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Мake the call  作者: 古河新後
序章 ゴミを漁る者

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第12話 記憶喪失

 レイチェルは少年を寝かせている一室に入ると、彼は不安そうな様子で医療スタッフの一人と会話をしていた。

 そして、入室してきたレイチェルを見る。


「あの……僕……」

「大丈夫よ」


 安心させる様にレイチェルは微笑むと、医療スタッフから会話を引き継ぎ、少年の座るベッドの横の椅子に座る。


「私はレイチェル・アークライト。この屋敷は私の家だから安心して」

「レイチェル……さん?」

「ええ。こっちは執事のロートス。そして、貴方を助けた医療スタッフの人たち。貴方の名前は?」

「僕……僕の名前……分からない……」

「『パースロイド』に乗ってたのよ。何か覚えてない?」

「『パースロイド』……ってなんですか?」

「……」


 頭が強い衝撃を受けた際に一時的に記憶を失う事はある。あの時、落下の衝撃とその後に発生した煙を吸い込んでしまったのが原因だろう。

 すると、ロートスが一つのピアスを渡してくる。治療する為に一時的に外した物だ。


「お嬢様、彼の持ち物です。お名前が記載されております」


 レイチェルは小さく彫られた名前を読み取る。


「“ヴァーミリオン”。ソレが貴方の名前?」

「…………わかりません。僕は……ヴァーミリオン……?」


 自分に関係する事なら、特に名前は記憶を取り戻すキッカケにもなり得るが彼の場合は少し難航しそうだ。


「少なくとも貴方が身に着けていた物に彫られていたのだから、きっと貴方の名前よ。そう呼ばせてもらうわね」

「……はい」


 慣れない様子の少年を安心させる様にレイチェルは微笑んだ。


「そうね。先にお風呂に入りましょうか」

「お風呂……」

「お風呂は分かる?」

「わかります。身体を洗う所ですよね?」

「そう。これから貴方の事をもっと詳しく検査するから、その前に身体を綺麗にしましょう」

「は……はい……」


 と、顔を赤らめるヴァーミリオンにレイチェルは察し、


「ふふ。私は洗わないわよ。医療スタッフとロートスに任せるから」

「あ……は、はい! すみません……」


 ぷしゅー、と恥ずかしそうに湯気を頭から出すヴァーミリオンにレイチェルは何だか弟が出来た気分だった。






「アイツ、派手にやったな」

『どうします?』

「タイミングを見て帰してやるぞ」

『使える機体がありません』

「一つだけある。明日から試作試験が始まるヤツだ。最終整備も終えたと聞いた」

『飛べるかどうかも分からない機体に乗せると?』

「殆ど完成してる。レイチェルは優秀だからそこんトコは気にしなくて良いだろう。それにあの機体は『スカイベース』でのまだ識別信号が正式に決まってない唯一の機体だ。」

『『侯爵(マークェス)』の目があります』

「アイツは今、トリエルを見るので忙しいさ。逆に言えば逃すチャンスは今しかない」

『時間との勝負ですか』

「今回のタイミングはかなりシビアだぞ。ミスると俺らも終わりだ」

『貴方様からすればその方が良いのでは?』

「あんまり俺を虐めんなよ。皆が丸く収まる方法を色々と考えてる最中なんだからさ」






 トリエルとヴァーミリオンを乗せた車は郊外の屋敷から『中央首都』へと走り入った。


「わぁ……」


 ヴァーミリオンは車の窓から、外を見て驚いていた。

 『中央首都』は巨大な『スカイタワー』を中心にビルや市街地が作られており、宙を走る車や、浮かぶ電子文字や、警邏するロボットなど、綺羅びやかに街模様を彩っていた。


「なんか……凄いです!」

「過去から現代に至る、技術の粋がここに集まってるの。こんなのはまだまだ序の口よ?」

「序の口なんですか?!」

「ええ」


 張り付く様に外の光景にはしゃぐヴァーミリオンにレイチェルも思わず微笑む。その様子を運転席するロートスは微笑ましくバックミラーを見ていた。


「あの大っきいロボットは何です?」


 編隊を組んで、空を飛行する機体を見てヴァーミリオンが質問する。


「あれは『パースロイド』。【ソルジャー】って言うの。この『スカイベース』を護ってるわ」

「あんなに大っきいのが……でも、何から護るんです?」

「それは――」


 と、レイチェルはそこまで出かけた言葉を飲み込んだ。

 【ソルジャー】は、戦闘は勿論、『スカイベース』が関わる危険な天候を観測したり、積乱雲を処理するのが主な仕事だ。

 他には『ノーマルラウンダー』へ提供している『パースロイド』への牽制であったり、『ノーマルラウンド』に降りる『ハイラウンダー』の警護が主な任務である。


 そんな中、『スカイベース』を直接脅かした事例はヴァーミリオンが新しい。撃墜された【ソルジャー】部隊は脱出システムにより、全員の安否が確認されて、今救助が行われているものの、あのスクラップの様な機体でヴァーミリオンが撃墜したと言うのだから驚異的だ。

 記憶を失っているとはいえ……この事はまだ告げるべきではないだろう。


「いつか訪れる脅威に皆備えてるの」

「皆さん、頑張ってるんですね」

「ええ。そのおかげで、私たちが不安なく暮らせるの」


 車は見上げる程に巨大な『スカイタワー』へ向かって行く。

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