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Мake the call  作者: 古河新後
序章 ゴミを漁る者

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第14話 彼の記憶と身体

 基本的にデータを記録し続ける『スカイベース』ではデータを引き出すには特殊な手順を踏む必要があり、それが五家に一つずつ用意された“執務室”である。

 技術漏洩を完璧に管理するため、データの引き出しは“執務室”以外では行えず、閲覧も特定の許可がなければ不可能。

 唯一例外として『中央首都』を管理する『侯爵(マークェス)』はどこでも引き出す事は可能であった。


 ルージュ、レイチェル、ヴァーミリオンの三人は

 “アークライト”と書かれた執務室の扉の前にやってくると、ルージュがノックを入れる。


「私です」

『入れ』


 主席補佐であるルージュの言葉にその部屋の主――デューク・アークライトはデスクに座ったまま入ってくる者達を出迎えた。


「御父様」

「旦那様」

「あっ」


 レイチェルとロートスが畏まって礼をする様子に倣って、ヴァーミリオンも遅れて頭下げる。

 デュークは本題に入る前にレイチェルを見た。


「レイチェル。お前は今日は『スカイタワー』の機体研究室に居るハズだ。何故、別荘にいた?」


 デュークは『ナンバーズ01』から『アンノウン』を堕とす場所の要請として誰も居ないハズの郊外を提供したのだ。

 しかし、近くの別荘には娘が滞在していた。


「一度、己を見直したく急遽休みにさせて頂きました。御父様へご報告を怠った点は謝罪致します」

「お前の全てを縛るつもりない。だが、今回は命の危機があった。それを踏まえた上で、今後は気をつけなさい」

「はい」

「あなた、あまりレイチェルさんを虐めないの。レイチェルさんのおかげでヴァーミリオンは無事だったんだから。良い方に考えましょう」


 ルージュの指摘によりデュークに視線を向けられ、ヴァーミリオンは慌てて頭を下げる。


「ぼ、僕! ヴァーミリオンって言います! 多分……ですけど……他に何も思い出せないのでヴァーミリオンって呼んでください!」

「ならそうさせてもらおう」


 そう言ってデュークは席から立ち上がると、近くの来客用のソファーをヴァーミリオンの着席を促した。


「座りなさい。ロートス、ヴァーミリオンにアイスココアを淹れてやってくれ」

「かしこまりました」


 ロートスに近くに置かれている給仕道具から飲み物を用意する様に命令する。


「ヴァーミリオン、座ってくれ。君の今後について色々と話をしよう」






『感謝で反吐が出ますよ!』


 ヴァーミリオンは【ダークブルー】視点による【ジャンクS】との戦闘記録を向かい合って座るデュークより映像で見せられた。


 デュークとしては、それで記憶が戻る可能性を考えての事だ。

 そして、映像は【ダークブルー】へ『エネルギーライフル』を撃ち、吹き飛ばされて落下し、別荘を壊して【ジャンクS】が沈黙した所で停止する。


「…………これを……僕が?」

「正直、信じ難い。最低限の装備とは言え【ダークブルー】と『ナンバーズ01』に対してここまで戦える存在がいた事にな」

「…………僕……皆さんに迷惑をかけたんですね……」


 ヴァーミリオンは自らが行った事を後悔する様に膝に乗せる手を強く握った。


「我々は君の身元に対して大きな興味を抱いている。君が何者でどこから来たのか? 何故飛行する『パースロイド』を持っているのか? 技術の出どころはどこなのか? その答えを握るのは君自身だ」

「……ごめんなさい……僕……何もわからないんです……」


 今にも泣き出しそうなヴァーミリオンを庇うように彼の隣に座るレイチェルが発言する。


「御父様、ヴァーミリオンは数時間前に目を覚ましたばかりです。現状でも何の説明も無しにこの様な映像を見せられては混乱するばかりでは?」

「レイチェルさん、何も私達はヴァーミリオンを責めるワケじゃないの。少しでも記憶が戻ればと思っての事なの」


 デュークの後ろに立つルージュが意図を説明する。

 記憶がある時の言動を見れば思い出す可能性はあったが……ヴァーミリオンを見る限り、その様子はない。


「『パースロイド』は熟練となる動きだ。君は相当な訓練を積んでいると我々は見ている。記憶がなくとも身体は覚えているだろう」

「……もしかすれば……その『パースロイド』に乗れば僕の記憶も?」

「残念だが、君の乗ってきた『パースロイド』は損傷が激しく動かせる状態ではない。コックピットも全焼し、以前の面影は全く無くなっている。調査の必要から数日は解析が行われるだろう」

「そう……ですか……すみません」


 ヴァーミリオンからすれば謝る事しか出来ない現状だった。

 自負の念だけが積り視線を下見向ける中、デュークが提案する。


「そこでだ、君の身元を“アークライト”で引き受けたいと考えている」

「え?」


 ヴァーミリオンが顔を上げた。


「今の君の状況は『スカイベース』でも浮いていてね。地上(ノーマルラウンド)に返す事も検討したが、どこから来たのかわからない以上、記憶を失った状態では子供一人を放置する事は危険だ。それに、君の操作技量は得難いモノだからね」

「でも……僕は……記憶を失ってます。皆さんにも迷惑をかけて……その上、助けて貰えるなんて……」

「無論、こちらも君に対しては対価を要求する」

「……対価?」


 ヴァーミリオンの隣に座るレイチェルは無言で成り行きを見守る。


「『機械同調計画マシンナリープロジェクト』。君には“アークライト”を代表してそのプロジェクトに参加してもらいたい」

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