第2話 寄せて集めた翼
【ジャンクS】
主な基礎骨格は標準の『パースロイド』の物を流用し、基礎駆動機関の他に高速飛行する為に『ジェットエンジン』を別途搭載した機体である。
ソレに合わせて隙間を埋めるように装甲板を重ね歪な形になっているが、それが操作尾翼の役割も果たしている。
長距離飛行を考えられている為に、背部には細長いエネルギータンクを装備し、海上の空を『スカイベース』目指して高速で飛行していた。
『ディン、何持ってるのさ』
『戦利品』
遭遇した第76小隊と交戦し、ほぼ無傷で全機落とした『パースロイド』【ジャンクS】二機は目的の『天空首都スカイベース』へと直進していた。
晴天の中から、意図的に雲の中へ入り少しでも敵の索敵を眩ませる。
『さっきの【ソルジャー】の飛行パーツ?』
【ソルジャー】は『スカイベース』が量産している『パースロイド』である。そこから派生させた機体が数多に存在するが、彼らが戦ったのは【ソルジャー(空戦型)】であった。
『堕ちる前に動力っぽいのを掴んだんだ。銭湯の湯沸かし機がぶっ壊れてたじゃん? その動力に使えっかなって』
『上手く流用できると良いけどね』
『姉ちゃんなら余裕っしょ。そうだ、アニキ! 『スカイベース』でに適当な技師でも攫おうぜ!』
『それはリスクが高いよ。パースロイドの本でも一冊持って帰れば良いさ。どうせ、地上とは違ってそこらに捨てるほどあるだろうし』
『早くアイス食いてー』
雲の中は厚い分、滞留物がそれなりに生成されており、機体は雨に濡れていく。
『雲を抜けたら『スカイベース』の真下だから、上手く行けば色々と収穫があるよ。皆に生活の本をお土産に持って帰ろう』
『それはアニキに任せる! 俺は料理の本を買い漁る!』
水の尾を引きながら雲を抜ける。すると巨大な機械仕掛けの大陸が真上に存在していた。
六つの超大型浮遊機関により成層圏付近に浮かぶその都市は自然に生まれたモノではなく、人類の叡智によって2000年以上も前に造られたモノのだ。
一つの大陸に匹敵する程の巨大な建造物。現在では技術的に造ることは人手や物資の関係から不可能とされ、日々増設する事で領土を広げている。
その外装では作業用の『パースロイド』が点々と存在し外装の掃除や整備などを行っている。
『相変わらずでっけー』
『情報通り、使われてない通気通路内部に機体を固定して非常用ハッチから――』
その瞬間、熱源反応を感知し、ビー! と警告音がコックピットに鳴り響く。
二機は左右に分かれて回避運動を取ると、元いた箇所を“ビーム”が通過した。
『うお!? 今のって『エネルギー兵器』!?』
『まだ試作段階って聞いてたけどね』
『て、ことはー?』
前方に機体反応。モニターで拡大してソレを視野で捉えると、蒼色の機体が装備した『エネルギーライフル』を構えている。
情報――『ナンバーズ01』専用機【ダークブルー】。
『ハッ! いきなりラスボスかよ!』
『ディン、エネルギー兵器は発射する時に“溜め”が必要になる。その初動となるエネルギー反応を見逃さない様にね』
『オッケー!』
【ジャンクS】の一機が速度を上げて先行する。
当然、中の搭乗者にも負荷がかかるが、
『どう言う原理で浮いてんだ、テメー!』
ソレには慣れている様子で放たれる『エネルギーライフル』を機体を傾けつつ最小の動きで回避し、接近。
『…………』
静かに滞空する【ダークブルー】はヴォン……と短く駆動音が鳴り、赤色の粒子を内蔵された飛行機関から出しながらゆっくりと前に出る。
近づけば『エネルギーライフル』の命中率も上がる。ピピピ……と接近してくる【ジャンクS】に銃口を合わせると、
飛行物の接近を検知――
『ブラインドか……』
先頭の【ジャンクS】の後ろにピッタリ追従したもう一機の【ジャンクS】より、ミサイルが放たれたのだ。追尾機能はない高速ミサイル。しかも、かなりの年代物である。
『骨董品だな』
『エネルギーライフル』で高速ミサイルを撃ち抜く。その爆発に先行する【ジャンクS】を巻き込むつもりだったが、
『遅っせぇぇ!!』
更に速度を上げた【ジャンクS】は爆発を振り切り、【ダークブルー】を攻撃距離に捉える。
『全弾くれてやるよ!!』
肩部、背部の装甲板を一部パージし、その下に隠されていた内蔵武装を展開。更に腕に持つガトリングも構え、一斉に発射する。
その攻撃範囲は【ダークブルー】より直径500メートル範囲を掃討する弾幕だった。
『…………』
ピリリ……と【ダークブルー】のバイザーセンサーを一筋の光が横に流れる。