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Мake the call  作者: 古河新後
1章 地下技術(アンダーラウンド)

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第29話 彼女は“僕のモノ”なので

「よう、ヴァン。帰って来てたか」

「ナワさん」


 ヴァンが『銭湯』閉店作業をしている所に筋骨隆々の男――ナワが声を聞けてきた。

 若々しく採掘で鍛え上げられた肉体はヴァンの三周りほど大柄な体格だ。ヴァンとディンとは時折同じ採掘現場になる事もあり二人の先輩作業員である。(リグレットに告白して玉砕済み)


「採掘の様子はどうですか?」

「レアメタルの採掘はボチボチだな。別んトコをボルじぃと調査してたら“戦艦”を見つけてよ。扉が歪んでたからピッケルと筋肉(パワー)で抉じ開けて中に入ったら、大量の金があったんだ」

「金?」

「正確には“金貨”だな。運び出せるモンは全部運び出して、今頃“3区画”で延べ棒に加工されてるよ」


 新しく見つけた“戦艦”はそれなりの資材を積んだモノだったらしい。


「“4区画”の功績だって事でリグレットが話をつけてくれるらしくてな。今から欲しいもの書いて銭湯の伝書箱に入れとけって」

 

 次の大型エレベーターで降りてくる物資では“4区画”をリストの上に出してくれる事になるとのこと。


「それはありがたい話ですね」

「中には白骨死体なんかもあったから、先にそっちを埋めたんだけどな。艦内白兵戦をしてたってボルじぃが言ってたよ」


 戦艦には遺体が残ってる場合が殆どであり、金物を探すにしても、先に遺体を処理するのが通例であった。


「しかも、隔壁ばっかでよ。土で埋まってるトコもあって格納庫にはたどり着けてねぇのよ」

「また『パースロイド』があるかもですね」

「俺としては日用品の方が欲しいけどな。お湯沸かすヤツ」

「今度のリストにソレを書けばいいでしょう?」

「リストにはベッドを書くんだよ。新品のふかふかをな」


 『アンダー』では食べるか眠るかのどちらかを楽しみにしている者も多い。ナワはその中で“睡眠”の質を上げるようだ。


「それよりも、ヴァン。噂が出回ってるぜ?」

「? 何のです?」

「氷運搬者のファインが見たってよ。お前んトコの『格納庫』でリグと話す美女をな」

「ああ、彼女ですか」


 反応が薄い様子にナワは体格差のあるヴァンへ、おいおい、と器用に肩を組んでくる。

 

「『スカイベース』でナンパして来たのかぁ? 今回は色々と大変だったみたいだが、『ハイラウンダー』にも色んな趣味の女が居るんだな」

「そんなんじゃ無いと思いますよ。彼女の場合は世間知らずの色が強いですね」

「俺達の生活に興味を持ったクチか。『ボルック』を意図的に『格納庫』に誘導して中で作業する姿が何枚か写真が出回ってるぞ」


 『ボルック』には作業現場の様子を写真に収める機能があり、近くのノートPCに画像が転送されるシステムとなっていた。


「また私用で使って……姉さんから怒られても知りませんよ」

「バレなきゃ何しても良いんだよ。見た目は完全にお嬢様って感じだったな」

「まぁ、向こうでもそんな感じでした」

「だろ? “4区画”の男女比率は10/100だからな。明日には大量に見物人が来ると思うぜ。即日告白に行くヤツも――」

「あ、皆に言っててください。彼女は“僕のモノ”なので」


 その言葉にナワは楽しそうな雰囲気を一変させ、真剣な様子でヴァンを見る。


「……ワケありか?」

「と言うよりも、花より団子な人です。今は姉さんから頼まれた仕事をしてるんで、邪魔しないで欲しいって意図が強いと思ってもらえれば」


 ヴァンが人を見る能力が高いことは“4区画”では周知だった。時には言葉巧みに人を誘導する事もあり、作業員間でのイザコザの仲裁に良く呼ばれる。


「解ったよ。作業を邪魔されるのは俺たちが一番やって欲しくない事だもんな」


 ナワは名残惜しそうに嘆息を吐くものの、仕方ないと言った様子だ。


「それに『アンダーマダム』と『ジャバウォック』のモノに手を付けるのは“4区画”のみならず『アンダー』じゃタブー中のタブーだ」

「姉さんと違って僕はそんなに厳しいつもりはありませんけど……」

「頼もしいって言ってんだよ」


 美女によろしくなー、とナワは片手を上げて帰って行った。






「【ジャンク】を一通り見た、貴女の感想を聞いてもいい?」


 銭湯から上がったリグレットは『格納庫』のリグレットの元へ戻った。

 レイチェルは『銭湯』が閉店するまでの間、渡された【ジャンク】の資料と現物を調べていたのだ。


「一言で言うのなら。“積み木”です」


 レイチェルは【ジャンク】の脚部に触れながら見上げる。


「外見のバランスは整って見えますが、重量はパーツごとにバラバラで調和は取れてません。操作性はかなり劣悪だと思います。立たせるだけでも相当苦労するのでは?」


 【ジャンク】シリーズは同じ機体は一機も無い。『戦艦』の中に眠る『パースロイド』のパーツをバラして使えるモノを選定し、リグレットが組み上げたのが【ジャンク】シリーズなのだ。


「ええ。私も『パースロイド』は操縦出来るけど、【ジャンク】シリーズは歩かせるので精一杯。でもあの子は達はコレを使って『アリーナ』に出てるわ」

「『アリーナ』に?」


 『アリーナ』とは『ノーマルラウンダー』が開催する『パースロイド』同士による決闘である。

 『アンダーラウンダー』が公的に地上へ上がれる催しである事からも、各区画では選手を選出する事は強く望まれていた。


「『アリーナ』は『ハイラウンダー』の技術試験って名目で始まったって聞いてるけど、今じゃ『ノーマルラウンダー』の賭け事の催しよ。まぁ、規模が大きく成りすぎて『ハイラウンダー』でも管理しきれないんでしょう」

「中継で試合を観たことがあります。その時は……2位と3位の試合でした」


 10位以上の上位ランカーによるハイレベルな『パースロイド』戦は『スカイベース』の軍部でも戦闘の参考資料として使われる程だ。

 中には『ハイラウンダー』でもランカーと言う者も居る。


「いつの試合?」

「半年くらい前だったと思います。パイロットネームは……2位が“スカーレット”で3位が“ジャバウォック”……結果は“ジャバウォック”が勝利。ランクを上げました」

「その時の機体は『スカイベース』にあるわ。【ダークブルー】に堕とされてね」

「…………まさか。ヴァン?」


 リグレットはレイチェルの反応に、ふふ、と笑う。身内が褒められて悪い気はしない。


「そろそろ、『銭湯』を閉める頃だからお風呂に入って来なさい。『アンダー』は地熱が凄いから知らない内に汗を掻くの。毎日入らないと臭うわよ」

「すぐに汗を流して来ます」

「着替えは適当に使いなさい」


 妹が一人出来た様な感覚でリグレットは見送ると、近くの椅子に座って【ゼノス】を見上げる。


「アンタも災難ね」

『ゴミ、アルカー』


 その時、『ボルック』がコロコロと転がって来た。リグレットは、ピッ、と親指を下に向けて追い払う。


 その写真が送られたノートPCを見た覗き見達は、ヤベ……と『ボルック』との接続をオフラインに切った。

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