる声を上げる。


「はーい、ストップストップ。そいつについて行くと穴と言う穴に体液流し込まれますよ」


 聞こえてくる声にマルザは振り返り、ウェイは部外者のヴァンとディンが隠れ家に来た事に驚く。


「な、何ですか貴方たちは!」

「“ジャバウォック”」


 静かにヴァンの口から告げられる言葉に、ウェイは眼を見開く。

 その“名前(ジャバウォック)”を名乗る事はストリートチルドレンのみならず、『アンダー』ではタブー中のタブーだった。






「そこの子供専用◯ァック野郎。ちょっと顔を借りて良いですか?」


 ヴァンはペルディタの所から持ってきたトーイが持ち出したマルザのアルバムをひらひらと見せながら挑発する。


「…………」

「“ジャバウォック”……そんな……」


 しかし、ヴァンを見るマルザの横でウェイは青ざめていた。


 “ジャバウォック”。

 ソレはその名前を口にした者の所に現れる。そしてソレが去った後に残るのは、かつて人だった“肉の塊”だけだった。

 囁かれている……そんな噂が流れるだけで“ジャバウォック”は嬉々としてそこへ現れ、笑って、楽しそうに、遊び、人を殺す。

 そんな“ジャバウォック”が去った後の『遊び場』は“第6区画”の者でさえ、吐き気を催すほどの凄惨たるモノだった。

 人の四肢が人形遊びの様に縫い替えられていたり、頭を切り開かれて脳に釘が刺さっていたり、自分の内臓を食わせられて窒息していたり、およそこの世の者とは思えない所業が毎回行われているのだ。


 壁や床には“また呼んでね”と必ず書かれており正体不明の殺人鬼――『不滅の悪夢(ジャバウォック)』と呼称されることになる。

 それは各区画の統括者が始めて顔を合わせて議論する事になる程に危険な存在であると認知された。


 故に『アンダー』の住人はその名を絶対に口にしない。“ジャバウォック”の遊び相手(・・・・)に選ばれたく無いからである。


「み、みんな! 逃げて! マルザさんも逃げないと!」


 特にそんな事件を多々見ているストリートチルドレン達は、そのタブーが嘘ではないと知っている。

 リーダーの言葉に仲間たちは我先にと逃げ出した。


 ヴァンの体格はマルザに比べて三回り以上小柄だが、それでも向けてくる眼を見て、血の通った人が向ける眼ではない事を感じ取る。しかし、マルザは、


「お前達は行ケ」

「マルザさん!?」

「任せろヨ」


 と、ウェイを不安にさせない様に笑う。ウェイはマルザを置いていく事に少し躊躇うも、場から離れる様に逃げて行った。


「ヤレヤレ……参ったヨ」


 マルザは額に手を当てて困った様にヴァンとディンを見る。


「そのアルバム……無くなってたンダ。とても大事な記録(モノ)。君が見つけてくれたのカイ?」


 そう言いながらマルザは友好的に近づいてくると、アルバムを催促する様に手を差し出す。

 しかし、ヴァンは取られない様に後ろのディンに流すように渡した。


「返しませんよ? だってコレ、バッカスさんに見せないといけないから」


 “第3区画”の統括者(ボス)――バッカスの名前を挙げられてマルザは身体に力が入り、隆起する。


「丁度イイ。ココは人が来ナイ。ついで(・・・)にアルバムも戻ってクル。お前の手足を折ッテ……後ろのメスガキと一緒に腹が破れるまで俺のをブチ込ンデヤルヨ」


 マルザは自身の快楽の満たすだけの玩具としてヴァンを見ると下卑た笑みを浮かべた。

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