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Мake the call  作者: 古河新後
1章 地下技術(アンダーラウンド)

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第25話 『廃墟都市アンダー』へ

 早朝。

 朝日が照らし始める霧の山頂へ一機の『パースロイド』【ゼノス】が侵入する。

 先の見えない不確かな霧の中でも、最新のモニターは適切に地形を掌握。ヴァンの操作技術もあって、【ジャンクS】よりも細身な【ゼノス】は本来はギリギリの隙間も問題なく通過する。


「――ディンは無事に帰ったみたいだね」


 複雑に入り組んだ山頂の中にある渓谷。その崖棚の前で停止すると着地し偽造シートの様子から、妹が無事に帰れた事を把握する。


 シートをめくり、中へ入ると光の届かない地の底まで続くような鍾乳洞の穴へとゆっくり降下。

 殆ど手動で位置調整が必要な【ジャンクS】よりも的確に周囲との距離感を測る【ゼノス】はほぼ自動で穴を降下していく。


「便利だけど、コレに慣れたくないな」


 今回は自分以外にレイチェルも乗せている為、可能な限り安全を取るなら彼としてはソレを選択する事は当然だった。

 レイチェルはヴァンの安定した操縦により揺れを感じることなく副座で眠っている。


「……ん……」


 鍾乳洞内に入り、光加減が変わった事でレイチェルが目を覚ます。

 降下を始めて約一時間。下からゆっくりと“光”を感じられる様になってきた頃合いだった。


「ここは……」

「洞窟の中です。別に堕ちてるワケじゃありませんよ」

「貴方は堕ちないもの。その心配はしてないわ」

「それはどうも」


 欠伸を手の平で押さえつつ、軽く伸びをするレイチェルは座ったまま眠るのは良くない事を改めて認識した。


「……ヴァンは平気なの?」


 レイチェルの示唆する通り、ヴァンは【ダークブルー】と戦うよりも前から『パースロイド』を操作して『スカイベース』へ来たのだ。

 【ゼノス】でも帰路はそれなりに時間がかかったので、前に乗っていた機体では早朝には発たなければあの時間帯に『スカイベース』へは来れないだろう。

 気を失っていた時間があるとは言え、彼は24時間近く起きている事になる。


「こんなの普通ですよ。穴を掘るより『パースロイド』を飛ばす方が全然楽です」


 そう言いつつも軽く、ふぁ、と欠伸をするヴァンにレイチェルはくすっと微笑みながらも、操縦を代わってあげられない事を少し悪く思った。


 すると【ゼノス】は下からの光源(・・)を検知。鍾乳洞が特殊に光ってるのではなく、人工が作り出した様なオレンジの光が少しずつ機体を照らす。


「もうすぐです」


 穴を抜けると、その下には膨大な空間が広がっていた。


「――――嘘……こんなに……」


 それは、レイチェルの想像していた何十倍も上回った。果てが霞んで見える程に広い空間には、重機が動いたり、人が移動したり、必要な箇所にはライトが当てられたりしている。


「『廃墟都市アンダー』へようこそ」


 ヴァンは【ゼノス】の方向を整えると、ゆっくり実家へ飛行をする。






 『廃墟都市アンダー』

 ソレは『アンダーラウンダー』達が住まう場所であり、世界で最も深い場所に存在する“人の都”だった。

 広大な空間は、何世紀もかけた採掘によって切り開かれた空間であり、希少な鉱石やレアメタルを選定し地上へと搬入している。

 地上へとのアクセスに大型エレベーターが一つあるが、大半は『アンダー』で採れた物資の荷上げが主だ。

 ソレを『ノーマルラウンダー』が受け取り、更に部品や鉄材に加工して『ハイラウンダー』の物資になる。

 地上からは食料や最低限の生活用品のみが送られ金品の取引は殆ど行われない。

 これは『アンダーラウンダー』達に金銭を与えないことで地下(アンダー)から出ても地上では生活できない事を知らしめる処置であると同時に、最低限の技術しか与えられない事への証明であった。


 故に地上人(ノーマルラウンダー)の大半は地下人(アンダーラウンダー)の様子など知らず、一度落ちたら二度と這い上がる事は出来ないと考えるのだ。


 その考えは正しく、地下(アンダー)にはリスクしかない。


 いつ崩れるか分からず、ロクな探知機もない為に掘る先も大雑把に横へ広げている。そのため地下水などに当たったりして水没と崩落を招くの大惨事寸前になる事もしばしば。

 誰も手を付けない地層などから未知の病原菌などが発生する事もあり、空気がかなり悪く、密閉空間と言う事もあって幾度と全滅の危機を迎える事もあった。

 故に地下から地上への緊急要請の大半は暗いモノばかりでありソレが、『アンダーラウンド』は地獄そのもの、と言う認識を地上で強めているのである。

 そう言った情報は天上では更に誇張され、浮浪者達で溢れている、と言う形で伝わっているのだった――






「ふぁ……おはよ、姉ちゃん」


 ディンは気崩れたタンクトップ姿で現れると、コーヒーを片手に無線機の周波数をいじっているリグレットに挨拶する。


「おはよう。ご飯出来てるわよ、先に顔を洗ってきなさい」

「ふぁい」


 近くのテーブルには、スクランブルエッグに山盛りのサラダと白米が2合置いてある。

 顔を洗い、眠気がスッキリしたディンは席につき、いただきまーす♪ と朝食を頬張り始めた。

 リグレットは無線通信に対応する。


『地上でも見たことない。多分、『ハイラウンダー』の機体だ。【ジャンクS】は帰ってきてるんだろ? ディンを寄越してくれ』

「今さら『ハイラウンダー』にアンダーの事なんでどうにも出来ないわよ。技術の押収なんて出来ないし、アイツらは地下に長居しないわ」

『じゃあ、どうやって入って来たんだ?』

「ヴァンよ。気にしなくて良いわ。ローテ通りに作業を進めなさい」


 その様子にディンはもりもり食べながら尋ねる。


「どしたの?」

「ヴァンが帰ってきたわ。【ジャンクS】じゃなくて、『ハイラウンド』の機体でね」

「え!? マジ!? 兄貴やべぇ! どんな機体!?」

「あんたはご飯食べたら風呂掃除して、銭湯の準備!」

「あ……はい……」


 リグレットは立ち上がると室内から出る。すると、球型清掃ロボットの『ボルック』が転がってくる。


『ゴミアルカ?』

「無いわ。そろそろ、朝食時間が終わるからフード街に行きなさい」

『ゴミアルカ〜』


 そう言いながら、コロコロと『ボルック』は転がっていく。その後をリグレットは追うように洞窟格納庫より外へ。


「ゲンコツ一発ね」


 そして、遠くから飛行してくる【ゼノス】に対して腕を組んで視線を向けた。

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