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Мake the call  作者: 古河新後
序章 ゴミを漁る者

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第18話 タイミングは最悪

「あら、レイチェルさん。どうしたの?」


 ヴァーミリオンを連れ出そうと『スカイタワー』に戻ったレイチェルは彼にあてがわれた部屋へ向かっている際に、ルージュと遭遇した。


「明日、試験する【ゼノス】の確認を忘れてたの」

「あらあら。レイチェルさんは真面目ね。報告書は出た端から目を通してるでしょう? 少しは整備班の人達を信用してあげなさいな」


 レイチェルが『バースロイド』の新型開発において、責任者の立場にいる事を知っているルージュは程よく立ち回る事を諭す。


「念の為だって。万が一にも事故が起こったら困るから」

「そうやって、前は知恵熱を出しちゃったでしょう? 貴女は一つの事に集中すると何も聞こえなくなるんだから」

「教訓にしてるから大丈夫だって。今回の【ゼノス】は明日初めて『主席』の方々の前で飛ばすから、是が非でもミスは許されないの」

「それは重要ね。それならお母さんも一緒に行って良いかしら? レイチェルさんが仕事をする所を見てみたいわ〜」


 頬に手を当てて微笑むルージュ。

 可能な限りの平常心で母(ルージュ)には対応したつもりだが、やはりどこか感づいているらしい。


「奥様、少々宜しいでしょうか?」

「あら、どうしたの? ロートス」


 ロートスがルージュへ丁寧な所作で声をかける。


「本日、トリエル様が屋敷の中庭を荒らしてしまいまして。そのリフォーム代を『侯爵(マークェス)』より頂く予定なのです」

「聞いてるわ。今度、トリエルちゃんを見つけたら抱きしめてとっちめるから」

「そちらのご対応はお任せ致します。つきましては、リフォーム代は言い値で良いとの事でして奥様が前から設置したがっていた噴水も視野に入れて良いかと」

「あら! でも、お父さんの下手なオブジェがあったでしょう? 噴水を設置するならアレを撤去しないと……」

「トリエル様により全破壊されましたので、撤去する予定です」

「それはしょうがないわね(キランッ★)」

「はい。仕方なき事です。カタログをお持ちいたしました。噴水のデザインをお伺いしても?」

「それならスケッチがあるの。ロートス、一緒に取りに来てくださる?」

「是非」

「あ、レイチェルさん。ごめんなさい。お母さんは明日空を舞う【ゼノス】を観るわ」


 ロートスは、奥様は私が、とウィンクするとレイチェルはヴァーミリオンの元へ向かう。






「ここね」


 レイチェルは開発格納庫へは行かずに真っ直ぐヴァーミリオンの部屋へたどり着く。そして、一度ノック。


「ヴァーミリオン、起きてるかしら? レイチェルよ」


 返答を待つが返事はなかった。時間はもうすぐ日付が変わる。既に眠ってる可能性は十分にあった。

 扉にロックはない。『スカイタワー』内で何かしらの事件が起きたら、無数のカメラと探知機によって、30分足らずで解決できるからである。

 タワー内全てがセキュリティ状態にありその全てを『侯爵』が管理しているのだ。


「……入るわね」


 レイチェルは失礼とは思いつつ、扉を開けて中へ。

 ヴァーミリオンにあてがわれた部屋は今後も長く使うことを想定し、トイレや浴室、リビングと寝室も分かれているなど、一人で過ごすには十分な広さがあった。


「…………」


 レイチェルは消えている電気を着け、部屋を見回すが、ヴァーミリオンは部屋に通されてからすぐに寝たのか、綺麗なままだ。そのまま寝室へ――


「ヴァーミリオン?」


 寝室を覗くがヴァーミリオンの姿はない。ベッドは綺麗なままで乱れた様子はない事からも、あれ? と踵を返した瞬間――


「!」

「叫ばないでくれますか?」


 背後から口をタオル越しに押さえられると、膝裏を崩され、そのままお尻から落ちる様に座らされた。

 どうやら入った時に死角になる扉の横に潜んでいた様だ。背後から伸びる腕が首元に巻き付き、眼前にはフォークが突きつけられる。ヴァーミリオンの声が耳元から聞こえた。


「タイミングは最悪でしたよ。レイチェルさん」


 その瞬間、レイチェルは全てを理解した。

 ヴァーミリオンは記憶を失っていなかった。ずっと、演技をしていたのだと――


「両手を上げてください」

「…………」


 数時間前の慕うような声と同じであるが、今は冷徹な様が感じられる。指示に従わなければ、フォークを顔面に突き刺す事も躊躇わない声色だった。


 レイチェルはゆっくり指示に従うと、口を抑えるタオルはそのまま首裏で縛られ、上げた手を無理やり後ろに回され、クロスする形で別のタオルで縛られる。


「予定通りに行かないなぁ……もー」


 愚痴りながら拘束するヴァーミリオンはレイチェルの口と腕を縛り上げると時計を見る。


「後一時間切ってるよ。まったく……」

「……」


 レイチェルは下手に抵抗せず、そのままベッドを背に座るように事が過ぎる様を待つ。

 ヴァーミリオンは慣れない様子で端末を操作しながらイラついていた。

 記憶があるヴァーミリオンの目的は『スカイベース』からの脱出。時間に焦っている様子からも、大人しくしていれば自分に構っているヒマは無いハズだ。


「……格納庫……格納庫……ああ、もう。また画面が戻った」


 どうやら端末で格納庫の位置を調べている様だ。しかし難航しているらしく、焦りと苛立ちが感じられる。すると、ヴァーミリオンはレイチェルの前にやってくるとしゃがみ、


「これで格納庫の位置を表示出来ますか?」


 などと覗き込むように聞いてきた。

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