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Мake the call  作者: 古河新後
序章 ゴミを漁る者

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第16話 彼女の決断

「…………」


 ヴァーミリオンは明日から『機械同調計画マシンナリープロジェクト』の適性を測る為に、暫くは『スカイタワー』で生活をする事になった。

 その件に関してレイチェルはヴァーミリオンの事を母親のルージュに引き継ぎ、ロートスの運転する車で帰路に着いている最中だった。


「お嬢様。『スカイタワー』に泊まられるのでしたら、お着替えをお持ちいたしましたが……」

「いや、いいの。少しヴァーミリオンから離れて考えたいから」


 走る車は屋敷へ向かう。

 外は既に日が落ちて、夜から深夜へと移り始めていた。

 車窓から見えるのは僅かな電灯と警邏する警察隊だけ。飲み屋街だけは夜から明け方まで活気があるのだが、今使っているルートでは静かなまま屋敷へと帰ることになる。


「…………」


 『機械同調計画マシンナリープロジェクト』は【リベリオン】を造る際にトリエルを通じて部分的に触れた。

 『侯爵(マークェス)』はトリエルの為に立ち上げたプロジェクトと言っていたが……私はある意味、究極の不自由であるとも思っていた。

 トリエルの様に生まれながらにソレが当然で、全てに納得して受け入れて居るなら良い。けど、ヴァーミリオンは違う。

 彼は記憶を無くして、誰を頼れば良いのかわからないのだ。そこに……私達(アークライト)が付け込んだ。


「……」


 御父様の言う通り、『主席』一族である以上、無償で難民を受け入れたとなれば……発言力の低下は十分にあり得る。だからと言って、記憶を失った少年(ヴァーミリオン)地上(ノーマルラウンド)に返せば、それはソレで懸念材料として傷を残す事になるだろう。

 『主席』一族は互いに争っているワケではないが、皆が“対等”を維持したいと言うことでも無い。


「……」


 私以外は全員納得してる。ならこの件はもう……考えるべきじゃない。でも、これから私はヴァーミリオンと顔を合わせた時に心から笑顔を向けられるの?

 もし、『機械同調計画マシンナリープロジェクト』で彼に何かあったら……それは彼を助けた私が苦しめた事になる……


「……ヴァーミリオンを助けて良かったのかしら……」

「お嬢様」


 思わず出ていた本音に赤信号で車が止まった際にロートスが返して来る。


「私は旦那様でも奥様でも無くお嬢様の味方ですぞ」

「…………」

「それにしても、随分とお疲れのようですな」

「ええ……今日は少し疲れたわ」

「安心いたしました。では、先ほどヴァーミリオン様を求めるやり取りはお嬢様の本調子では無かったと言うことですね」

「…………何を――」

「私の知るお嬢様は、たとえ目上の者でも自分が不安に思った事は意地でも意見を通します。それで組み上がった『パースロイド』の安全性は多くのパイロットの命を救っております故」


 【ソルジャー】は当初、安全な脱出機関が付いて無かった。コストと設計の問題で不可能とされていたけど、ソレを私は書き直して脱出機構の取り付けをしたんだっけ……

 あの時……あの私は――


「ロートス」

「なんでしょう?」

「『スカイタワー』に引き返して」

「お任せを!」


 青信号になった瞬間、ロートスは車を反転させ来た道を戻り始めてくれた。


 そうだ。諦めるなんて私らしくない。

 ヴァーミリオンを私の助手にするなり、付き人にするなり、側に置く方法はいくらでもある。

 出来ることは全部やってから。それでもダメなら新しい道を探せばいい。ヴァーミリオンの記憶が戻った時に、彼を家族の元へ笑顔で送り返せる様に――






「ん? ルージュさんじゃないっすか。どもー」

「こんばんは、ハーケン主席」


 ルージュはヴァーミリオンを連れて『スカイタワー』内部を案内していたら、一人の男と遭遇した。

 スーツを着ているがヨレヨレのシャツにネクタイはない。どこかだらしなさが感じられる男だった。


「その子は……え? 隠し子?」

「ふふ。ハーケン主席、冗談では済まされない事が世の中にはありましてよ?」

「すんません……ふざけ過ぎました……」


 と、男はヴァーミリオンを見る。


「俺はハーケン・エリングラット。『主席』一族のエリングラット家当主だ」

「僕はヴァーミリオンって言います」


 ペコリと頭を下げるヴァーミリオンにハーケンは、よろしくな、と告げる。


「ルージュさん達に助けて貰いまして、今度『機械同調計画マシンナリープロジェクト』を受ける予定です!」

「ほーん。まぁ、それなら説明は受けたと思うが恐いことは何もない。俺も義足の関係でステージ2を受けてな、今じゃスポーツも出来るくらいさ。それに義足(コイツ)には目覚ましの機能もついてるぜ」

「へー」

「俺渾身のギャグだったんだが……ウケは悪そうだな」


 ヴァーミリオンの興味無さげな様子にハーケンは外したか……と苦笑いを浮かべる。


「じゃ、ルージュさん。失礼します。デューク主席によろしく伝えて置いてください」

「ええ」

「坊主、何かあったら先輩として相談くらいは聞くぜ。ま、“アークライト”がサポートするなら俺の出番もあまり無いかもしれないがな」


 そう言って、ハーケンは手を軽く上げながら去って行った。

 そんな、去っていくハーケンの背中を見ながらヴァーミリオンが呟く。


「……あの人……」

「ハーケン主席は数年前に“エリングラット”の当主を継いだの。“エリングラット”は主に地上(ノーマル)との物資取引をしてる一族よ」

「それで……ルージュさん達みたいな、気品的なオーラが無いんですね!」

「ヴァーミリオン、ここでは『主席』一族に対する否定的な言葉はタブーよ。気をつけて」

「あ……ごめんなさい……」

「ふふ。それに、ハーケン主席はどっちかと言う実戦的な方なの」

「実戦的ですか?」

「彼は『ナンバーズ』と呼ばれている、『スカイベース』でも屈指のパイロットなの。コードは『02』で【トリプルタスク】の乗り手よ」

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